徹夜は身体に良いものではありませんが、どうしても睡眠時間を削らなくてはいけない日もあるかもしれません。徹夜によるメリット・デメリット、身体への負担と、徹夜明けの日の眠気対処法を解説します。

◆徹夜でテスト勉強は無駄? 脳に定着させたいなら十分な睡眠を
試験や締切の前日に、徹夜をして勉強や仕事をする人は多いことでしょう。眠らずに頑張ればそれだけ長時間、勉強や仕事ができますから、眠った時に比べて記憶や仕事の量が増えます。しかし、徹夜して一夜漬けで覚えたことは、時間とともに急速に忘れ去られてしまうのが現状です。記憶は眠っている間に脳に定着しやすいため、勉強の後に十分な睡眠をとると長く覚えていられるのです。

◆徹夜のメリット・デメリット……血圧の上昇、睡眠障害など
徹夜をしても勉強や仕事の能率は上がりません。朝、目覚めてから13時間たつと、作業能率が低下し始めます。17時間以上起きていると作業能率は、血中アルコール濃度が0.05%と同じレベルになってしまいます。これは自動車を運転していれば、「酒気帯び運転」と判定されるほどのアルコール濃度です。

徹夜は体にも大きなダメージを与えます。たとえば、翌日の血圧は1日中、10mmHgも高いままになってしまいます。血圧を下げる薬の効果は、1剤あたり10~20mmHg下げるのがやっとですから、徹夜をすると降圧剤の効果がなくなってしまうということです。

また、徹夜仕事が続くと、睡眠と覚醒のリズムが不規則になり、さらに体温や血圧、ホルモン分泌など、他の生体リズムも狂ってしまいます。そのため、極端な宵っ張りの朝寝坊になる「睡眠相後退症候群」や、睡眠時間がバラバラになる「不規則型睡眠覚醒パターン」などの睡眠障害を起こすこともあります。

その一方で、徹夜は、うつ病の患者さんの治療法としても用いられています。いわゆる「断眠療法」です。これは医師の指導のもとで、うつ病の患者さんに徹夜してもらい、うつ症状の回復を図るというものです。日本ではあまり行われていませんが、ヨーロッパなどでは抗うつ薬が効きにくい人などに行われます。

有効率は約6割で、抗うつ薬と同じくらいと報告されています。健康な人が徹夜した朝に気分がハイになるのも、同じようなメカニズムによると思われます。

◆覚醒ホルモン「セロトニン」と睡眠の関係
光と眠気との関係には、覚醒のスイッチであるセロトニンが深く関わっています。明るい光は、睡眠ホルモンのメラトニンを抑え、覚醒物質のセロトニンを増やします。そのため、窓辺で光を浴びているだけでも、眠気を減らせますし、夕方から夜の眠気を何とかしたいときには、コンビニエンスストアなど明るい店へ行くと、メラトニンが減って眠気が収まります。

覚醒系のセロトニン神経は、リズムがある運動をすると活発になります。眠気覚ましにガムをかみますが、顎のリズミカルな運動が覚醒系神経を活性化しているのです。ほかにも、ウォーキングやジョギング、首回し運動、水泳、ゴルフのスイング練習、深呼吸、歌を歌うことなどでもセロトニンが増えてきます。

徹夜のあと休めるのなら、サングラスなどで光を遮りながら家に帰り、カーテンを引いて昼まで眠ってみます。そして夜はいつもより少し早目に寝床に入りましょう。この一連の流れが睡眠不足の解消に繋がるかもしれません。

◆徹夜明けに起きていなければならない……眠気に打ち克つ対処法
徹夜明けにも仕事や学校などで、起きていなければならないときは、日中の眠気を何とか抑えて、夜は早めに眠りましょう。日中の眠気対策ポイントは、交感神経、カフェイン、おしゃべり、仮眠です。

◇温・冷刺激で交感神経を刺激
自律神経のひとつである交感神経が活発になると、目が覚めて眠気が吹き飛びます。冷たい水で顔を洗ったり、熱いおしぼりで顔をふいたり、熱いお湯や冷たい水のシャワーを浴びたりすると、温冷刺激が交感神経を活発にして、心身をシャキッと目覚めさせてくれます。

◇カフェインで睡眠促進物質をブロック
カフェインは、脳にたまる「睡眠促進物質」の働きをブロックして、眠気を抑えてくれます。ただし、目覚まし効果が現れるまでに、20~30分ほどかかるので少し早めにとりましょう。なお、若年層なら1~2時間、高齢者でも3~4時間で効力が半減します。運転中などは、眠気が復活する前にカフェインの再投入を。

◇積極的な会話で脳を活性化
1人で静かにしていると、知らないうちに眠ってしまいます。そんな時は、誰かと積極的に会話しましょう。人とコミュニケーションをとることによって、脳が活性化し眠気が減っていきます。特に、日中の眠気のピークである午後2~4時には、来客や訪問の予定を入れておくと、日中の睡魔リスクを回避できます。

◇眠気覚ましには仮眠が一番
どうしても睡魔に勝てなくなったら、いさぎよく20分ほどの仮眠をとりましょう。午後2~4時の眠気のピークに仮眠しても良いですし、その前のランチライムに昼寝するのもOKです。仮眠の前にカフェインをとっておくと、ちょうど目覚めた頃にカフェインが効いてくるのでおすすめです。

◇坪田 聡プロフィール
日本を睡眠先進国にするため、正しい快眠習慣の普及に努める専門医。日本医師会、日本睡眠学会、日本コーチ協会所属。医師とビジネス・コーチという2つの仕事を活かし、医学・生理学と行動計画の両面から睡眠の質の向上に役立つ情報を発信している。

文=坪田 聡(医師)