ヒロシが語るソロキャンプの魅力「自由に遊べばいい、自由さが醍醐味なんです」

ソロキャンプがブームとなっている。その火付け役として脚光を浴びているのがヒロシだ。15年に開設したYouTubeチャンネルではソロキャンプの様子を配信し、登録者数は90万人(8月末現在)を突破。8月6日に上梓した最新著書『ヒロシのソロキャンプ~自分で見つけるキャンプの流儀~』(学研プラス)は発売から話題を呼びすぐに重版が決定。キャンプによって自分の世界全てが変わったという彼に、ソロキャンプの魅力を聞いた。(前後編の前編)

【写真】愛用する道具を手にソロキャンプの醍醐味を語るヒロシ

──『ヒロシのソロキャンプ』は発売前から話題で、すでに第三版となっています。

ヒロシ いやぁ、ありがたいことに、予約段階で増刷が決まって。ネットでは発売前から売り切れになってですね。一言で驚きですよ。

──これまで数多のキャンプ本が出版されてきましたが、今作はいわゆるハウツー本ではなく、ヒロシさんの使うグッズの「この○○がいい!」といったエピソードや思い出話などを通じて、ヒロシさんのキャンプスタイルを覗き見るという、今までにない内容でした。

ヒロシ 初心者向けの本や上級者向けと数あるキャンプ本の中で、僕がキャンプについて書く場合はどうすればいいか?とは考えていましたね。僕はキャンプ=自由に自分なりの楽しみを見つけるものだと思っていて、「この道具を用意しなさい!」「こう遊びなさい!」という、“型”を押し付けることが嫌いなんです。だってそれはキャンプの持つ自由さを否定しているわけですよ。

──自然の中で遊ぶことに定型はないと。

ヒロシ そうですね。人それぞれの遊び方ってあるはずですから、初心者向けにあれこれ書くのは違うなぁと。かといって僕はちゃんとしたロープの結び方も知らない完全な自己流の人なので、上級者向けはムリ。そうなると自分のスタイルをありのまま見てもらう方がいいなと。グッズ紹介を軸にしたのも、僕はこういう理由でこの道具が好きです!というのをただ見せているだけ。サブタイトルの「自分で見つけるキャンプの流儀」をそのまま書いただけで。なので、この本を読んでマネしよう!というより「こういうキャンプの形もありか」と、自分好みなキャンプの楽しみ探しの参考程度に思ってもらえるのが、一番正しい読み方な気がします。

──ソロキャンプがブームではありますが、ご自身の本が大ヒットしていることはどう思いますか?

ヒロシ こういう“自分を見つめる”というのでしょうか、一人で生きる的なことについて語ることを取材やテレビで求められる機会が増えてきて。そうした世間的な流れに共鳴した人が、もしかしたら楽しんでくれているのかな?と考えたりします。ただ本音を言ってしまうと、出版元の学研さんや作ってくれた人が頑張ってくれたから売れた。これが一番の要因だと思います。本当はこの本、もっと早く出る予定だったんです。

──確かに本が出るという情報はだいぶ前から出ていましたね。

ヒロシ 1年ほど前から企画は動いてはいたのですが、なかなか進まなくて。道具を見せることは決まっていたので、色々と写真だけ撮っていたものの、それ以外に具体的な中身やどういう文を書くのか? 進展のないままスケジュールと発売予定日だけがどんどん伸びていって。世の中もこういう厳しい状況なので、一度白紙になってしまったんです。

──まさか、そういう経緯があったとは……。

ヒロシ そういうわけで、もう出せないんじゃないかと思っていた中、学研さんが手を挙げてくださって。そこから限られた時間の中で自分が最大限に納得のいく内容まで仕上げ、なんとか出版までこぎつけたという感じです。さらに学研さんは、今はできるだけコストを削減するパターンの中で、初版本に数多くの特典を付けてくれたり、一生懸命に本を売ることについて考えてくださったんですよ。本当に学研さんの努力のおかげで売れた、と僕は思っています。ゴメンなさいね、きっと欲しかった答えではないかと思います。

──合間に挟まれたコラムも非常に味わい深い内容です。特に初期のソロキャンプについて「ダサかった」と言及しているページが気になりました。どんな感じだったのでしょうか?

ヒロシ 恥ずかしいことに最初の頃は興味がある道具を片っ端から買っては悦に浸っていたんですよ。色味やらデザインやら、とにかく全てがバラバラであったり、登山ではないのに登山道具を取り入れたりと何もわかっていなかったりしてね。ましてや冬場にキャンプをした時、防寒を意識するあまりキャンプとは思えないほどの厚着で行ったりと、もう何がダメとか説明しづらいぐらいに、えも言われぬダサさにまみれていました。

──洗練とは程遠いところにいたわけですね。

ヒロシ これは僕だけでなく同じソロキャンプ仲間の「焚火会」のみんなもそうでしたね。最初は全員ソロキャンプについて何もわかっていないから、とにかくみんなやることなすことダサかった。「ヒロシちゃんねる」初期の動画を見ると、「これはとんでもないな……」と思うようなものばかりですよ。

──そのダサさを卒業し、自分なりのソロキャンプの色が出てきた、明確なタイミングや出来事ってありましたか?

ヒロシ ん~……ありませんねぇ。僕がソロキャンプを始めるきっかけを作ってくれた、うしろシティの阿諏訪(泰義)くんという仲間と出会い、その後に料理が得意なベアーズ島田くんが加わり、バイきんぐ西村(瑞樹)くん……と仲間が増えてきて。そうなると、キャンプ先で何を使っているのか?とか、何が足りない?とか、色々な情報を交換し始めるんです。「それ買ったのか!じゃあ気になるアレを取り入れてみるか!」みたいに、今あるものに一つずつ変化を取り入れてを繰り返してきたので、地続きなんですんです。ソロキャンプは何かに成功しても楽しいですけど、失敗をも楽しめるのがいいですね。正直言えば、初期のダサい時期も楽しかった。だって色々と気づきをくれたわけですから。最初から洗練されていたり、何も変化がない方がつまらないなと思いますね。

──今のお話にも感じられましたが、ヒロシさんのキャンプ哲学みたいなのがどんどん高まっているのかなと、本を読んで思いました。

ヒロシ そうなんですよ。こうしてキャンプについて思いを巡らせて、本に文を書いたり取材を受けて話したりすると、「俺、哲学者なんじゃないか?」と思うぐらい、どんどん深い考えになっていくんですよ。焚き火について書いたページにいたってはもはや、延々と炎を題材に、完全な妄想を巡らせているだけですからね。

──道具選びからも哲学や美学を感じます。決して高価なものを使うのではなくヒロシさんが自分のキャンプにおいて最高だというものを使用していますよね。

ヒロシ いやぁ~、そうなんです!! 不思議なものでキャンプ道具って高けりゃいいものじゃなくて、高くても自分のキャンプに合わないものは全て不要物になるんですよね。最初に買ったテントは14万ほどするのですが、全く自分に合わずほぼ使わなかったからね。けど、そのテントが必要な人もいる。逆に僕が必要だと思う道具が不要な人だって当然いる。そういうものなんですよ。ましてや便利でも不便でもいいんです。デザインがいいとか、色がいいとか、そんな理由で選んでいいんですよ。例えば僕が愛用しているグッズの中に僕がやっている旅番組(『迷宮グルメ 異郷の駅前食堂』BS朝日)で……確かインドネシアに行った時かな? そこで買ったホーローのマグカップ。これは全くキャンプ向けでもないから、日本のキャンプショップでは絶対に置かれないようなもので。けど僕は、焚火にかけて、良い具合に汚れが味になるまで使っているんですよ。

──すすけ具合がまるで模様のようになっていて、オシャレですね!

ヒロシ ですよね! 家庭用品も使い込めば、一気に自分なりのキャンプ道具になるわけです。あと、焚火会仲間のウエストランド・河本太ちゃんから譲ってもらった、亡くなったおじいさんが使っていたナタも非常に良い物で。元々は農機具で全くキャンプ用に作られていないのに、非常に使いやすいし見た目も非常に味わい深くていいんですよ。これはまさに僕だけが使っている“自分だけ”の道具。それって最高じゃないですか。こうして自分が良いと思ったものを自由に使って、自由に遊べばいいんです。その自由さがキャンプの醍醐味ですから。

──ヒロシさんは小学生低学年の頃にご家族とキャンプをしたことが、外遊びを始めるきっかけだったと本の冒頭にも書かれていました。こうした外遊びはずっと続けていたのですか?

ヒロシ はい、キャンプで外遊びの楽しみを知ってからは、一人で山に行っては秘密基地を作ったり、海に行っては取ってきた貝を焚き火で食べたりを地元でずっとやっていましたね。大学に入って本格的に芸人を目指し始めると時間もゆとりもお金もなくなるから、外遊びから離れたんですけど、2003、4年くらいかな? やっと売れて金も持ち始めてからは、キャンプ道具を一式揃えてグループキャンプをするようになりました。

──最初からソロキャンプではなかったんですね。

ヒロシ そうですね。その当時はソロでやる、という選択肢は見つからなかったですね。

──では、ソロキャンプに惹かれるきっかけや理由があったのでしょうか?

ヒロシ はい、ソロの“自由”であることが、僕が追い求めていた理想のキャンプの形だったんです。簡単な話、人が何人かが集まればその段階で個人の自由ってなくなりますよね。例えばこれからご飯を食べに行こうという話をしたとします、何を食べたいですか?

──今は……中華ですかね。

ヒロシ あ~、僕はカレーが食べたいので中華はイヤですね。けど僕はみんなといると空気を読んだり気を使ってしまう体質なので、この場合「カレーがいい!」と言えず「中華、いいですね」と答えてしまうんです。この段階で一つ僕は自分を押し殺して我慢をしているわけです。衣食住を人と共にするって、この我慢と忖度の連鎖で、それがグループキャンプという場所ではより密接になるわけですから、僕はとてつもなく息苦しさを感じてしまうんです。ましてや僕がこれまで経験してきたグループキャンプは、僕が一番やる気があるからと、なぜか食材から道具まで僕が全て揃え、車も出して高速の料金も僕が払って。一体コレは何をやっているんだ!?というぐらいに負担をかけられて。人とキャンプをやるたびに「しんどいな……」と思うようになっていたんですよ。確か2010年かな? もう我慢の限界がきて、それならもう一人でやってしまおう!と、初めてソロキャンプをやってみたんですよ。

──そこでソロキャンプにハマッた!

ヒロシ いやぁ、それがこの時は楽しいという気持ちもありつつ、夜になると木が揺れる音が何かの叫び声に聞こえたり、何かに襲われるんじゃないか?みたいな「怖さ」が勝って、しばらく止めようと思いましたね。けど「誰かに邪魔されずに自分だけの遊びができる」という楽しみだけは染みついたので、ソロ用の道具をちょくちょく見るようになったんですね。今のようにガッツリとソロキャンプを始めたのはこの5、6年なんです。

※インタビュー後編「キャンプが人生を変えてくれた」は13日(日)午前11時公開予定

(プロフィール)
▽ヒロシ 1972年1月23日、熊本県生まれ。九州産業大学卒業。お笑い活動のほか、ラジオパーソナリティなど幅広い分野で活躍。自身が自ら趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYouTube『ヒロシちゃんねる』は登録者90万人を突破。初のソロキャンプ本『ヒロシのソロキャンプ』(学研プラス)が発売中。