BSテレ東は16日の「シネマクラッシュ」枠(19:55〜)で、映画『アイガー北壁』(2008年/ドイツ・オーストリア・スイス製作)を、本邦初の吹き替え版で放送する。

  • 東地宏樹、浪川大輔

    東地宏樹、浪川大輔

同作は「山岳映画」の伝統を持つドイツ映画界が、“死の壁”に挑んだ実在の登山家たちの物語を、“カメラも登った”驚異の実写映像とVFXを駆使して映画化した大作。今回が無料テレビ初放送となる。主役の登山家人、トニー(ベンノ・フユルマン)の声は東地宏樹、アンディ(フロリアン・ルーカス)の声は浪川大輔が演じる。8月末に都内で行われた吹き替え収録後に、収録を終えた2人が感想を語った。

東地宏樹×浪川大輔 コメント

・収録の感想

東地:大ちゃん(浪川)と一緒にこうやって相手役やるのも数えるぐらいしかないから、分かち合えやすい人とやらせてもらえてやりやすかったので、それが作品に反映されていたらいいなと思います。
(2人は2016年12月にBSジャパンで放送した映画「プリズナーズ」のアフレコで共演) 東地:そうだ、あれ以来だ。
浪川:ありましたね。懐かしいな。東地さんは僕にとっても兄貴分というかゆだねるというか、作品もそういう関係性なので非常にリンクしていて会話しやすいな、一緒に録れてよかったなと思います。それに一緒に登っていたもうひとコンビ(エディ役の多田野曜平、ヴィリー役の鈴木琢磨)のあの癖の強さ、ほんと面白いなって。声おんなじですしね。
東地:ナイスキャスティングですよね、本当に。あの「あーっ」って叫ぶところとか。
浪川:そういう対照的なコンビも見どころなのかな、と思います。
東地:トニーは、大ちゃんがやったアンディよりも、行動とは相反して死にたくないよという気持ちが前に出る人だったんだな、という感じはありました。
浪川:トニーとアンディの2人は、すごくいいコンビだと思いました。性格は全然違うんですけれども、すごく過酷な状況の中でより絆みたいなものが強くなっていきます。トニーが優しい人だなというのが全編通してあって、トニーが生きたがっている、まだまだ先を見ている姿というものは、グッとくるものがあります。非常に心に残る作品じゃないかと思います。僕の演じたアンディも、あんな過酷な状況で正常な判断ができない中で、あの決断をするっていうのはすごい男です。実は熱血漢でちょっと熱くなってしまうキャラクターだったなと。最後にそういうシーンがあって、ほっとしています。よかったなと。

・作品の見どころ

東地:アイガーっていうのはすごく難しいルートで、壁があるっていうことも知っていたけど、こういう事実があったということを知らなかったので、この残暑にこの寒い感じのものを見る、このタイミングになかなかいいじゃないかと思います。硬派ですけど、たくさんの人に見 てもらえたらいいなと思います。
浪川:時代感がすごく出ているので……。東地さんが収録中に画面を見ながらちょいちょい突っ込むんですよ。これを登るにはずいぶん軽装だな、とか。
東地:大変だよね。
浪川:その時代の最高の装備なんでしょうけど、こんな大変な思いをして山、というか壁を登っていくんだ、と思うと...。東地さんもおっしゃったように、いろんなことを知れるな、と思いました。一回途中まで登って、荷物を置いてからもう一回登りなおすとか。
東地:元祖、すごくきつい登山というのを見せられた気がして、そのシンプルさが逆に怖いというか。落石だーつったって、自分がやったやつが落ちて、ぶつかっているわけですからね。それ、なかなかなことだなって思ったな。
浪川:トニーと恋人のルイーゼとの関係から、ただ山に登りたいだけじゃない気持ちっていうのがこんなに人を奮い立たせるものなんだという感じでした。
東地:なんか見ていると、たらればを感じてしまったりはしますよ。あれさえなければこうはなっていないっていうのがね、ちょっと、ありますね。男のロマンもあるでしょうけど。」浪川:トニーの言うことをちゃんと聞いとけば...。やっぱり、人の話はちゃんと聞いておくべきだと思います。目標を掲げてただ突っ走るんじゃなくて。ちゃんとザイルを打ち込みながら人生進んでいかないと、と思いました。
東地:それとこの映画は半分実写ですよね。だからこその違和感がない映像が作品の魅力、みどころかもしれないです。
浪川:それも話していたんですよ。カメラマンさんどこにいるの? とか。ほんと違和感ないですもんね。すごいなあと思いました。美しい映像がいっぱいです。

久保一郎(テレビ東京)プロデューサーコメント

かつては地上波各局が毎週のように制作していた、洋画のオリジナル吹き替え版。声優陣がスタジオに一堂に会して匠の技をぶつけ合い、掛け合いで一気に録り上げる、まさに日本ならではの文化ですが、近年はめっきり制作の機会が減りました。さらに、ここへ来てのコロナショック。スタジオに同時に入れる人数は制限され、収録には何倍も時間がかかるように。“みんなで作り上げる”現場を失って悩みましたが、吹き替え文化の灯を絶やしてはいけない、と制作に踏み切ったのがこの「アイガー北壁」です。コロナ禍の中で制作される初のテレビ吹き替え版。前人未踏の絶壁で予期せぬ状況に立ち向かう登山家たちのごとく、いつもと勝手が違う中で変わらぬ名演を披露してくれた声優陣の不屈の挑戦を、じっくりお楽しみください。