半導体市場動向調査会社である台湾TrendForceがまとめた2020年第2四半期におけるファブレス半導体企業の売上高ランキングトップ10によると、前四半期トップであったQualcommを僅差でBroadcomが抜き去り、首位に返り咲いたという。

BroadcomとQualcommはこのところ、ファブレス半導体企業トップの座を争ってきたが、同第2四半期は、在宅勤務や遠隔教育のニーズに後押しされ、5G製品に対する需要が増したものの、Appleの新製品の投入遅れなどの影響もあり、期待ほどに売上高が伸びず、前年同期比でプラス成長となったにも関わらず、同マイナス成長を記録したBroadcomを抜くことができなかった模様だ。

  • ファブレス企業ランキング

    2020年第2四半期のファブレス半導体企業売上高ランキングトップ10。売上高を公表していない企業(例えば中Huaweiの子会社HiSiliconなど)は含まれていない (出所:TrendForce)

TrendForceのアナリストであるCY Yao氏は、「これまでは第3四半期にAppleがリリースする次世代iPhoneが、Qualcommの第2四半期の売り上げをけん引してきた。しかし、2020年は次世代iPhoneのリリースが遅れることとなるため、Qualcommの売上高の伸びが鈍化することとなった。一方のBroadcomは、四半期売上高として1位の座を取り戻したものの、米中間の緊張の高まりにより、売り上げはマイナスのインパクトを受ける結果となった」と両社の動きを分析している。

3位のNVIDIAは同47.1%増と大幅なプラス成長を遂げたが、これは買収したMellanoxの売り上げを自社のデータセンター関連売り上げの一部として含めた結果であり、これにより自動車部門などの不振を補うことができるようになったという。

NVIDIAに次いで同26.2%と高い伸びを示した5位のAMDは、ノートPC市場におけるRyzenプロセッサならびにサーバ市場におけるEPYCプロセッサの躍進によるところが大きい。一方、トップ10でもっとも成長率が同14.5%減と低かったXilinxは、主軸市場の1つであるネットワーク分野の売り上げが新型コロナの影響で同33.2%減と大きく落ち込んだほか、自動車分野の落ち込みも重なった結果であり、同社としては初めて前年同期比で2桁のマイナス成長を記録したとTrendForceでは指摘している。

ちなみにTrendForcのランキングは、業績を公表している企業のみ取り上げているため、中Huaweiの子会社であるHiSiliconについては、株式非公開であり業績が公表されていないため含まれていない。別の調査会社である米IC Insightsは、HiSiliconの同四半期の売上高を25億5000万億ドルと推定しており、これをTrendForceのランキングに当てはめると、4位のMediaTekの上に位置することとなる。

しかし、米国商務省によるHuaweiに対する制裁強化に伴い、HiSiliconが今後、Huaweiのさまざまな製品に対するチップ需要を満たす可能性は低いと言える。そのため、2020年下半期にリリースされる最新版のKirinプロセッサが同社がリリースする最後のモバイルプロセッサになるとTrendForceでは予想しているが、Kirinのみならず、サーバCPUやAI、5G向けチップなど、Huawei向けのほかのチップも今後、同様の運命に直面する可能性があるともしている。

なお、CY Yao氏は、2020年通年のファブレス業界の売上高見通しについて「データセンター、5Gインフラ、5Gスマホ市場からのコンポーネント需要に加え、在宅勤務や遠隔教育関連製品の需要に支えられ、比較的明るいものと考えている」としており、注力製品により市場の温度差はあるものの、堅調に推移するものとの見方を示している。