鈴木このみ。1996年11月5日生まれ、大阪府出身。全日本アニソングランプリで優勝、畑亜貴リリックプロデュース「CHOIR JAIL」で15歳でデビュー。以降、数多くのTVアニメ主題歌を担当している
撮影:稲澤朝博

7月から3カ月連続で夏アニメの主題歌シングルをリリース中の、アニソンシンガー・鈴木このみ。そのラストを飾るシングルが、”恋とプロデューサー featuring Konomi Suzuki”としてリリースする「舞い降りてきた雪」だ。

TVアニメ『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』のEDテーマとなっているこの曲は歌声に温かみを乗せたウインターバラード。この2カ月リリースしてきた「Theater of Life」「Realize」とは異なるテイストの楽曲に仕上がっている。カップリングも含めて『恋プロ』の世界に寄り添い、新たな挑戦にも取り組んだ本作について語ってもらった。

●1曲を通して強く意識した、“女性ならでは”の要素

――今回のシングルではアーティストとしての名義が、普段と違っていますね

まさに名義通り、『恋プロ』の世界観に1枚まるごとどっぷり浸かった鈴木このみ……というコンセプトの1枚になっています。『恋プロ』の主人公は会社を建て直すべく頑張る女の子なんですけど、まさに”会社で頑張る女性”というものがコンセプトになっていて、かなり新しい扉を開いた1枚になったな、と感じています。

――表題曲「舞い降りてきた雪」自体も、7・8月のシングルのような攻め攻めのバンドサウンドではなく温かなポップスと、違いが感じられます。

自分が表題曲でこういう曲を歌うことって珍しいと思うんですよ。例えば「Theater of Life」とか「Realize」にはちょっと少年感があります。最近、「自分の中に少年性を持ち合わせている」と感じているのもあって、そういう曲のほうが得意なんです。

でも、この1枚では女性らしい繊細さや女性ならではの力強さをすごく意識しながら歌っていきました。それにこの曲って、なんだかちょっともどかしさも感じるんですよ。

――もどかしさですか?

そうなんです。例えば『デカダンス』も『Re:ゼロから始める異世界生活』も、主人公の意志がすごく強いじゃないですか? でも『恋プロ』は、前2作品とは違って「変わりたい」と頭でわかっていても、なかなかうまくいかない女性像というか……。そういうもどかしさも描かれているところが、この曲の魅力のひとつになっているように思います。

――女性に限らず男性でも同じような想いを抱えている方も多いでしょうし、そういう意味で”現実感”という意味でのリアルさを非常に感じる曲ですよね。

たしかに。それこそ学校や会社とかいろいろなところで頑張る人に対して、すごく身近に感じてもらえる楽曲だと思います。

――「Realize」のカップリングの「A Beautiful Mistake」とはまた違った意味合いで、夢に向かっている人にエネルギーをくれる曲という印象がありました。

やっぱり「舞い降りてきた雪」というタイトルもあって、雪が手のひらに落ちて溶けるような、女性ならではの優しさもある曲です。でも、フルサイズを聴くと、繊細に入ってくるAメロに対して、大サビは力強くて、1曲通してかなり違う印象を受けるというところもポイントなんです。まるで1曲の中で、主人公の女の子が成長を遂げていくような、いろいろな面を楽しめるものになっています。ただ、楽曲構成がすごくシンプルな分、歌が悪いとすべて台無しになってしまうようにも感じていまして……。

――歌う際にはそういったプレッシャーを感じていた。

はい。楽器陣がガンガン鳴っているような曲ではなくて、どちらかというと歌をサポートしてくれるようなサウンドになっているので。あと、今まであまり歌ったことのない曲調だからこそ、「もしここでできなかったら、今後こういう曲を歌わせてもらえないかもしれない」みたいな気持ちもちょっとありました(笑)。でも、これでもし皆さんに受け入れてもらえたら、私自身も歌手としての幅が広がるんじゃないかなと思いました。そういう意味でも、「勝負の1枚になっているんじゃないかな」という気持ちで歌っていきました。

●腐心したのは、女性らしさと冬の雰囲気の表現

――実際歌ってみて、歌いやすさみたいなものは感じましたか?

感じました。楽器も歌に合わせて、リズムをちょっともったりさせてくれていて、本当に歌を引き立たせてくれる演奏をしていただけたと感じています。

――歌う際のイメージは、曲を受け取ってからすぐ浮かびましたか?

はい。メロディ自体もすごくシンプルで、歌の表情をつける余白がかなりあったので、ミュージカルじゃないですけど、どんどん場面が変わっていく様子が思い浮かびました。でも、最初はなかなかうまく表現できなくて。3カ月連続リリースの表題曲のうち、物理的な練習量はこの曲が一番多かった気がします。

――自分の理想と実際のアウトプットが、最初はうまく擦り合わなかった部分もあった。

そうなんです。この曲では曲調が新しかったこともあって練習レコーディングみたいなのがあったんですけど、最初のうちはもう本当にどうしようかと思ったぐらいだったんです(笑)。それに、女性らしさにプラスして冬のシーンの、透明度のある雰囲気も表現したかったので、技術的にも難しかったです。ここ最近は勢いがよくて「荒いぐらいがいい」みたいな楽曲が多かったので、息遣いまで聴こえちゃいそうなぐらいの繊細な曲というのは、新しい挑戦でしたね。