ニコンから、写りがよく買いやすい価格のフルサイズミラーレスカメラ、ニコン「Z 5」が登場しました。上位機種の素晴らしい点を受け継いだ、軽量コンパクトで使いやすい一台に仕上がっていると感じました。8月28日の販売開始を前に、試作機で撮影を試してみました。

  • ニコンが8月28日に販売を開始する低価格フルサイズミラーレス「Z 5」。実売価格は、ボディ単体モデルが税込み165,000円前後、コンパクトな標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」が付属する24-50レンズキットが税込み200,000円前後。キャッシュバックなどのキャンペーンの対象にはなっていない

充実スペックながら、レンズ込みでも軽く1kgを切る軽さ

Z 5は戦略的な価格が魅力です。キットレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」とのセットがおよそ20万円前後と、買いやすい価格となっています。この価格なら、今までフルサイズ機の導入を迷っていた人でも背中を押される感じではないでしょうか? しかも、スペックがとても魅力的なのです。

撮像素子は有効2432万画素のフルサイズCMOSセンサーで、裏面照射型ではないものの高感度特性も優れ、常用ISO感度も100~51200となっています。ボディサイズはW134×H100.5×D69.5mm、重さは約590g(本体のみ)と、上位機種「Z 7」「Z 6」とほとんど変わらないのですが、携行性と画質を両立させた沈胴式のキットレンズが約195gという軽さなので、レンズをボディに装着しても1kgを軽く切るのが驚きです。毎日持って歩いても苦にならないサイズ感がスゴいですね。フルサイズ機とは思えません。それでいて、もちろんボディ内手ブレ補正機能も搭載しています。5軸5段対応で、ビギナーでも安心して使えることでしょう。

見やすいEVFもうれしい点です。約369万ドット、0.8倍と上位機種とほぼ同等の視界を持ち、被写体をしっかりと捉えてフレーミングできます。長時間の撮影でも疲れにくく、実際に撮影していても快適だと感じました。

ボディの造りもしっかりしています。グリップは大きくてホールドしやすいですし、マグネシウム合金ならではの高い堅牢性と防塵防滴性能も有しています。

動物瞳AFにも対応、バッテリーの持ちも良好

273点のオートフォーカスエリアも魅力です。ほぼ画面いっぱいに測距点が配置されているので、コーナー付近にピントを合わせたい場合でも、サブセレクターを使って容易にポイントを移動しフォーカスできます。ポートレート撮影に威力を発揮する瞳AFはもちろん、ネコやイヌを認識してピント合わせが可能な動物瞳AFも搭載されているので、幅広いシーンで確実に合焦した写真を得ることができるはずです。3.2型のチルト式タッチパネル液晶を使ってのライブビュー撮影もできるので、三脚を使用する場合でも楽な姿勢でシャッターを切れるでしょう。

ニコンのカメラは、バッテリーの持ちがよいことで定評がありますが、新型バッテリー「EN-EL15c」を採用したことでスチル約470コマ、ムービー約120分も撮影できるのもいいニュースでしょう。旅先で便利なUSB給電と充電に対応しているのも素晴らしいですね。そして、UHS-II規格対応のデュアルSDカードスロットを搭載したことも特徴です。CFexpressカードやXQDカードよりも手軽に入手できるメディアなので、たくさん撮影したい旅行時も安心でしょう。

写り、使い勝手、信頼性、軽量コンパクトさ、そして魅力的なプライスと、スキのないフルサイズミラーレスカメラに仕上がっています。キットレンズのZ 24-50mmとのコンビネーションは実に軽快で、撮影が本当に楽しかったことを最後にお伝えしておきましょう。

  • キットレンズの「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」は沈胴式で、コンパクトに携帯できます。その小ささながら、写りは秀逸で驚かされます。こちらはワイド端で小田原城を撮ったものですが、24mmの拡がりのある描写と石垣の緻密な精細感がいいですね(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/500秒、F8.0)

  • 同じ位置からテレ端にズームしてシャッターを切りました。この画角でもヌケ感が素晴らしく、瓦屋根や城壁の細かい写りに好感が持てます。約195gの小さなレンズですが、実力はなかなか。大口径、ショートフランジバックのニコンZマウントの底力を感じました(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/400秒、F7.1)

  • 半逆光で上野・不忍池で蓮の花を狙いました。難しい光線状態ながら、花びらの微妙な色合いをしっかりと捉えてくれました。葉の立体感もよく、自然で見た目に近い表現力を持っているカメラとレンズだといえるでしょう(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/400秒、F7.1)

  • 有効2432万画素のフルサイズCMOSセンサーは解像感も十分。このクラスでは標準的なピクセル数となりますが、植え込みの植物の葉の写り、トタンの錆びた感じなど十分な描写性能を有しています。扱いやすいファイルサイズも魅力です(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/80秒、F7.1、-0.3補正)

  • 起動とレスポンスも良好。シャッターボタンと同軸の電源スイッチは瞬時に電源をONにでき、とっさのシャッターチャンスを逃しません。EVFの見え方も上位機種譲りで、狙った構図を確実に切り取ることが可能です。使いやすいフルサイズミラーレス一眼カメラだと感じます(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/125秒、F14.0、-0.7補正)

  • Z 24-50mmとの組み合わせは実に軽快で、どこまでもブラブラとフォトウォークできそうな印象です。273点のオートフォーカスエリアはフレームいっぱいに拡がっていて、AFの食いつきもなかなか。ふだんはカメラ任せの「オートエリア」でも被写体を逃すことはないでしょう(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/500秒、F8.0、-0.3補正)

  • 試作機による撮影でしたが、その描写は素晴らしいものでした。解像感、発色、コントラスト、ヌケ感ともに納得のいく写真を撮れました。レンボーブリッジと遊覧船を捉えましたが、夏の夕方感をリアルにキャプチャーできたと思います(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/500秒、F8.0、-1補正)

  • 日没をお台場で迎える人たちをシルエットで。軽快感、写り、操作性、レスポンスがよく、イメージどおりのカットが撮れるカメラだと感じました。シリーズの上位機種「Z 7」「Z 6」のサブとして、APS-C機「Z 50」のコンビとして、またはじめてのフルサイズミラーレス機として、ビギナーからベテランまで満足できるベーシックなフルサイズ機だと思います(NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3使用、ISO100、1/1250秒、F8.0、-0.7補正)