新型コロナウイルスが引き起こすさまざまな不確実性により、多くの企業が2020年上半期、サーバ調達のための設備投資(CAPEX)をやめてクラウドサービスのサービス利用(OPEX)に移行した結果、サーバ受注量が減少し、DellやHPEをはじめとするエンタープライズサーバサプライヤ各社は年間出荷目標を引き下げる事態となっている。そのため、半導体市場動向調査会社の台TrendForceは、2020年第3四半期のサーバ出荷数を従来の予測である前四半期比0.8%減から同4.9%減に下方修正したことを明らかにした。

エンタープライズサーバの出荷数は、閑散期にあたる2020年第1四半期に減退した後、同第2四半期にリバウンドし、そのまま第3四半期でピークを迎えるものと思われていた。しかし、新型コロナの影響から企業は設備投資を抑制していることから、第3四半期のサーバ市場もその影響を受けており、全体的に出荷数量が減少。Dell、HPE、Huawei、Inspurなどの主要なサーバメーカーは、いずれも出荷数量を前四半期比で2桁近く減らすことになるのではないかとTrendForceでは予想している。

2020年第3四半期唯一出荷数を伸ばす見込みのLenovo

2020年のサーバメーカー各社の動向としては、大手のDellが高収益生産ラインの台湾への移管とクラウドサービスの顧客(金融機関や小規模クラウドサービスプロバイダなど)の積極的な獲得により、競争優位性を維持することが予想されるが、世界的に設備投資を抑える傾向が続くことから、下半期の出荷実績に影響が生じるとTrendForceでは予測している。

同じく大手のHPEだが、2020年上半期にサーバ製品の約10%をAMDのRomeプラットフォームに移行したものの、移行の初期段階にほとんどのクライアントがIntelプラットフォームであり、CPUの供給不安に巻き込まれることとなり、上半期の出荷数量は予想を下回る結果となった。また、第3四半期も既存エンタープライズクライアントからの注文数が減少しており、出荷数量は前四半期比で減少する見込みだとしている。

また、サーバメーカー大手5社のうち、唯一Lenovoのみ、北米クライアントからのデータセンター向けの注文が増加したことを受け、前四半期比で出荷数を増加させる見通しとなっている。

中国で進む中国メーカー製サーバの普及

中国市場については、中国に拠点を置くほとんどのハイパースケールデータセンターとCSP(クラウドサービスプロバイダ)が中国メーカーのサーバを購入しており、InspurとHuaweiのサーバ出荷数を下支えしているようだが、第3四半期は景気後退の影響によりインフラ構築が予定通り進んでおらず、年初予想と比べ、エンタープライズクライアントによるサーバ調達レベルは予想よりも低くなっており、Inspur、Huaweiともにサーバ出荷数の減少に悩まされる可能性があるとTrendForceでは指摘している。

サーバの出荷動向は、半導体デバイス、特にプロセッサやメモリの売上予測の指標となっているが、2020年第2四半期にサーバの出荷数が急増したため、通年の半導体市場予測を上方修正した調査会社も多い。しかし、その一方でそうした楽観的観察に厳しい見方を示す調査会社もあり、実際にはどちらの方向に向かっているのか、第3四半期のサーバの出荷状況を見極める必要があるだろう。

  • TrendForce

    四半期ごとのエンタープライズサーバの出荷台数推移(灰色:年初の予測、緑色:8月時点の予測) (出所:TrendForce)