結婚して苗字が変わると、自分が持っている銀行口座の名義も変更する必要があります。ほとんどの人は何の疑問も持たずに名義変更すると思いますが、中には「万が一離婚となった時のために、旧姓の銀行口座を持っていたほうがいいのでは」という考えが頭をよぎる人もいるかもしれません。

結婚しても、人生は何が起こるか分からないもの。離婚という事態に備えて、旧姓の銀行口座は持っていた方がいいのでしょうか。

  • 離婚時に備えて、旧姓の口座は持っておいた方がいい?

苗字が変わったら速やかに名義変更を

新婚生活は、新居への引っ越しや各種手続きなど、大変慌ただしいものです。その中で銀行口座の名義変更を行うのは面倒ですが、苗字が変わったら、できるだけ早く手続きを済ませましょう。ただし、「入籍後何日以内に」という具体的な決まりはありません。

銀行口座の名義変更は、必要書類を持って銀行の窓口で行えます。銀行によって多少異なりますが、通帳やキャッシュカード、運転免許証などの身分証明書、個人番号(マイナンバー)カードなど個人番号が確認できる書類、届け印、新しい届け印などを持参し、名義変更の手続きをしましょう。

旧姓の口座名義のままだと困る事態とは

このように、苗字が変わったら可能な限り早めに名義変更をする必要があります。とはいえ、「普段使っていない口座まで変更しに行くのは面倒」といって、氏名をそのままにしている銀行口座はないでしょうか。また、冒頭で触れたように、離婚などで苗字が元に戻る可能性を考え、旧姓のままの口座を持っている人もいるかもしれません。

しかし、名義が現在の苗字と合っていないと、様々な場面で困る恐れがあります。たとえば、預金がペイオフ(金融機関が破綻した時、預金者の一定の資産が守られる制度)で保証される場合、口座名義と現在の名前が合っていないと、本人と見なされないことがあります。また、本人確認が必要な引き出しができない、公共料金やクレジットカードの引き落としができないといった事態も起こりえます。

さらには、口座のお金が「休眠預金」になった時、預金を払い戻すのが面倒になることも考えられます。休眠預金とは、10年以上入出金などの取引がない口座の預金です。これまで、休眠預金の定義は金融機関によってまちまちでしたが、2018年1月に施行された「休眠預金等活用法」という法律により、そのように定められました。

この法律に基づき、休眠預金となったお金は預金保険機構に移管された後、公益活動を行う民間団体などに助成金や貸付金などとして充てられ、有効活用されるようになったのです。

「知らない間に自分の預金が使われてしまう」と思うかもしれませんが、その心配はありません。口座のお金が休眠預金となりそうな場合は、残高が1万円以上なら金融機関に登録している住所に通知が郵送され、通知が届けば休眠預金とはならないからです。

預金が預金保険機構に移された後でも、金融機関で手続きをすれば、預金と利息は払い戻すことができます。預金を引き出すには、通帳やキャッシュカード、本人確認書類などの必要書類を、預け先金融機関の窓口に持参しなければなりません。

ただし、預金の名義が旧姓のままだと、追加の書類や手続きが必要になる場合があります。さらに、氏名や住所の変更手続きをしていないと、休眠預金になる際の通知が正しく受け取れないことも考えられます。これらのデメリットを踏まえれば、速やかに名義変更をしたいものです。

離婚の時財産分与の対象となるのは

では、もし離婚をすることになった時、口座名義を旧姓から変更していても困ることはないのでしょうか。

たとえば、離婚をする際、結婚生活の中で夫婦が協力して築き上げた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配する「財産分与」を行います。この時、「口座の名義変更をしてしまうと、独身時代の自分のお金も財産分与されてしまうのでは」と考える人がいるようです。

しかし、財産分与の対象となるのは、結婚生活を送る中で、夫婦が協力して形成してきた財産です。そのため、たとえ入籍後に名義変更がされていても、独身時代の貯金等は「特有財産」という個人の資産となり、財産分与の対象とはなりません。反対に、たとえ夫婦のうち片方の名義になっていても、夫婦が協力して得た財産であれば、財産分与の対象となります。

とはいえ、独身時代の貯金と結婚後に夫婦で貯めたお金は、しっかり管理しておかないと、一緒くたになりがちです。

結婚したのに離婚後のことまでは考えたくないものですが、独身時代のお金を確保したいなら、口座名義を旧姓のままにしておくのではなく、家族の共有財産ときちんと線引きをしておきましょう。家族の生活費口座や貯金口座と、夫婦それぞれの個人的な口座は分けるなどといった家計管理が大切になります。

旧姓の口座を保有したい場合は銀行に相談を

口座名義が旧姓のままだと、思わぬ弊害があります。新婚の方だけでなく、「結婚してしばらく経つが、そういえばまだ名義変更していなかった」という人は早めに手続きをしましょう。なお、「どうしても旧姓のまま口座を残したい」という場合は、まずは取引銀行に相談をしてみてください。