苦しい将棋を逆転した丸山九段は、第29期以来6回目の挑決の舞台に登る

豊島将之竜王・名人への挑戦権を争う、第33期竜王戦(主催:読売新聞社)決勝トーナメント準決勝の▲久保利明九段-△丸山忠久九段戦が8月12日に関西将棋会館で行われました。結果は138手で丸山九段の勝利。第29期以来、4期ぶりの挑戦者決定三番勝負へと駒を進めました。挑決の相手は本日13日に行われる▲梶浦宏孝六段-△羽生善治九段戦の勝者です。

振り駒で先手番となった久保九段の戦型選択は四間飛車でした。四間飛車は第68期王座戦では挑戦者決定トーナメントの4局全てで用い、挑戦権を獲得する原動力となった戦型です。竜王戦決勝トーナメントでも初戦の佐々木勇気七段戦で採用しています。

対する丸山九段は、銀冠と舟囲いをミックスしたような布陣を採用。飛車を7筋に配して角頭攻めを見せつつ、仕掛けの好機をうかがいます。

先に仕掛けたのは久保九段でした。角交換から飛車と角の交換を行い、盤上の要所に角を据えます。この角で香得を果たし、馬にしてから天王山の5五に馬を引き付けて久保九段が優位に立ちました。しかし、丸山九段は相手の攻め駒を責める強気な受けを次々と繰り出して、久保九段に楽をさせません。

丸山九段の頑強な受けに手を焼く久保九段。大駒すべてを相手に渡し、小駒だけの攻めとなってしまいました。久保九段の息切れ模様は明らかですが、丸山九段はそれを決定づける好手△6四角を放ちます。受けては自陣に利きを足しつつ、攻めては相手玉を間接的ににらむ攻防の角打ちです。

本来なら攻めの手を指したい久保九段ですが、やむなく角の利きから玉を逃がします。丸山九段は歩で王手をした後、久保九段の盤上唯一の攻め駒である成香取りにもう1枚の角を設置。この手も攻防手で、久保九段が香取りを受けるのではなく、自陣の受けを優先したため、丸山九段は成香を取ることに成功しました。飛車角を相手に渡したものの、盤上の攻め駒を除去することに成功した丸山九段が今度は優勢となりました。

優勢になった後も丸山九段の丁寧な指し回しはぶれませんでした。久保九段の大駒2枚の攻めにしっかりと対処し、相手の攻めが緩んだ隙に一気に反撃に出ます。瞬く間に久保玉を追い詰め、最後は自陣の飛車を活用して久保玉を詰まし上げました。

この勝利で丸山九段は挑戦者決定三番勝負に進出。七番勝負への切符を争う相手は羽生九段か梶浦六段です。本日13日に行われている▲梶浦六段-△羽生九段戦は、梶浦六段の横歩取り青野流となっています。

横歩取り青野流は先手番の作戦で、あまりの勝率の高さから一時期プロの公式戦から横歩取りを激減させました。しかし、最近では後手番にも対策が出始めてきており、少しずつではありますが後手番横歩取りも復調気配を見せています。

丸山九段と挑戦権を懸けて三番勝負を戦うのは、タイトル獲得99期、永世竜王の資格を持つ羽生九段か。それともトーナメントの一番下から駆け上がり、「竜王戦ドリーム」の体現者となりつつある梶浦六段か。各種中継から目が離せません。

竜王戦での活躍が際立つ丸山忠久九段
竜王戦での活躍が際立つ丸山忠久九段