カニエ出馬は「問題になりかねない」と専門家、民主党バイデン候補の脅威となる可能性

カニエ・ウェストの大統領選出馬はほとんど余興に過ぎないが、ウィスコンシン州のような接戦州では大問題だ。「いいですか、これは問題になりかねませんよ」と、選挙予測の専門家レイチェル・ビテコファー氏は語る。

あまりにも多くの州で出馬申請期日が過ぎてしまっているため、ほとんどの州では11月の大統領選の投票用紙にウェストの名前は記載されない。だが火曜日(8月11日)、ウィスコンシン州での出馬届けには間に合った。これにより、2016年にトランプ大統領が2万3000票の僅差で勝利を手にした州で、ラップ界のスーパースターが最終決戦の行方を左右することになるかもしれない。

ニューヨークマガジン誌によると、ウェストは9つの州で投票用紙に名前が記載される予定。まだ出馬届を受け付けている州は19ある。だが、大統領選討論会でカニエ、トランプ、バイデンの三つ巴を期待している人々には残念なお知らせだ。討論会委員会では、当選に必要な選挙人270人を擁立できる資格がない候補者に対し、討論会への参加を認めていない。

しかしながら、ウェストの大統領選出馬を真剣にとらえるべき理由が2つある。彼の出馬が、アメリカ史上もっとも重大とみられる大統領選挙とエンターテイナー本人の精神状態の両方に、実質的な影響をもたらす恐れがあるからだ。

第一に、2020年大統領選挙が接戦だった場合、ラッパーはメインの両候補から相当数の票を吸い上げる可能性がある。力の均衡がやぶれ、激戦州の行方が大きく変わり、最終的には選挙全体の結果も左右しかねない。二つ目はラッパー本人の健康状態だ。この点に関しては、7月末サウスカロライナ州で行われた最初の選挙集会の後――どこから見ても奇想天外だった――妻のキム・カーダシアン・ウェストも公に口にしている。


2020年7月19日、初の選挙集会で泣き出したカニエ・ウェスト

共和党には、カニエ・ウェストの出馬をトランプ再選の好材料ととらえている節が多分にある。ニューヨークタイムズ紙や複数の報道によれば、オハイオ州やウェストヴァージニア州、アーカンソー州など複数の州では、大統領の支持者が投票用紙にウェストの名前を記載するよう働きかけているらしい。実際に今週、コロラド州では投票用紙に名前が載ることが決定した。

果たしてウェストが票割れを起こすのか。詳しく知るために、ローリングストーン誌は政治科学と選挙予測の専門家レイチェル・ビテコファー氏に、予想されるカニエ効果について話を聞いた。2018年、民主党が中間選挙で下院の過半数を取り返した「ブルーウェーブ」現象をぴたりと予測した人物だ。

専門家が証言、カニエ出馬はなぜ大問題なのか?

ウィスコンシンのような州でウェストが投票用紙に記載された場合、2016年に第三党の候補者の存在がヒラリー・クリントン候補の敗北を左右したのと同じように、バイデン候補の勝算に大きく響く可能性がある、と彼女は言う。たしかにトランプ氏はいくつかの激戦州で決定的勝利を収めたが、一部の報道では、他の候補者の影響――彼女が「第三党離反」と呼ぶもの――が見過ごされている。

「第三党の存在の重要性を、私は第三党離反と呼んでいます」とビテコファー氏。「ドナルド・トランプ大統領についていえば、メディアでは(2016年)中西部での勝利が要因だとよく言われています。たしかに、トランプ氏はこれらの州で逆転勝利を収めました。ですが数字をよく見ると、実際はそうではないんです」

そう言ってビテコファー氏は、データの分析結果をくわしく説明した。「たしかにオハイオ州やアイオワ州をみると、彼は決定的勝利を収めています。ですがウィスコンシン州などでは、実際にはかなりの票が第三党に投じられていました。ゲリー・ジョンソン候補や緑の党、それから自書式投票による書き込みです。非常に珍しいことですよ。書き込み投票の内容はわかりませんが、私の予想では大半がバーニー・サンダース氏ではないかと思います」

2016年、ドナルド・トランプ氏が過半数の票を獲得できなかった点も重要なポイントだとビテコファー氏は言う。「第三党離反に注目すると、ドナルド・トランプ候補とクリントン候補の得票差は約0.7ポイントでしたが、第三党の得票率はこれをはるかに上回っているんです。ほぼすべての激戦州を見てみると、たしかにドナルド・トランプ候補が勝利していますが、ほとんど横並び状態です。得票数は過半数の50%に届いていないんです」

さらに彼女はこう続ける。「なぜなら、両候補の得票率の合計は92~95%、残りが第三党離反票です。いつもの3~5倍増しです。中には、最近行われた他の選挙よりもはるかに増えた州もあります」

2016年の選挙結果と大統領の支持率伸び悩みを踏まえれば、トランプ陣営ができるだけ多くの州でウェストの名前を投票用紙に記載し、第三党票で大統領を再選させようとしている可能性は非常に高い、とビテコファー氏は警告した。

「トランプ大統領の再選戦略を見た場合、私は2年ほど前から申し上げているんですが、ドナルド・トランプ陣営にとってみれば大問題ですよ、そうでしょう?」とビテコファー氏は言う。「自分たちの候補者は最初の選挙で50%の過半数票を獲れず、一般投票数でも劣り、支持率も上がらない。今回も勝てる見込みはない……どうすれば再選させられるか? と考えたときに、はっと気づくんです。そうだ、2016年は第三党票が大きく左右した。今回も同じ手を打たなかったら大変なことになるぞ、と」

カニエには候補者としてアドバンテージがある

ビテコファー氏はソーシャルメディアで否定的な発言をする人々に向けて、カニエの存在を侮ってはならない、と言った。彼には候補者としてすでにアドバンテージがある。すなわち、セレブリティとしての立場と知名度だ。

「いいですか、これは大問題になりかねませんよ」とビテコファー氏。「カニエ・ウェストの知名度はほぼ全国区です。考えられる中で最大の財産です。その上、彼はセレブです。この国はセレブが大好きです。トランプがその価値を教えてくれました」

共和党はカニエの名前を投票用紙の載せる以外に、具体的にどんな手でカニエに加担するのか? その答えは、若者や黒人有権者に狙いを定めた広告戦略だ。「共和党は彼の選挙陣営の宣伝を支援し、若者の有権者層に狙いを絞って、書き込み投票でカニエ・ウェストに投票するよう仕向けてくるでしょう」とビテコファー氏は言った。「黒人有権者も狙っています。犯罪取締法に対するバイデン候補の過去を取り上げ、『カニエ・ウェストに投票するべきです』と言うのです……票を吸い上げて、バイデン候補に票が流れるのを阻止するのが彼らの狙いです。そうやって引き続き権力を握り、その権力で(黒人)コミュニティをさらに痛めるつもりなんです。私に言わせれば、とんでもなく狡猾なやり方です」

候補者のカニエ本人はというと、今週フォーブス誌とのインタビューに応じ、当選に必要な270人の選挙人を擁立できない以上11月の選挙戦ではかき回し役でしかないのでは、という質問にこう答えた。「お前と議論するつもりはない。決めるのは神(Jesus is King)だ」

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From Rolling Stone US.

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