桑田二郎氏追悼 時代を駆け抜けるヒーロー「8マン」は永遠に

『鉄腕アトム』『鉄人28号』と並ぶテレビアニメ黎明期の人気ロボットアニメ『エイトマン』の原作者として知られる漫画家・桑田二郎氏が7月2日逝去されたと発表された。
シャープかつクールな描線、トーンを使わず斜線の濃淡で明暗を表現する独特のタッチで表現された桑田氏のヒーロー・メカニック描写はシーンに大きな影響を与えた。『まぼろし探偵』『キングロボ』といったオリジナル作品に加え、『バットマン』『インベーダー』『月光仮面』『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』ほか数多くのコミカライズでも大いに健筆をふるったが、何といってもアニメファンに強い印象を残したのは『エイトマン』の原作コミック『8マン』ではないだろうか(原作発表当時は桑田次郎名義)。

凶悪犯によって殺された刑事・東八郎は、その人格・記憶を電子頭脳に移植したアンドロイドとして甦った。彼は私立探偵を営みながら、ひとたび事件が起こると警視庁捜査一課の七つある班のどこにも属さない八番目の男=8マンとして活躍することになる。
映画『ロボコップ』を先取りしたような、人と機械の間でアイデンティティーを揺さぶられるヘビーな主人公の設定。アトム・鉄人とは一線を画す、スマートで未来的なデザイン。音速を超えて駆けるスピード感満点のアクション。そして体内の原子炉を冷却するためにタバコ型強加剤を摂取する描写など、それまでのヒーローマンガとは一味違うハードでアダルトな世界観を打ち出したことで人気を博した『8マン』は、連載開始早々TBSでTVアニメ化の企画が立ち上がる(フジテレビの8チャンネルを意識して、タイトル表記は〝エイトマン〟とカタカナ表記に)。
エイケンで制作されたシリーズは63年11月~64年12月まで全56エピソードを放映、大きな話題を呼んだが、特に本作で画期的だったのはTBSに設置された『漫画ルーム』の存在。SFというジャンルがまだ浸透していないことを危惧した原作者の平井は脚本をメインで手掛けただけでなく、自身でSF作家の豊田有恒や半村良、推理作家の加納一朗、辻真先(桂真佐喜名義)といったメンバーを集めて、綿密な会議・執筆を行うことで本格的なSFアニメを目指したのだ。
このシステムは『エイトマン』の後番組『スーパージェッター』にも受け継がれ、こちらにはやはりデビュー間もない新人作家時代の筒井康隆、眉村卓が参加。つまり『エイトマン』は図らずも昭和の日本SFの才能を育む土壌としての役割も果たしたのである。

その後、89~90年にリム出版から単行本『完全版8マン』全7巻が刊行されたことをきっかけにして、『8マン』の新たなリバイバルの動きが起こった。名エピソード『決闘』を下敷きにした実写映画『8マン すべての寂しい夜のために』(92年)は東京ドーム2日間のイベント上映で話題を呼び、さらに原作ラストから7年後のドラマを描くOVA『エイトマンAFTER』(全3巻・93年)、末松正博氏によるリメイクコミックといったメディアミックスが展開されたが、決定的なブームを起こすことはできなかった。
しかし『8マン』の存在がすっかり過去のものになってしまったわけではない。昨年11月にはシャープ8K液晶テレビのCMキャラクターとしてリデザインされた8マンが登場、そして「チャンピオンRED」(秋田書店)では、20年9月号からシリーズ連載『8マンVSサイボーグ009』(脚本:七月鏡一、作画:早瀬マサト・石森プロ)がスタート。コミック界の2大ヒーローのクロスオーバー企画に熱い注目が集まっている。時代を超えて愛されるスーパーヒーローを生み出した桑田二郎の偉業は、今後も色褪せることはないだろう。