台TrendForceは7月30日、すでに下落が始まっているNANDフラッシュメモリのスポット価格に続き、大口契約価格についても2020年第3四半期より下落を開始しているとの調査結果を公表した。

製品タイプ別の価格下落幅を見ると、SSDについては需要がまだ高いため、価格下落率は比較的小さいものの、ウェハの価格下落が大きくなっているという。

  • NAND価格

    NANDの四半期ごとならびに年間の平均販売価格の前期比増減率(第3四半期から価格下落が続く見込み) (出所:TrendForce、2020/7/30)

こうした動きもありTrendForceでは、2020年第3四半期のNANDの需給バランスについて、新型コロナウイルスのパンデミックに際し、在庫を積み増した企業の多くが過剰在庫気味になっている。そのため、契約価格も必然的に下がっており、今後、その下落幅はさらに大きくなるだろうとしている。

すでに主要サプライヤも、過去数か月にわたってウェハ市場に向けた供給量を削減したものの、モジュールメーカーは、新型コロナウイルスの影響により、在庫を効果的にさばけず、4月から6月にかけてウェハ契約価格は横ばいから若干下がる傾向を示す結果となった。6月ならびに7月は小売店からの需要が回復したものの、PCおよびサーバSSDの需要は、クラウドおよびリモートアクセス向けが一巡したこともあり弱まっている。そのため主要サプライヤ各社は、潜在的な在庫急増を回避するため、ウェハ市場への供給量を増加させようという動きを見せており、契約価格は次の数か月でスポット価格並みとなる見通しだとTrendForceでは予測している。

YMTCの本格参戦で市場の混乱に拍車がかかる可能性

中国の新興3D NANDフラッシュメモリメーカーであるYMTCの2020年の生産能力の増加に向けた取り組みは2021年も続くと予想されている。

武漢にある同社ファブがフル稼働することとなる見通しに加え、武漢に建設を進めている2番目のファブも2021年には竣工する予定で、こうした生産能力の増強と併せて、2020年第3四半期に128層3D NANDの量産を開始し、2021年にはその生産比率を高めることを目指しているためだ。

すでにYMTCはモジュールメーカーに向けて64層 256GB TLC製品の供給を拡大しており、その平均見積もり価格はスポット市場並みであると言われている。こうした同社の動きに合わせて全体的に契約価格の下落も進んでいるという。

こうした背景を踏まえTrendForceでは、2020年第3四半期はAppleの次世代スマホの発売が期待されるなど、ピークシーズンとされるにもかかわらず、新型コロナパンデミックの影響による過剰在庫なども問題が収まらないとの見通しを示しており、結果としてNANDの平均販売価格は前四半期比で10%を超す下落幅となるのではないかと考えているようだ。さらに主要サプライヤ各社も、128層品の歩留まりの改善を進めており、NANDの供給過剰は2020年第4四半期にさらに激しくなり、結果として平均販売価格はより下落する可能性があるとしている。