前回の「ハッとしてR6、グッときてR5!」に続く、キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R5」「EOS R6」のレビュー後編。EOS R5/R6の撮影性能の高さを評価する落合カメラマンですが、同時に発表した2本の望遠レンズにも興味津々の様子。この価格とスペックなら描写性能やAF性能はそこそこ止まりだろう…と考えていたものの、よい意味で予想を裏切る性能を見せてくれたようです。

  • 7月30日に販売が始まったキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R5」

    7月30日に販売が始まったキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R5」。実売価格は税込み506,000円前後(+ポイント10%)。兄弟モデル「EOS R6」の実売価格は税込み335,500円前後(+ポイント10%)で、発売日は8月下旬の予定

さて、キヤノン「EOS R5」と「EOS R6」の後半戦であります。

両機は、ミラーレス機としてトップレベルに立てるAFの動体追従性能を有しているのだけど、ともにメカシャッター(電子先幕時最高約12コマ/秒)よりも電子シャッターによる連写(最高約20コマ/秒)の方が動体に対する合焦率は上であるように感じられている。メカシャッターでは、連写中ブラックアウトするコマ間で、動体をつかんでいるピントが少しずつ外れていくような挙動が感じられることがあり、場合によっては「動体予測のわずかなズレが蓄積するかのように、ふわ~っと大ボケになっていく」ことも。

で、そうなることが多かったのは、少なくとも今回試用した個体においてはR5よりもR6だった。前編で「EOS R5の方が動体追従とピントの精度に関し確実性が上だった」といっていたのはそのため。確かな差が感じられている。

ゆがみは条件によってはまだ気になる

というワケで、動体撮影時は電子シャッターだけで攻めたくなってしまい実際、今回は9割方電子シャッターで撮っていたのだけど、そうすると気になってくるのが、いわゆる「電子シャッターゆがみ」ってやつ。EOS R5とEOS R6の電子シャッターゆがみは、従来よりは格段に抑えられているとはいえ、他社の「電子シャッター命!」の20コマ/秒モデルとの比較ではまだ物足りなさを覚えるレベルだ。

もちろん、何をどんな風に撮るのかによってその判定は異なるので、使用者それぞれがそれぞれのフィールドで確認すべきポイントではあるのだけれど、私の場合は人工物が背景になっている状態でカメラを大きく振りながら撮るようなシチュエーションでは、電子シャッターの使用には若干の躊躇いを感じるであろう手応えであると判断することになっている。でも、前述の通り電子シャッターを選択することの恩恵も大。要は、ケースバイケースで電子とメカの両方を積極的に切り替えろっつうことなのだろうけれど、少なくとも両機の電子シャッターは、サイレント撮影するためだけのものではないのは確かだ。

ちなみに、EOS R5とEOS R6のどちらの電子シャッターゆがみが小さいのかといえば、これが意外なことにEOS R5であるように感じられている。そんなに大きな差があるわけではないのだけど、画素数の違いを考えるとR5のセンサー&処理系が発揮している“スピード”は圧倒的であるように思える。イメージセンサーのデバイスとしてのグレードは、なんだかんだいってもEOS R5の方がはるかに上なのだろう。

  • この距離感でスーッと飛んでいる鳥を撮るときのカメラの向きが変わる速度(レンズを振るスピード)はメチャクチャ速い。その一瞬の写りをもって電子シャッターゆがみが大きいと断じるのは少々、乱暴にも思うのだが、背景の扱いには相応の配慮が必要であるとの手応えではある。まぁ、それよりもビックリなのは、そういう被写体を難なく射止める「EOS R5+RF800mm F11 IS STM」と「EOS R6+RF600mm F11 IS STM」の実力なのだが。もちろん、組み合わせをシャッフルしてもその印象は不変(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO6400、1/4000秒、F11.0、+1.3補正)

  • 樹木などの自然物が背景になっている場合は、この手の電子シャッターゆがみはほとんど気にならない。その一方で、例えばヘリコプターのローターやスイングしているバットやゴルフクラブみたいなモノが画面内に存在する場合には盛大な(肉眼で見たイメージとはまったく異なる)ゆがみが生じたカタチで写ることも。「何をどう撮るのか」によって、EOS R5とEOS R6の電子シャッターに対する評価・判断はまったく異なりそうだ(EOS R6+RF600mm F11 IS STM使用、ISO2500、1/4000秒、F11.0、+1補正)

それが実勢価格の差に反映されていると考えるならば、動体追従時のAFの動きやシャッター耐久の差(EOS R5が50万回でEOS R6が30万回)などを含め、両者の間には価格差にすんなり納得できる違いがたしかにあるといえる。似て非なるのは、ボディ上面の操作系や使えるメモリーカードの種類、シンクロソケットの有無、搭載するWi-Fiの仕様、8K動画が撮れるかどうか……だけじゃないってことなのだ。

  • EOS R5で撮影(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO12800、1/2000秒、F11.0、-0.67補正)

  • EOS R6で撮影(EOS R6+RF800mm F11 IS STM使用、ISO12800、1/2000秒、F11.0、-1.67補正)

  • ISO12800比較。仕上がり明るさが少し違うことからEOS R5に若干、不利な印象になっているようにも感じるが、それを抜きにしても超高感度領域での比較では、特にノイズ面においてEOS R6の画質が明らかに優れることが分かる。まぁ、当然の結果だろう。しかし、コトの本質は、歴然たる解像度(画像サイズ)の違いをどう判断するかにあるとも思う。要するに、写真使用時の拡大率を考えると、EOS R5が劣るとは一概には言い切れないということだ