●早くファンの前で歌いたい! ライブ映えもある表題曲

――そのメリハリがよりダイナミックな印象を与えていると思いますし、ライブで生で聴きたくさせてくれます。

もちろんアニメのために歌った曲ではあるんですけど、「バン!」と一気にフルまで持っていってくれるような、ライブ映えする楽曲という面もあります。2番以降にはメロがガラッと変わるところもあったり、間奏の部分にはバンドの各ソロもあったりと、「これ絶対ライブでやったら気持ちいいかもー!」っていう要素がたくさん含まれているんですよ。

――特にDメロはコール盛りだくさんですから、そこはお客さんの声があって最終完成になる部分なんでしょうね。

そうですね。しかも最初に「Just follow me!」、つまり「ついてこい!」と言っているので、めちゃくちゃかっこよくてエモい部分になると思うんです。本当に、早くライブでやりたくてたまらない曲に仕上がりました!

――一方、スローなカップリング曲「明けない夜に」では、作詞もされています。まずこの曲、何をテーマに作られたのでしょうか?

この曲は自分にしか書けない、胸の奥底にあるものを素直に書いていこうというところから始まったんですけど……ステイホームの影響もあるんでしょうか。人との関わりがオンライン過多になっていくなかで、どんどん自分と人とを比べられるようになる。そうなると、やっぱり人のほうがよく見えるんですよね。

自分自身についてはダメな部分もいっぱい知っているけれど、人のことって、やっぱりきれいに見える。でもみんな自分にしかない、いいところがたくさんあるのに気にする必要があるのかなと。もしかしたら同じように悩んでいる人がいるんじゃないかなということで、このタイミングでそういったテーマの歌詞を書かせてもらいました。

――前半はサウンドも含めて内にこもっていて、終盤に一気に外へと開けていくような印象を強く受けました。

まさにそんなイメージで、序盤では自分の声を忘れてしまったような感じの主人公を思い描いていたんですよ。人と自分を比べているうちに、その人になろうとしてしまったり、自分にはないものばかりを見つめてしまったり……そんななか、歌詞には載っていない2サビ前の間奏の「ah ah」っていう叫びの部分で、ちょっと朝日が見えてくるんです。

――少し転機のようなものが来るというか。

はい。そこで内にこもっていた自分の殻が破れて、少しずつ自分だけが持っているものに気付きだして明日がやってくる……という風景を思い描きました。

●最終的に「明けない夜に」で目指したのは、優しい曲

――歌として印象深かったのは、サビ以外の部分に多く含まれる、セリフと歌の中間のような部分です。

そこはシンセメロでいただいたときから、ほとんど譜割りがないような状態だったんです。なので、「どこを喋って、どこにメロディをつけて歌う」みたいなものも、そこまで厳密には決まってなくて。それこそナスカさんに立ち会っていただいたレコーディングのときに、「ここ、喋るように歌うんだったらひと言足したほうがいいよね」とその場で歌詞の調整もしたりして、歌いながら徐々に完成させていった曲です。

――歌い始めはきっと”明けない夜”なんでしょうけど、最後にその先が見えるという希望にあふれた曲のように感じました。

第一印象としてはちょっと暗い曲にも聴こえるかもしれないんですけど、「優しい曲にしたいな」という気持ちが、最初からあったんですよ。

――優しい曲に。

はい。私の中にはすごく幻想的で薄暗い、紫色っぽい感じのイメージがあったんですけど、ナスカさんには「語るように歌いたい」ということと、淡々と事実を述べたうえで、でも本当は自分だけの声もあるんだよねという共感みたいなものを歌いたいと最初にお伝えしていました。なので、気持ちが優しく、和らいでくれたらすごく嬉しいです。

――今回のシングルは曲調こそ両極というか全く色が違いますけど、どちらにもすごく心に刺さるメッセージがありますね。

たぶんどちらも「まわりの環境に流されずに生きていく」というところが共通していると思うんです。そのうち「Theater of Life」は力強く背中をバーンと蹴ってくれる”朝”とか”昼”のイメージで、「明けない夜に」は夜に深く考え込んでしまうときに、優しく包み込んでくれるような存在。アプローチの仕方は違いますけど、1枚を通して「生きているとはどういうことなのか」ということにつながってくるシングルになったのかな、と思っています。

●鈴木このみ17thシングル「Theater of Life」

発売日:7月29日
01.「Theater of Life」
02.「明けない夜に」
他、「inst」含む全4曲収録
価格:1,200円(税抜)