米国シリコンバレーに本拠を置く国際半導体製造装置材料協会(SEMI)主催の半導体製造装置・材料の展示会「SEMICON West」は、本来であれば7月21~23日にかけて米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されることになっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、展示会や講演会を含むすべてのイベントをバーチャルでの実施に切り替え、7月20日(日本時間21日)より開幕した。

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    バーチャル開催となったSEMICON Westの展示会場入り口 (著者によるスクリーンショット、以下すべて)

SEMICON Westは、1971年にシリコンバレーで第1回を開催して以来、今年は50周年の節目の年を迎えるが、展示会をバーチャルで開催するのはその半世紀の歴史の中でも初めてのことである。

2020年2月に韓国ソウルで開催予定であったSEMICON Koreaは展示会・講演会とも全面的に中止、3月に中国上海で開催予定だったSEMICON Chinaは6月末に延期し、展示会はリアルで実施、講演会は一部リアルで実施、残りはオンラインで実施となった。

台湾台北で9月に開催される予定のSEMICON Taiwanは、SEMICON China同様、リアルな展示会を実施する予定だが、12月に東京で開催予定だったSEMICON Japanは展示会が実質中止、講演会は一部オンラインで実施する予定となっている。中国や台湾は、新型コロナウイルスはほとんど収束したとの判断で、国内向けに小規模なリアルな展示会を実施するわけだが、渡航制限で海外からの参加者はほとんどまったく期待できない。

SEMICON Westにバーチャル出展した企業は170社ほど

今回のSEMICON Westのバーチャル展示会に参加した企業・団体の総ブース数は約170。リアル開催のSEMICON Westには、かつては1000社をはるかに超える半導体製造装置・材料メーカーが参加していたものだが、プロセスの微細化に伴う技術の複雑さが増すごとに大手製造装置・材料メーカーのシェアがあがる一方、M&Aやファブライト・ファブレス化による半導体メーカーの減少により、見学者(バイヤー)が減ったことから、展示会の参加企業も減り、2019年の展示会参加企業は500社余りにまでに減っていた。

そうした現状を踏まえても、今回の参加企業は170ほどと少ない。これらの出展企業のバーチャルブースにアクセスすると会社案内ビデオや商品紹介が見られ、今後2か月間アクセスできるが、7月23日(米国西海岸時間)までの4日間は指定時間内(午前9時~午後3時、同)であれば展示の説明員とライブでチャットしたりバーチャルな名刺交換もできるようになっている。

SEMICON Westは、23日までに基調講演はじめ様々なオンラインライブイベント(有料)が4日間(午前中のみ)にわたり開催される。基調講演以外のマーケットフォーラムなど多くのイベントはオンデマンド配信で開催される形となっている。

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    SEMICON Westのバーチャル講演会会場

日系企業は20社余りが出展、東北大学も出展

SEMICON West 2020に出展している日系企業は東京エレクトロン、アドバンテスト、荏原製作所、SCREEN、ニコン、ディスコ、ローツェ、堀場製作所、アルバック、日本電子、オリンパス、TDK、サムコ、オリンパスなど20社余りで、多くは米国法人名で登録している。

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    東京エレクトロン(TEL)のバーチャル展示ブース

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    荏原製作所のバーチャル展示ブース

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    ローツェのバーチャル展示ブース

また、日本勢としては企業のほか、東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターも出展している。

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    東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(cies)のバーチャル展示ブース

SEMIがimecと半導体革新のための協業を強化

SEMICON Westの基調講演は開催2日目から始まるので、初日には講演会はなかった。その代わりにSEMIとベルギーの独立系半導体ナノテク研究機関imecによる「半導体革新のための協業をさらに推進するための両社の公開トップ会議」および「SEMIアメリカアワード表彰」の2つのイベントが行われた。

SEMIとimecは、ヘルスケアや自動車や半導体製造などに新たな可能性をもたらすIoT、人工知能(AI)、機械学習などの最先端テクノロジーを推進するために協業する覚書を2019年に取り交わしていたが、今後、そのパートナーシップをより強固なものにし、半導体の革新のためにバリューチェーン上のキープレーヤのネットワーキングを構築し、半導体産業の発展に寄与するとした。今後、各種セミナーなども共同で主催していくという。

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    半導体技術革新のためSEMIとimecがさらに提携強化へ

オンライン会議の中で、SEMIプレジデント兼CEOのAjit Manocha氏は、SEMIが世界中の英知を結集して、異種半導体チップの集積の今後のロードマップ「Heterogeneous Integration Roadmap(HIR)」の作成および改訂作業に注力していると述べた。一方、imecの社長兼CEOのLuc van den Hove氏は、「通信トラフィックは急増し、データセンタの消費電力はうなぎのぼりという状況下で、imecは、高速化、低消費電力化、低コスト化の要求にこたえるため、1nmを超えてムーアの法則を進展させる」と述べ、そのためにもSEMIと連携して世界中の装置材料業界のキープレーヤと協業する必要があることを強調した。

SEMIがEUVリソグラフィ技術の実用化でASMLを表彰

SEMIは、半導体製造の発展に最も貢献した人や企業を表彰する「SEMI Americas Award」の2020年版をASMLに授与すると発表した。

ASMLは、過去20年以上にわたりEUVリソグラフィ実用化に向けた研究に取り組み、ついに世界で唯一実用化に成功し、すでに半導体生産向け露光装置として57台を出荷していることが受賞理由となっている。これを受けて、ASMLのプレジデント兼CTOであるMartin van den Brink氏が同社を代表して授賞の喜びと今後のさらなる微細加工のための技術開発に向けた抱負を語った。

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  • SEMI Americas Award 2020はASMLが受賞