インターステラテクノロジズ(IST)は7月19日、観測ロケット「MOMO7号機」(名称:ねじのロケット)の打ち上げを実施する予定だったが、打ち上げ時刻の直前、メインエンジンの点火に異常が確認され、シーケンスを自動停止した。新たな打ち上げ日時は未定なものの、原因究明と対策を進め、月内の再チャレンジを目指すという。

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    ISTの稲川貴大・代表取締役社長

MOMO7号機は、当初前日(18日)の打ち上げ予定だったが、上空の風が規定値より強く、延期していた。この日も天候上の理由により、朝ウインドウ(氷結層の厚さ)と昼ウインドウ(上空風の強さ)の打ち上げが見送られ、夕方のウインドウでようやく打ち上げのチャンスを得ることができた。

カウントダウンは順調に進み、打ち上げ予定時刻の16時5分となったが、この0.2秒前、メインエンジンの点火器の温度上昇がしきい値を下回っていたという。このためシーケンスは自動停止、メインエンジンの着火は行わず、打ち上げを中断した。

ロケットエンジンは、燃焼室の内部で燃料と酸化剤を混合・燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスをノズルから噴射することで、推進力を得ている。この燃料と酸化剤を燃焼させるときの"火種"となるのが点火器である。MOMOでは、市販のロウソクを活用した点火器を2本、ここに使用していた。

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    MOMOの点火器。ロウにガス酸素を流し、点火する仕組みになっていた (C)IST

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    実際の点火器の外観。インジェクタの両側に2本設置されている (C)IST

エンジンを正常に始動させるためには、燃料を流し込む前に、点火器からしっかり炎が出ている必要がある。そのため、点火器の下流側で温度を計測しており、打ち上げ0.2秒前にチェック、しきい値以下だった場合は自動停止するようになっていた。点火器の火力が不十分だとエンジンが異常燃焼を起こす恐れがあり、これはそれを防ぐための仕組みだ。

今回は、2本ある点火器のうち、1本の方だけがしきい値を下回っていた。この点火器の最高温度はほぼ同じところまで上がったものの、通常よりも上昇速度が遅かったため、自動判断の時点で温度が下限以下だったそうだ。

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    点火器の温度上昇のイメージ。打ち上げ直前に温度をチェックする (C)IST

同日19時より開催された記者会見の時点で明らかになっているのはここまで。詳細については、点火器を取り出して調べる必要があり、再打ち上げの日程はその結果次第になるが、同社の稲川貴大・代表取締役社長は「できれば7月中に実施したい」と、早期再開への期待を述べた。

今回の事象の原因としては、実際に点火器の温度上昇が遅かった可能性のほか、センサー等の計測側に問題があった可能性も考えられる。しかしいずれにしても、今のところ機体にはそれ以外の問題は見つかっておらず、対策は点火器の交換など、軽微なものになる可能性が高いだろう。

稲川社長によれば、過去の地上燃焼試験などで点火器のトラブル自体はいくつか経験しているものの、今回のように「温度上昇が遅いという現象は初めてだった」という。初の現象というのがやや気がかりではあるが、今後の続報を待ちたいところだ。

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    射点に立つMOMO7号機。機体の全高は約10m、直径は約50cmだ (C)IST

なお今回の打ち上げは、前回と同じように、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ観点から、無観客で実施されている。政府の「Go To Travelキャンペーン」が7月22日から始まる予定だが、現地・北海道大樹町では引き続き見学者の受け入れは行わないため、打ち上げを見たくても現地には行かず、ネット中継などで応援するようにしよう。