猫の家政婦・猫村さんが活躍し、独特のタッチで人気のほしよりこ『きょうの猫村さん』(マガジンハウス刊)がまさかの実写化、しかも主演は松重豊……ということで、大きな話題となったミニドラマ『きょうの猫村さん』(テレビ東京ほか 毎週水曜24:52~24:58 全24回)。自分を拾ってくれた飼い主・ぼっちゃんとの再会を果たすため、家政婦として働いてお金を貯めることを決意し、村田家政婦紹介所の門をたたく猫村ねこを演じる松重は、性別と種族の壁を超え主演を務めている。

深夜の2分半のミニドラマに、濱田岳、石田ひかり、市川実日子、松尾スズキ、小雪、池田エライザ、水間ロン、染谷将太、安藤サクラ、荒川良々……と豪華キャストが集合したことでも注目を受けていた同作。今回は、17日に『きょうの猫村さんまるごと SP』(17日24:12〜)として一挙放送が行われることから、同作について主演の松重にインタビューした。

  • ミニドラマ『きょうの猫村さん』主演の松重豊 (写真:マイナビニュース)

    松重豊 撮影:泉山美代子

■「本当にやるんだ」と驚き

――『きょうの猫村さん』まさかの実写化でしたが、企画を聞いたときの率直な感想を教えてください。

漫画を実写化したいという話は本当に多いと思うんですけど、それでも「この作品を実写化するのはハードルが高いな」とは思いました。観る側としても、安易に実写にして「ほらみろ、言わんこっちゃない」ということになる危険は孕んでいるなと思いましたし、難しい役なんだろうな、という印象です。ただ同時に、難しい役であればあるほど「面白いぞ」と思える職業ですから、わくわくしました。

実際に動き出すまでは数年かかったので、忘れた頃に「本当にやるんだ」と驚きましたし、そうして衣装なども着けていくうちに「ああ、本気だな、この人たちは」と思って(笑)。短い期間ではありましたけど、ちゃんと”実写化”というものができたと思います。あとは観ていただいた方に委ねるしかないですね。

――実際に多くの視聴者の好評の声が届いて、今回一挙放送ということで。衣装合わせの時はどのような雰囲気だったんですか?

リアルに猫村さんを作るというよりも、どちらかというとゆるキャラに近いような感じで、どこかチープさが味わいになるだろうという理解はできたんですけど、細かい部分に修正は入れていきました。「顔のラインがちょっと浮いてる」「尻尾にリアリティがない」とか、本当に3回くらい修正して、最終的にあの形に辿りつきました。

――ちょっと気になったのは、ぼっちゃんのエプロンをつけてない時の猫村さんは全裸なのか? と…(笑)

実写になると、おじさんの体があるだけですからね(笑)。白という膨張色と相まって、全体的になんだか大きい印象はありますよね。エプロンでも締めればきゅっとイメージがちっちゃくなるんですけど、白の部分が長い(笑)。でも、あの世界なので、受け入れてもらえればと思います。

――今回、キャストの皆さんの豪華さも話題となっていますね。

こういう主人公が猫の家政婦というドラマで、「猫です!」と激しく主張してしまったら、もうおしまいなんですよ(笑)。淡々と猫が家政婦に来て、「お前ん家の家政婦、猫なの?」という、日常のリアリティにかかってると思うんですね。それをわかってらっしゃる演者ばかりでした。細かいディテールを積み重ねて、日常のリアリティを作り上げていけた。

しかも皆さん、うまいんですよ。朝ドラのヒロインや大河ドラマの準主役を務めて、技術的にものすごいものを持った方たちが、「猫の家政婦が働いている」というリアリティを全員でデッサンする。僕は、一緒に演じながら鳥肌が立ちました。皆さん志高く、丁寧にデッサンするので、2分半の映像でも引き込まれてしまうのだと思います。

――誰かが口にせずとも、その空気を共有できる状態だったんですか?

誰かから発信するものじゃないですし、伝染していくものですから。空気を作っていくのは演者なので、皆で日常的なリアリティを持ち込んで実写にするということが、ほしさんの原作に対しての仁義だったのだと思います。