ポルシェ・パラダイス│豊かな緑に恵まれた素晴らしい環境でコンクール

経験豊富なイベント・プロモーターなら誰でも、適切な場所選びがカーショーの成否を左右することに異論はないだろう。美的な外観はもちろん、広さも大切なポイントだ。狭すぎる会場は好ましくないが、広すぎても問題だろう。せっかくの出展車を見つけそこなうようでは、イベントの雰囲気が台無しになってしまう。
 
その点、356クラブ南カリフォルニアが年に一度のコンクール会場に選んでいたダナポイントの公園内セクションは、広々とした芝生に恵まれ、バランスの取れた好立地であった。数百台におよぶヴィンテージのポルシェが熱心なオーナーたちに運転されて集まり、会場からは太平洋の景観経を楽しむこともできた。
 
しかし、2016年に開催された第30回コンクールの後に、クラブのメンバー達は代替地の選定を余儀なくされた。従来の会場は使用できなくなる旨の通知を受けたからだ。後継地に選ばれたのはハンティントン・ビーチの素晴らしい公園で、丘やつづら折りの道にも恵まれていた。
 
ところが不運なことに、2017年イベントの後にまたしても同じシナリオが起こってしまった。そこで356クラブ南カリフォルニアが2018年イベントの理想的な会場として選んだのが、サン・クレメンテのベラ・コリーナ・タウン・アンド・ゴルフ・クラブだ。この会場はオレンジ・カウンティの最南端の街にある臨海エリアに位置し、ロサンゼルスからもサンディエゴからも同様に60マイル(約100km)ほどの距離にある。サーファーの間では波で名高い場所だ。また、1969年にリチャード・ニクソン元大統領が、ウォーターゲート事件のほんの数カ月前に地所を購入した街としても知られている。



「356だけを対象とする、世界最大規模の完全審査員制コンクール」と告知された356コンクールは、良心的な参加費に加えて、来場者は入場無料。数多くのエンスージアストの心をつかむのは確実であった。フェスティバルにはコンクール出展車の他にも数々のヴィンテージ・ポルシェが招かれ、芝生上に並んだクルマは約400台にも及んだ。その大半が356だ。
 
ショー・コンテストでは、出展者が希望する審査レベルごとに「フル・コンクール」「ストリート・コンクール」「ウォッシュ・アンド・シャイン」の3つの主要クラスが設けられた。会場をモデルや製造年ごとに整然とまとめあげた356クラブの尽力は、惜しみない賛辞に値するだろう。写真撮影にも素晴らしい機会となった。


 
もちろん、サン・クレメンテには数々の「古参」も集結し、数台のプレAや、356の米国市場向け特別仕様である希少な1955 年コンチネンタルまでもが登場した。さらに、本誌でも特集記事でお届けしたように、ハーブ・ワイサードが大変に見事な所有の1952 年グレックラー・ポルシェ・スペシャルを走らせた。会場は他にもさまざまなポルシェ愛好家と旧交を深める絶好の機会となり、おかげでUK版『Classic PORSCHE』2011年5号の表紙を飾った1958年スピードスターと、そのオーナーであるパスカル・ジアイにも再会することができた。本誌掲載以降にタブが少々変更され、ハブキャップやサイドモールなどが取り付けられていたが、どれも素晴らしい。


 
創意あふれる356アウトローも来場者を愉しませた。ときには変わったエンジンを搭載するなど、千差万別に独自の方法でカスタマイズされた一群だ。エンジニアリングの粋を集めた名作として、911のエンジンをベースにした2.5リッター 2.6リッターの4気筒も数台登場した。アウトローといえば、911や912のエリアにも相当な台数が集まっていた。ふと脳裏をよぎるのは、カート・ジマーマンの強力な"300bhp " 6気筒搭載の912の印象である。


 
どうやら356クラブ南カリフォルニアは、ついにダナポイントの公園に代わる後継地を見つけ出したようだ。サン・クレメンテの新会場も、豊かな緑に恵まれた素晴らしい環境だ。2020年度は開催延期となっているが、2021年度のイベントの詳細については、ウェブサイト「356club.org 」をチェックしていただきたい。