人気拡大中のプロ麻雀リーグ・Mリーグ MVP、女流プロ 魚谷侑未が語る覚悟「命を懸けて麻雀を打っています」

新型コロナウイルスの影響で中断期間を挟みながらも、先の6月23日に2019シーズンすべてのプログラムが終了したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。2年目の今季は、対局を放送する「Abema TV」の視聴数が1日当たりで初年度より平均10万増加するなど、大成功を収めた。

「注目度は、相当上がっていると思います。特にMリーグを見て初めて麻雀をやる人だったり、一時期やっていなかった人がまた麻雀をやり始めたっていう声がすごく多くて。観戦して楽しむだけの方も含めて、そういう〝ライト層〟が増えた実感は、Mリーガーはみんな持っているんじゃないでしょうか」

そう語るのは今年、レギュラーシーズンでの成績1位であるMVPと、全90試合中1試合で記録した最高スコアの「タイトル二冠」を達成し、ひときわ輝きを放った女性Mリーガー・魚谷侑未だ。

その言葉通り、これまでは男性、特に中高年以上がメインだった〝麻雀好き〟の裾野も、この1、2年で急速に広がった。今や試合のパブリックビューイングには大勢の女性客が駆け付け、小学生やそれにも満たない子供たちが未来のMリーガーを目指してキッズ向け麻雀教室に通っている。

「これまでは麻雀に対するイメージって、世間的には決して良くはなかったと思うんです。『プロになる』なんて言ったらむしろ親御さんが必死に止めるような。少し前までは、業界全体でなんとかイメージアップしようとしていました。それを考えたら、お子さんが教室に通って麻雀を楽しむ今の状況は、奇跡みたいな出来事。

親子連れで応援してくれるファンの方もいたりして、ありがたいです。女性のファンの方も、本当にいなかったんですよ。それが今では、男性プロが雀荘でイベントを開いたら女性客で満員になったり。もちろん私自身の仕事でも、女性と触れ合う機会は圧倒的に増えてきました。Mリーグの影響は凄いと思います」



人気の拡大には、2シーズン目からレギュレーションが変更され、各チーム最低1人の女流プロ所属が義務付けられたことも一役買ったと言われる。2年目から新たにMリーグ入りした女流プロは5人。リーグ全体での男女比もグッと縮まり、彼女たちを純粋にアイドル的な視点から応援したいというファンも増えただろう。加えて、魚谷はこうも言う。

「男性Mリーガーと女性Mリーガーの対戦が増えたことで、麻雀というゲームが、性別や年齢に関係なく同じ舞台で戦えることを見せることができた、というのが大きいんじゃないかな、と思うんです。麻雀をやる方にとっても、知らない方にとっても、『女性がこんなに活躍する世界なんだ』ということが、見てもらえるきっかけになればいいな、と常々思っていたので」

スポーツの世界では一流といわれるレベルに近づくに連れ、男女にフィジカルな面での性差が出てしまうため、全くの同条件で競い合うことは難しい。しかし、麻雀という頭脳ゲームにおいては、男女が年齢すら関係なく対等に勝負できる。これは未経験者の興味のハードルを一気に下げ、特に女性にとっては同じ女性のプロが活躍する姿は共感を呼ぶはずで、ファン増加の一因であることは間違いないだろう。




「今までは、打ち込む時間や歴の長さの違いもあって男女の成績に差が出ることは普通でした。でも最近は女流プロの意識も『見た目だけじゃなくて勝たなきゃ、強くなきゃだめだ』と変わってきた気がするんです。それもあって私は、1年目が始まるときに『麻雀に性差はないということを証明します』と宣言したんですが、成績的にはボロ負けしてしまって(苦笑・1年目の個人成績は21人中18位)。

自分がやろうとした、鳴き仕掛けを多用する(スピード重視の)麻雀がMリーグの舞台ではしっくりこなくて。シーズン中にも修正しようとしたんですがうまくいきませんでした。当時はチームの足を引っ張っている状況が重くて、試合に負けた日はなかなか家に帰れず近くの公園で2時間考え込んだりすることもあったので…。

たまたまかもしれないですけど、こうして2年目にようやく結果を残すことができてよかったです。『今年はもし負けても、自分がやろうと思った麻雀を貫こう』『チームメイトを信頼して結果を受け入れよう』と決めて、それで心が軽くなって、成績につながったのかな、と思っています」

2019シーズン、魚谷が所属する「セガサミーフェニックス」は年間優勝を決める「ファイナルステージ」に駒を進めたが、あと一歩及ばず準優勝に終わる。

魚谷は最終戦の最終局、優勝のための条件を整えて息も絶え絶えになりながら一牌、また一牌と祈るように自摸(ツモ)を繰り返し、最後の最後まで闘い続けた。そこには麻雀を「たかがゲーム」と断じることができない真剣さと興奮、切迫感が漂い、見る者の胸を熱くさせた。



「大きなタイトルがかかった決勝戦で、いちばん勝敗に関わる場面で息が苦しくなったりすることは今までにも経験があったので、特にMリーグだからというわけではないんです。私ができることは、精いっぱい麻雀を打つことで感情を伝えるというか、『これだけ麻雀に命を懸けて一打一打打っているんだよ!』と、画面を通して知ってもらうことだと思うんです。

最終日のあの場面は、命を懸けすぎてちょっと引いた人もいるかもしれないんですけど(笑)、でもそんな私を見て『感動した』って言ってくださる方もいるし、『プロを目指そう』とか『活躍すればチャンスがたくさんもらえるんだ』って思っていただけたらうれしいですね」

来季、魚谷は個人としては追われ、目標にされる立場に置かれ、チームとしてはわずかの差で手から零れ落ちた〝優勝〟を全力で狙うことことになる。

「とにかく優勝したいです。チームのみんなで戦っていきたいと思っていて、だから現時点では『私が絶対に勝たなくても』という軽い気持ちではいるんですが……。ああ、でもやっぱり、もし私がMVPを連覇したりしたら、Mリーグや麻雀に対する世間的な注目も大きくなりますよね。目指した方がいいですね、うん。麻雀界のイメージアップだったり、『女性がこんなに活躍できるよ』っていうアピールのためにも、チーム優勝と個人MVP連覇、目指します!」

取材当日、魚谷はチームメイトとともにセガサミーフェニックスの「オンラインファンミーティング」に参加。その模様はツイッターでライブ配信され、実に19000人を超えるファンが視聴したという。選手やチーム、そしてMリーグという極上の〝エンタテインメント〟を巡り、熱狂はこれからも高まっていくだろう。