【ランドセルからスナックまで】巷で広がる「オンラインで接客」するお店とは?  ウィズ・コロナ時代の新展開

新型コロナウイルスの感染拡大による各種店舗の休業が相次ぎ、長期にわたる外出自粛を余儀なくされました。「新しい生活様式」のなかで日常生活を取り戻すべく、オンラインを活用したさまざまな取り組みが注目されています。大手の百貨店から、地元に根差した飲食店まで各地のオンライン接客サービスを紹介します。

実店舗のような接客を受けながら、自宅でショッピングを

自宅にいながらオンラインで販売員の接客を受けることができる「オンライン接客サービス」を取り入れる店舗が増えています。三越伊勢丹では「おうち de 伊勢丹」をテーマに、オンラインチャット相談とzoomによるオンライン接客で百貨店の販売員に相談しながら買い物ができるように。トライアルとして、ランドセルのオンライン接客サービスをスタートしました。

このような取り組みが、さまざまな規模やジャンルの店舗で広がりを見せています。

ファッションブランド:世田谷区池尻「ALL YOURS」

池尻大橋に路面店を持つこちらのお店は、「個別Zoom接客」を実施。スタッフに相談しながら、製品のサイズなど、さまざまな情報について確認することができます。製品を購入後、気に入らなかった場合は14日以内に返送すれば、交換や返品ができるサービスも実施。返送料は同店が負担してくれるシステムのため、気軽に利用できそうです。

ジュエリーショップ:富山県・石川県・福井県「TAKEUCHI・BRIDAL」

北陸各県でブライダルジュエリーを展開する各店舗で、完全予約制のオンライン接客サービスを実施。ジュエリーアドバイザーに、宝石のサイズやビジュアル、リングの装着感やデザインの細部などを確認しながら、質問や相談をすることができます。「結婚指輪は2人で選びたい」という人が多いと思いますが、2人が別々の場所にいても、一緒に接客を受けることができます。気になる商品が見つかったら、自宅で試着できるサービスもあり、実物を確認したうえで購入が可能です。

なじみの飲食店で過ごすように、スタッフや客同士の対話を楽しむ

オンライン接客の対象は販売店にとどまらず、飲食店でも取り入れる店が増えています。利用者は自宅で用意した食事やドリンクを味わいながら、店を訪れたような気持ちでスタッフや客同士の対話を楽しむことができます。

オンライン居酒屋:宮城県仙台市「肴処やおよろず」

居酒屋料理や厳選したお酒を電話やメールで注文し、自宅までデリバリーする「おうちde居酒屋」を実施。お酒は1合から販売しているとのこと。デリバリーを注文した希望者にはURLやパスワードが届き、オンライン居酒屋に入店が可能。お店の料理やお酒を、店内で味わっているような気分を楽しめます。

オンラインバー:山口県宇部市「bar twenty one」

創業30年を迎える同店が始めたオンラインバーの入店は、チケット予約制。事前にホームページで90分1,000円のチケットを購入してzoomで「入店」します。バーの大きな楽しみのひとつである「マスターとのコミュニケーション」を楽しめます。チケットを購入し、「マスターに1杯」サービスすることも可能です。 

自宅でスナック体験! 逗子市「スナック松」に聞くオンライン飲みの実態

新型コロナウイルスによる感染症対策として、密閉・密集・密接の回避が叫ばれ、「3密」になりやすい地元のスナックは厳しい状況が続いています。そんな中、オンラインに活路を見出し、スナックのママと自宅で「オンライン飲み」ができるシステムに注目が集まっています。逗子市の「スナック松」さやかママにお話をうかがいました。

―オンラインスナックを利用するのはどのような人が多いですか?

オンラインスナックを始めた当初は、常連さんが救済目的で利用してくれることもありました。現在はメディアで紹介された影響もあり、海外在住の日本人が、日本語や日本のスナックが恋しくて利用するケースが多いですね。

スナックの客層は、ママの年齢に合わせて変わってきます。当店は通常、40代を中心に20代半ば~50代半ばの利用者が多いのですが、オンラインスナックに関しては20代後半~30代の女性客が中心です。かつて逗子や葉山に住んでいた人、逗子で仕事をしていた人など、当店がある逗子にゆかりがあるお客さまも多いですね。先日は、逗子に実家があるという30代の男女が利用し、6月に通常営業を再開した際は小さなブーケを持って実店舗に来てくれて、とても嬉しかったです。(さやかママ)

実店舗とオンラインスナックでは、接客の内容も変わってきそうですね

当店のオンライン接客は、何人かで会話をする形式と、1対1の形式から選ぶことができます。何人かで会話をする場合、実店舗ではその場にいるお客さまを巻き込んでお喋りできますが、オンラインスナックですと1人ずつしか発言できません。なるべくみんなが盛り上がれる会話をするように心がけてはいるものの、まんべんなくしゃべり、楽しんでもらうのは大変です。その場の空気感は、実店舗でしか得られないものだと思います。

一方で「スナックのママとじっくり会話をしたい」と思って利用するのなら、1対1のほうがじっくりと会話ができます。私は元バックパッカーで、結婚・離婚・シングルマザーを経験。国際結婚もしたし、経営者の経験もあり、話題には事欠きません。そして、スナックのママは常に社会に目を向けているので会話は尽きません。(さやかママ)

―どのくらいの予算で利用できるのですか?

60分3,300円で、以降30分から延長が可能です。当店に関しては、こちらから延長を促すことはありませんので、1時間ギリギリまで利用して終了するお客さまもいれば、ママに1杯サービスしてくれるお客さまも、延長して2時間ほど利用するお客さまもいらっしゃいます。(さやかママ)

―オンラインスナックの場合、実際にお酒やフードを提供することはできませんが、利用している皆さんはどのように参加していますか?

おつまみなどフード類を食べるお客さまはほとんどおらず、基本的にはお酒好きな人が多いですね。ワインやハイボールなど好きなものをそれぞれが用意して飲んでいます。途中で退席してトイレに行ったり、お酒を作ったり、自由な雰囲気ですね。普段は家で晩酌をしている人が、テレビを付ける代わりにオンラインスナックを利用している感覚ではないでしょうか。

ただし、海外から参加のお客さまは日本と時差があるため、事情が異なります。先日、マルタ島から参加した日本人のお客さまは、仕事の合間のお昼休みに参加。こちらは夜ですが、現地は昼間ですので、コーヒーを片手におしゃべりしました。(さやかママ)

―経営者の目線として、オンラインスナックの今後についてどのように感じていますか?

スナックというのは不思議な空間で、おしゃべりする時間を売るのがママとしての仕事です。会社は流行りやニーズに合わなければ淘汰されるため、変化し続けなければ生き残れませんが、スナックはコミュニケーションを求める人がいる限り、一生なくならないと思ってきました。

今回、コロナ禍という見えない敵を前に初めて、スナックがなくなってしまう可能性を考え、オンラインスナックを始めました。当初はスナック存続のための手段でしたが、現在は新規顧客獲得向けの営業ツールとして可能性を感じています。図らずも、オンラインスナックを始め、いくつかのメディアに紹介されたことで日本のスナック文化が世界に発信され、「夜の店」という認識しかなかったスナックの良さを知ってもらえるきっかけにもなりました。(さやかママ)

―オンラインスナックをどんな人に利用してもらいたいですか?

あくまで当店の場合ですが、何か悩みを抱えているお客さまが「ママに相談したいことがある」「話を聞いてほしい」とオンラインスナックを利用するケースが多々ありました。「どうしたら彼氏ができる?」「どうしたら友だちができる?」「会社の人間関係に不満がある」など、悩みを打ち明けられ、「ママ100当番」の様相です。

その一方で「家でママと気軽な話をしたい」という人や、海外在住で「久しぶりに日本語を話したい」という人も少なくありません。コロナ騒動による外出自粛が解除されたとはいえ、今まで通りのお出かけは控えている人が多いと思います。

オンラインスナックでお喋りをすることで、自宅にいながら前向きになれたり、気持ちが落ち着いたりするお手伝いがウィズ・コロナ時代における新たなスナック文化の始まりですね。(さやかママ)

移住にも活用? 地域のお店ならではの「オンライン」の可能性

新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで、これまでのライフスタイルは大きく変わりつつあります。

販売店や飲食店が始めた「オンライン接客」という新たな取り組みによって、わざわざ店舗に出向かなくても、従来のオンラインショッピングとは異なる購買体験や双方向のコミュニケーションが可能になってきています。

それだけでなく、「オンライン接客」はニューノーマル(新生活様式)の家探しにも利用できるかもしれません。

スナック松のさやかママはインタビューの中でオンライン接客は単なる接客ではなくて「ママ100当番」の様相であるとおっしゃっていました。

例えば、逗子に移住したいと思い始めた人が「スナック松」のような場で、オンラインで気軽に相談できれば、現地に出向かずとも地元住民しか知らない情報を聞けるでしょう。

地域に根差したお店が「地域アンバサダー」としての役割を担っていくようになれば、私たちはもっと「住みやすい街探し」をスムーズに実現できるのかもしれませんね。

取材先:オンライスナック横丁 スナック 松(神奈川県逗子市)

執筆者:斎藤 若菜