とにかく自宅でタバコを吸う機会が増えた―― と実感している愛煙家は多いだろう。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅ワークが広がり、飲食店を利用する機会も減った。今は「新しい生活様式」の実践が呼びかけられており、しばらくコロナ前の状態には戻りそうもない。しかも4月には改正健康増進法が施行され、屋内での喫煙は原則的に禁止となった。コロナ禍と法改正が重なったことで、「自宅くらいしか喫煙場所がない」という人は少なくないはずだ。

  • 喫煙者の約6割「自宅での喫煙機会が増えた」 - 新しい生活様式での喫煙を考える

しかし、自宅での喫煙は、文字どおり家族やパートナーに煙たがられてしまうことが多い。では、喫煙者はどこへ行けばいいのか。その答えのヒントとなりそうなアンケート調査を日本たばこ産業(JT)が公表した。その中身を紐解こう。

60%以上の喫煙者が「自宅での喫煙機会が増えた」

JTがオンラインで約2万人に実施した「喫煙状況に関するアンケート」によると、86.4%の人が「新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が増えた」と回答しているという。そして喫煙者のうち、94.7%が「自宅でたばこを吸う」ことも発覚。さらにそのうち、60.9%の喫煙者が「自宅での喫煙機会が増えた」と答えた。

案の定というべきか、外での喫煙機会が減ったことで、喫煙者は自宅での喫煙量が増加傾向にあることが明らかになった。

さらに数字を細かく見てみると、紙巻きタバコと加熱式タバコで大きな差があることもわかる。「自宅でたばこを吸う」と答えた喫煙者のうち、「紙巻きたばこの消費本数が増えた」と答えたのは30.2%であるのに対し、「加熱式たばこの消費本数が増えた」と回答したのは50.1%に上っている。

加熱式タバコは大目に見てもらいやすい

なぜこのように明確な差が生じるのか。それはまた別の調査結果を見ると理解しやすいかもしれない。

マーケティング支援事業・ソルパネの企画・運営・販売を行なうパイルアップ株式会社が実施したアンケート調査「自宅での過ごし方に関する意識調査」によると、男性の自宅でのストレス発散方法第1位は、「喫煙する」(女性は「たくさん寝る」)となった。

自宅での喫煙場所は「ベランダ・庭先(屋外)」が最多だったが、「場所を気にせず喫煙」と答えたケースについては、 紙巻きたばこユーザーが11.9%だったのに比べ、加熱式たばこユーザーは21.0%と、自宅内で自由に喫煙しやすい傾向にあることがわかった。

また、喫煙者のパートナーを持つ非喫煙者に「部屋での喫煙で気になること」を聞いた結果、「におい」が最も多い69.9%。次いで「健康への影響」が55.2%となった。加熱式たばこの特性でもあるにおいの少なさは、自宅で喫煙する場合にも大きなアドバンテージとなるのである。

ちなみに、非喫煙者がパートナーの自宅喫煙を許している理由は、「喫煙する時間は必要だと思うから」が第1位で30.2%。意外にもおおらかな非喫煙者が多いことに驚く。パートナーが加熱式たばこユーザーの場合は、「においが出ない」、「健康への懸念が少ない」、「煙が気にならない」、「ヤニ汚れがつかない」と答える非喫煙者も少なくない。紙巻きたばこユーザーよりも、加熱式たばこユーザーのほうが自宅喫煙に対する理解が得られていることは間違いないようだ。

【調査概要】
調査の方法:WEBアンケート方式
調査の対象:自宅で過ごす時間が増えた全国の20~59歳のパートナーと暮らす人
有効回答数:1600名
調査実施日:2020年4月27日(月)~2020年4月28日(火)

新しい喫煙習慣への切り替えも「新しい生活様式」の一環か

緊急事態宣言が明けて以降、「新しい生活様式」という言葉が標語のように叫ばれている。要するに、政府や自治体は外出自粛を強く求めないが、新型コロナウイルス感染症がこれ以上拡大しないよう各々意識的に生活をしていこう、という呼びかけである。

例えば、すでに常識となりつつあるが、ソーシャルディスタンスの習慣化、マスクの着用、手洗いの徹底などはもはや常識である。緊急事態宣言が解除されてからもテレワークや時差通勤、オンライン会議が推奨されているし、十分な換気も繰り返し呼びかけられている。このような"三密"の回避を目的とした「新しい生活様式」は、社会的に共有しなければならないルールとして定着したと言っていい。

同時に、愛煙家に関しては新しい喫煙習慣への切り替えも「新しい生活様式」のひとつなのかもしれない。

コロナ禍が完全に収束するまで、自宅での喫煙機会が劇的に減ることはないだろう。であれば、非喫煙者と一緒に暮らしている場合は特に、身の回りの人に配慮した喫煙習慣を心がける必要がある。それはマナーの範囲に留まらない。

というのも、冒頭で触れた「改正健康増進」はそもそも、新しい喫煙習慣への切り替えを要請する法律である。この法改正によって、屋内での喫煙は原則的に禁止となった。もちろん自宅は例外だとしても、法改正の趣旨は「望まない受動喫煙をなくす」ことだ。そのための取り組みを、マナーからルールにまでレベルを引き上げようという趣旨の法改正である。

パートナーの自宅喫煙を「喫煙する時間は必要だと思うから」と大目に見ている非喫煙者が多いのは意外だが、改正健康増進が施行された今、いつまでもそこに胡座をかいていていいわけではない。喫煙者に対して禁煙を求めるのはなかなか酷である。そう思い、仕方なく自宅喫煙を受け入れている非喫煙者も多いに違いない。「新しい生活様式」が求められている今、より一層の配慮が必要なのだ。

例えば紙巻きたばこユーザーは、自宅内だけでも加熱式たばこへ切り替えるのも手だろう。最近ではニコチンやタールを含まない低温加熱式たばこも出てきている。新しい喫煙習慣に向け、まずは改めて、パートナーたちに意見を求めてみてはどうか。