【まず窓のチェックを】光熱費を抑えるには住宅の断熱性能アップが必須

新型コロナウイルス感染症防止のために、テレワークを導入する会社が増え、家で仕事をする機会の増えた人も多いでしょう。在宅勤務は生活時間の有効活用などのメリットが多い一方で、「光熱費の支払いが増えそう」と心配する声も多く聞かれます。夏本番を迎え、エアコンなしで在宅勤務するのは不可能です。光熱費への不安解消のために、家のつくりを見直しましょう。

不動産コンサルティング会社、さくら事務所のホームインスペクター(住宅診断士)田村啓氏は省エネ住宅について次のように説明します。「省エネ住宅は、一般的には高断熱高気密の住宅のことです。木造の戸建てより鉄筋のマンションのほうが省エネ住宅になりやすく、マンションでは角部屋ではなく、隣に住人がいる内側の部屋のほうが、快適な環境になりやすい(図1参照)。

家庭のエネルギー消費量は、エアコンが14~20%、給湯器が約14%、照明が約11%といわれます。一般電球からLED照明に替えるだけで1割違ってきますし、給湯器は高効率のものに替えましょう。両方とも替えればすぐにランニングコスト(毎月の光熱費)が下がります」

田村氏のいう高断熱高気密の「断熱」とは、壁・床・屋根・窓などを通して、住宅内外の熱の移動を少なくすることです。住宅に隙間があると、その隙間を通じて空気が出入りするので、熱が室内外で移動します。この空気の移動による熱の移動を少なくするために隙間を減らすのが気密対策です。

冬は室内の温かい空気が外に逃げないこと、夏は外の熱が室内に侵入しないこと(日射遮熱)が高断熱高気密ということになります。
機器の使い方や省エネ性能の高い機器選択と並んで、住宅そのものを省エネ住宅にすることで、大きな効果を得ることができます。(図2参照)

そして、省エネ住宅は、光熱費を抑えるだけではありません。住む人の健康にも良いのです。

「高気密は、ウイルスのことを考えると健康に悪そうだと誤解されがちですが、インフルエンザに関していえば、室内を暖かくして湿度が保たれているほうが、ウイルスの生存率は低いという研究結果があります」(田村氏)

熱は窓から逃げる。窓は樹脂サッシに

せっかくエアコンで冷やしたり温めたりした室内の空気が外に逃げていくのを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。田村氏は「窓がもっとも熱の出入りが多い」と言います。

「日本の窓は断熱性能のレベルが低く遅れています。プラスチック製の樹脂サッシが世界的には標準ですが、日本ではアルミサッシがメイン。アルミは熱の出入りがしやすい。新築に付いているのは未だにアルミが多いですね。省エネ住宅を目指すなら、窓の改善が一番です」(田村氏)

窓は枠である「サッシ」と「ガラス」でできています。サッシとガラスどちらにも種類があります。
ガラスの種類は単層と複層があり、複層タイプの方が断熱性が高くなります。サッシの種類はアルミ、樹脂、木製アルミ、断熱アルミなど種類が豊富ですが、これらの中でもっとも断熱性が低いのはアルミです。アルミサッシの部分は結露が発生しやすい場所と言われています。(図3参照)

戸建てで壁に新しく断熱材を入れたり、屋根の断熱性能を上げようと思ったら、それこそ大掛かりな工事になりますが、窓の入れ替えリフォームぐらいならすぐにでもできそうです。
戸建ての持ち家に住んでいる人は自分の判断で窓を入れ替えることができますが、マンションだと、もともと付いているアルミサッシを樹脂に替えるのは難しそうです。

「たとえ分譲でも、窓は共用部分に定められている場合があるため、実費であっても無断で交換できないケースがあります。窓を替えると外観に影響するのと、コンクリートの躯体に支障をきたす可能性があるからです。マンションの場合は、窓の入れ替えではなく、窓の内側に新たにインナーサッシ(内窓)をつけて二重窓にすることができます。1つ10万円ほどです」(田村氏)

新築マンション購入予定のある人は、省エネのために、樹脂サッシに注目してほしいのですが、田村氏によれば、樹脂サッシのマンションは少数派だといいます。樹脂サッシはコストアップになるうえに、一般的に窓はあまり見向きされないので、デベロッパーは嫌がるのだとか。窓の断熱性能にこだわるよりも床暖房を付けようというプランになりがちです。

「例えて言うなら、ダウンジャケットを着ればよいものを、日本の住宅は裸にホッカイロを貼っている状態。家をポットみたいにすれば暖かくなるのに、それをせずに暖房をやたら焚いたりして効率が悪い」(田村氏)

換気扇は「熱交換型換気扇」に替える

戸建てのリフォームでは、窓の次に手をつけるべきは天井と床で、壁は最後でいいそうです。日本では天井の断熱材もまた軽視されているといいます。

「床は薄くても断熱材が入っているケースが多いものの、天井の屋根裏にはまったく入っていなかったりします。天井をリフォームすれば、2階の居住関係が改善されます。戸建てでは床が寒いという話も多いですね。そこで一番ありがちなミスは、断熱材を入れずに床暖房を入れることで、とても効率が悪い」(田村氏)

意外なことに、壁の断熱性能を上げても省エネにはそれほど効果がないといいます。

「壁よりも、窓とか換気扇など、そちらにお金をかけたほうがいいですね。キッチンの換気扇からもかなりの熱が逃げています。空気は外に出すけれども熱は逃しづらい熱交換型換気扇がいいですね。それから、特に高齢者には、命を守る意味で大切なのが、洗面所と浴室です。寒い家はヒートショックを起こしますので。温熱環境を上げるために、バスタブもかなり高性能なものがあります」(田村氏)(図4参照)

住宅の省エネ基準、一般の住宅は「努力義務」

日本の住宅の断熱性能が世界的に見て著しく低く、冷房や暖房のエネルギーをムダに捨てていることは、住宅業界では常識でした。国の「住宅の省エネ基準」は1980年の省エネ法制定以来、法律改正ごとに強化されてきましたが、建築主に対して、あくまで“努力義務”だったからです。

その努力義務を変えるべく、政府は従来、「新築住宅などへの省エネ基準義務化を2020年までに段階的に進める」としてきました。
ところが昨年、2020年以降の適合を義務付けたのは、オフィスビルやホテル、商業施設など住宅を除く新築の中規模建物(延べ床面積300平米以上2000平米未満)だけでした。住宅や小規模建物(同300m2未満)については、義務化が見送りになったのです。

「300平米未満の一戸建て住宅の省エネ基準は、建築主に対しての努力義務のため、この基準を下回る住宅がたくさん建てられてきました。国交省の推計によると、平成29年の省エネ基準適合率は300平米未満の住宅で62%であり、38%はこの基準を下回っている状態です」(田村氏)

新築戸建て住宅では、「断熱等級が最高の4です」という売り方をする住宅メーカーが多いのですが、本来は今年その断熱性能が最低限のレベルになるはずでした。というのも、すべての新築住宅がクリアしないといけない条件が「等級4」となっていたからです。
よって、断熱等級4というセールストークは鵜呑みにしないほうがよいでしょう。


<取材協力>
株式会社さくら事務所
https://www.sakurajimusyo.com/

 

執筆者:横山 渉