超党派の米国国会議員が半導体ファウンドリ強化法案を提出

超党派の米国国会議員7名が6月10~11日に米国半導体研究開発および製造強化法案である「Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act(CHIPS for America Act)」を上下両院に提出したばかりだが、今度は別の国会議員8名と先の法案提出にも名を連ねたJim Riach議員(アイダホ州選出)とMarco Rubio議員(フロリダ州選出)の計10名の上院議員が「2020年アメリカファウンドリ法案(American foundries Act of 2020)」を上院に提出したことをSemiconductor Industry Association(SIA:米国半導体工業会)が明らかにした。

こちらは製造に重点を当てているとはいえ、CHIPS for America法ときわめて類似した米国半導体産業強化法案であるが、米国では事前調整なく、議員は自由に法案を提出できるので、類似法案が提出されるのは日常茶飯事で、今後の法案成立に向けた手続き(常任委員会審議、公聴会、法案修正会合、下院審議、上院審議。両院協議、大統領承認)の初期の段階で調整されることになろう。

この法案は、まず「米国では、18の州には商業用の半導体製造施設(ファブ)があり、半導体は2019年に米国で5番目に大きな輸出品目としてランク付けされている。しかし、他の国々では半導体製造に対して莫大なインセンティブ(補助金や税制優遇)を供与しているが、米国では国内半導体製造への優遇策の欠如でこれらの国々に遅れをとっている」ことを指摘して法案提出の根拠としている。

さらに、この法案は、半導体研究開発の現状について「米国の半導体設計および製造会社で半導体の革新を進めるには、研究が不可欠で、研究開発に売上の約5分の1を投資している。これは、2019年には約400億ドル規模で、あらゆる業界の中で2番目に高い研究投資率である。ただし、米国連邦政府による半導体研究への投資は、米国における半導体研究開発全体のごく一部にすぎず、長年にわたってGDPのシェアとしてはほぼ横ばいだった。一方、中国などは政府の研究投資を増やしている」と指摘している。

American Foundries Actには、米国の半導体製造を促進するための一連の連邦投資が含まれている。これには、国内の新しい半導体製造と研究開発施設にインセンティブを与える150億ドル規模の連邦助成金プログラムや国家安全保障、インテリジェンス、および重要な連邦のインフラストラクチャのためのチップを製造するファブの建設または更新に関する官民共同作業のため50億ドルが含まれている。

American Foundries Actは、国防総省、全米化学財団(National Science Foundation)、エネルギー省、および国立標準および技術研究機関(National Institute of Standards and Technology:NIST)での半導体研究を促進するための50億ドルの新しい連邦投資も提案している。法案はまた、ホワイトハウスの科学技術政策局が、連邦政府の研究機関や民間部門と連携して、次世代の半導体開発を推進するための補助金交付計画を策定することを義務付けている。

  • SIA

    半導体製造のイメージ (出所:SIA)

SIAが米国ファウンドリ法案に賛意、早期成立を要請

SIAのプレジデント兼CEOのJohn Neuffer氏は、「米国は、デジタル経済と防衛システムの基盤である半導体技術の生産において、競争している他の国々にトップの座を譲るわけにはいかない。SIAは、この重要かつタイムリーな法を提出した議会の超党派の指導者たちを支持し、議会に協力して法案を強化し、国内の半導体製造と研究を強化するよう働きかけるよう要請する。そうすることで、人工知能、量子コンピューティング、高度なワイヤレスネットワークなどの影響力のある将来のテクノロジーを含む、半導体とそれが可能にする多くのテクノロジーでアメリカが世界をリードし続けることを確実にするのに役立つ」と述べている。

また、2020年度SIA会長でON Semiconductorの社長兼CEOであるKeith Jackson氏は、「米国企業は、数十年に渡り半導体技術で世界をリードしてきた。しかし、ここ数年、海外の競合他社の政府が先進チップ製造を促進するために積極的なインセンティブを提供してきている。このような傾向を逆転させ、アメリカが半導体技術でトップの座を維持するために、国内の半導体製造と研究に大胆な投資をする必要がある。SIAは、この課題に向けてリーダーシップを発揮している超党派の法案提出議員団を称賛し、半導体製造に対してインセンティブをあたえるとともに半導体研究を拡大するための法案を成立させるための手続きを進めるように議会に要請していく」と述べている。