All About『マネープランクリニック』でアドバイスをするFP深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが、コロナ禍で家計が苦しくても取り崩したくない資産について解説します。

本記事はAll Aboutマネーの連載『マネープランクリニック』の音声番組『2020年の家計防衛』で収録された、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんの対談をテキストで起こした内容です。

All About『マネープランクリニック』でアドバイスをするFP深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが、コロナ禍で家計が苦しくても取り崩したくない資産について解説します(収録は2020年4月)。

◆コロナ禍でも、絶対取り崩したくない金融資産って何?
深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦です。

清水京武さん:こんにちは。マネーライターの清水です。今回のコロナウイルスの影響で遠隔収録になっています。今回は「死守したい金融資産」というテーマです。

コロナの影響で十分な備えがない場合、現金化に苦慮して保険や投資商品を売却する方も増えていると思いますが、それが果たして良いかどうかということをテーマにしてみたいと思います。

深野康彦さん:本来、投資というものは余裕資金でやるものじゃないですか。別途きちんと現預金を確保していれば、こういう局面でバタバタする必要がないわけです。ただほんの数カ月前を振り返ってみると、例えばアメリカ株が史上最高値を更新していたり、少しリスク管理が甘くなっていた人は多いと思います。

2020年はアメリカ大統領選があるから、それまでは株価が上がるという見方があったので、どうしても少し投資に前のめりになっていたところで、今回のコロナが来ました。ですから当然、何かを売らなくてはいけないという人は多いと思います。

また今回のコロナに関して言うと、一部の国で都市封鎖解除、一部店舗が営業再開していますが、根本的には特効薬やワクチンがまだできていません。ですからいろいろなものが解除されたとしても、季節によって第2波、第3波が来る可能性は高いと思います。先のことまで考えると、やはり現預金を厚めにしておくことが大きなポイントになります。

収入が減ることもあり得ますし、それに備えるという意味でも。今不要不急の外出を控えて……と言われていますが、それをなぞらえると不要不急の支出や投資を抑えるというイメージです。現預金をガッチリと持ち守りを固めるスタンスがいいですね。

清水さん:コロナ前まではアメリカも日本も比較的調子が良かったということもあるのですが、今現預金にしなければ厳しいということは逆に言うと、資産配分で投資をやりすぎていたとか、余剰資金以上のものを投資していた可能性もありますか?

深野さん:うまくいっている時ほど資金を上乗せしたりすることってありますよね。その局面が数カ月前だったと言えるかもしれません。うまくいっている時ほど慎重になる、もう一度これを噛みしめないといけません。

清水さん:場合によっては損切りしなくてはいけない人も出てくると思いますが、そういう人は特に、これからの資産配分や資金管理を考えるきっかけにしたいところですね。

深野さん:今回損切りすることになったとしても、やはり時間軸を長くすればどこかでリカバリーできるわけです。投資を止めてどこかでまたスタートしたりとかね。ここで損切りして売ってしまったらもう取り返せない、と思うのは間違いです。

清水さん:株について少し触れましたが、それよりも迷うのは保険だと思います。

深野さん:最近マネープランクリニックの相談を見ていると、意外と保険に入りすぎている人は見受けられますよね。昨年は老後資金2000万円問題があったじゃないですか。それに絡んでか、保険の中でも個人年金保険や変額保険のような老後に備えるためのものに加入してしまっている人が増えているな、という印象を受けます。

清水さん:老後のためにかけている保険なので、今解約することには悩んだり躊躇する人もいるかと思います。そのあたりの判断は難しいですね。

深野さん:保険は確かに、ある意味では老後のための貯蓄というイメージもありますよね。ただ物事には順番というものがあるわけです。私は「時間軸を考えた上でお金の準備をしてください」とお伝えしています。老後というのは、誰にとっても一番遠い将来の出来事ですよね。その一番遠い将来の出来事を今最優先にやることが、本当にお金の準備として必要なのか?ということです。

例えばお子さんがいれば、老後を迎える前に子どもの教育費を確保しなくてはいけません。住宅ローンを抱えている人なら、それを老後に残さないというのも大きな考え方です。そういうことを全部クリアした上で、老後があるわけです。

個人年金保険、外貨保険に入っている人の場合は、自分のライフイベントで優先順位を考えて、本当に厳しいなら払い済みにするということもやむを得ないと思います。

子どもの教育費は待ってくれませんし、住宅ローンの返済も然りです。そういうものをおざなりにして老後を考えるというのは、本末転倒です。保険だってここで払い済みにしたとしても、どこかでまた始めることだってできるじゃないですか。

老後は日本人にとって今一番関心の高いことなので、今後また新たにいろいろな商品が出てくる可能性もあります。政府のiDeCoが65歳まで拠出できるように議論されていたり、つみたてNISAは20年間払い込みができるとか、いろいろな制度ができています。

今は緊急事態なので、老後よりも家計をしっかりと守る、子どもの学費をしっかりと準備する。そちらに主眼を置いて、老後に関しては少し距離を置いておいてもいいと思います。

もちろん余裕があるなら継続してもいいと思いますよ。でもそうでないなら、老後よりも準備しなくてはいけないものがあるでしょう? その観点でどの商品を取っておくか、見直していただきたいです。

清水さん:教育費は学資保険で用意している人が多いですが、生活費が苦しいから学資保険を解約するというと、これはまた問題ですよね。

深野さん:子どもの成長は待ってくれませんから、学資保険はしっかりと続けていただきたいです。よくマネープランクリニックでも、「せめて児童手当くらいは」という話をしますよね。児童手当を確保すると、自動的に総額200万円のお金が準備できるわけです。それが学資保険の原資になってもおかしくないです。

もちろんいくらで満期のものに入るかという違いはありますが、学資保険は守れる人が多いはずなんです。逆に言うと、家計のどこかに無駄があるということなので、そこはしっかりと見直していただきたいですね。

清水さん:保険でもう一つ、一般的な死亡保障や医療保障も全部解約してしまうと、お子さんがいる家庭はよろしくないですよね。そのあたりの考え方もひとつのポイントでしょうか。

深野さん:最近意外と、死亡保障が少ない人が多いですよね。お子さんがいる家庭はしっかりと確保しておいていただきたいです。逆に医療保険は、高額のものに入っている人が多いです。医療費の考え方は人によって違いますが、メリハリをつけて見直したほうがいいかもしれません。

保険は、必要な時期に必要なものだけを確保していれば十分です。給付金の対象になる保険の事故にならない限り、お金はもらえないわけです。我々はそうならないように生活しているわけですから、過度に保障を得るというのは、ちょっと矛盾していますよね。

清水さん:話をまとめると、こういう時期なので現預金は手厚く保有することが大変大事なことです。投資商品を現金化することも必要に応じて大事になってくることもある、投資商品は余裕のある範囲内でやっていくということを、これを機に考えていただきたいです。

保険は各家庭必要最小限に絞ることも大切です。特に年金等老後に関わるものは、優先順位を考えることも重要です。そういうことも考えながら、本当に必要な保障を確保することが基本的な考え方になるということですね。先生、今回もありがとうございました。

教えてくれたのは……

●深野 康彦さん
マネープランクリニックのアドバイスでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

●清水 京武さん
All About「マネープラン・節約」ガイド。25年にわたって1000組以上の家計診断のページづくりに携わってきたマネーライター。貯められない人でも無理なく続けられる家計管理やマネープランの作り方を解説しマネープランクリニックの原稿を担当。

文=あるじゃん 編集部