聖地巡礼で注目を集めた廃バス、米陸軍のヘリで撤去される

米アラスカ州スタンピードトレイルの荒野に放置されていた「マジックバス」と呼ばれる朽ちたバスが、現地時間18日ヘリコプターによって撤去された。

実話を基にした小説『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公、クリストファー・マキャンドレスが1992年に餓死した1940年代のバスを一目見ようと、これまでに少なくとも2人のハイカーが死亡、数十人が救助されている。マキャンドレスはアンカレッジから250キロ北にあるこのバスで寝泊まりしていたが、付近を流れるテクラニカ川の氾濫により帰路が絶たれた後、自ら置かれた窮地を日記にしたためた。

1996年に小説『イントゥ・ザ・ワイルド』が出版され、2007年にはショーン・ペン監督で映画化されると、冒険を求める世界各地の人々がマキャンドレスの足跡をたどり、バスは人気スポットとなった。だが観光客の遭難が相次ぎ、2019年にはベラルーシ出身の女性がバスを目指す途中で溺死。また同じくバスへ向かっていた5人のイタリア人観顧客が遭難し、捜索隊が出動する事態となった、とAP通信は報じている。

「皆さんにはアラスカの大自然を安全に満喫していただきたいですし、このバスが多くの人々の想像力をかき立てるのも理解できます」と、自然保護局のコリー・A・ファイギ局長は声明を発表した。「しかしながら、放置されていたこの廃棄車両は遭難救出に危険と費用が伴いました。ですがそれ以上に、一部観光客の命が危険にさらされていました」

アメリカ陸軍が「ユータン作戦」と呼んだ作業で、バスはCH-47チヌーク機に引き揚げられて撤去された後、トラックに乗せられ「保護された場所」へ搬送された。現時点ではバスが今後どうなるかは明らかにされていないが、安全な場所での展示が検討されている。

【動画】CH-47チヌークヘリでバスを上空に吊り上げて搬送

「ヘリの乗組員は、マキャンドレス氏のご遺族にとって思い入れのあるスーツケースの保管および輸送の安全にも配慮いたしました」と陸軍は付け加えた。だがマキャンドレスの妹カリーヌさんはニューヨーク・タイムズ紙に宛てたメールの中で、スーツケースの中に入っているものは兄のものではなく、おそらくその後訪れた観光客が残した旅行日誌だろう、と述べた。

「撤去の知らせは個人的に残念ですが、アラスカ自然保護局の判断は公共の安全に配慮したものですし、当然彼らが判断すべきことです」と、カリーヌ・マキャンドレスさんはニューヨーク・タイムズ紙に語った。

「フェアバンクス・バス142はクリスの所有物ではありませんし、遺族のものでもありません。彼の足跡を追ってバスまでたどり着いた人々も、結局はバスが旅の目的ではなかったと思います」

『イントゥ・ザ・ワイルド』著者のジョン・クラカワー氏はバスの撤去についてワシントンポスト紙にこう語った。「大変驚きました。この場所は長いこと冒涜され、そしてついに跡形もなく消し去られました。ですが、ばかなことをして亡くなる人々が後を絶たないのも非常に残念です」

クラカワー氏はこう続けた。「バスをあのままずっとあの場所に残して置ければよかったのに。ですが、私が本を書いたばっかりに台無しにしてしまいました」