空間デザイナーとして、オリジナルウエディングの会場装飾や、オフィス移転時のレイアウト考案・企業ロゴの作成まで、マルチな活躍を見せる大巾博史さん。この業界で働いて知った驚きの事実や、よく読む本・勉強していることなどを、番外編としてご紹介します。

■その場にいるだけで「心地いい」と感じられる空間を作りたい

―― 空間デザインの仕事において、大巾さんならではのこだわりはありますか?

デザインというのは緻密な設計を積み上げる作業で、ロジカルな面が大きいものです。しかし、私はそこにもっとアートの要素を入れていきたいと考えています。空間デザインであれば、その場にいるだけで「心地がいい」と感じていただけるような、人の感性にダイレクトに訴えかける空間を作り上げたいと思っています。

以前、ある企業の社内イベント会場の装飾を依頼されたことがあります。真っ赤な太陽が昇る様子をフラワーアートで表現し、大変ご好評をいただきました。一目見ただけで「きれい」「美しい」と感じてもらえるような胸を震わす空間を、これからも作り続けていきたいです。

―― この仕事をして初めて知った驚きのエピソードはありますか?

結婚式に仕事として携わると、現在でも、伝統的なしきたりなどがこんなにも強く根付いているのだと気づき、驚きました。もちろん、良き伝統や文化を継承することも大切なことです。一方で、本質的なところを受け継ぎながら、新しいものを取り入れ、お二人らしいオリジナルウエディングでお祝いするという考え方もだいぶ広まっているのではないかと思っていたのですが、あらゆる人に受け入れてもらうには、その想いをもう少し丁寧に説明する必要がありそうだということが分かりました。

以前、公園でガーデンウエディングを挙げたいと考えている新郎新婦からご相談を受けたことがありました。しかし、地元の名士である新郎のお父様が、伝統ある結婚式場かホテルでの挙式を望んでいるとのこと。新郎新婦の思いを叶えるべく、私も新郎新婦と一緒にご実家へと出向いてお父様に説明をし、新郎新婦もご家族も納得していただいた上でガーデンウエディングを開きました。

■人の幸福度とデザインの相関関係に注目

―― 今の仕事に就いてから、意識して勉強していることはありますか?

今は特にビジネスとアートの関わり合いや、デザインが人間に与えるポジティブな影響について興味があり、会社の仲間と意見交換したり、本を読んだりしています。心理学や社会学の分野の本を読むことも多いです。人がどうしたら幸せになるのかを研究した「幸福学」という学問も確立しつつあり、人の幸福度とデザインの相関関係の研究について、今後も注目していきたいです。

―― 仕事をする上で、日々意識していることや心がけていることはありますか?

ウエディングの当日は一日中現場の指揮を執るため、病気で欠席するわけにはいきません。体調管理には日頃から気を使っています。季節性インフルエンザの予防接種は毎年必ず行い、本番が近づいてくると刺身などの生物(なまもの)も極力避けるようにしています。お酒も、本番前は飲みません。

普段、作業をしていて集中したいときは、雨音を録音した音源をよく聴いています。しとしとした雨音よりも、ザーッとふるゲリラ豪雨系の音を聴いていると不思議と落ち着きます。

■新郎新婦の世界観を具現化する「ウエディングデザイナー」

―― 一緒に働いている同僚には、どんな方が多いですか?

いわゆる「エモめ」な人が多いですね。人間のエモーショナルな部分に向きあう仕事をしているので、当然といえば当然なのですが、かなり感激屋で涙もろい人ばかりです。ウエディングなどに使うムービーの完成試写をする際は、みんな涙しています。それだけ仕事に対する思い入れが深い同僚が多いということで、私はこの職場環境がとても気に入っています。


―― 5年後、10年後の未来の自分はどうなっていたいですか?

今よりもさらにアートとデザインを融合させて、いつかアーティストとして活動したいです。また、「ウエディングデザイン」という概念をもっと世に広めていきたいと考えています。いまだにウエディングにおけるデザインというと、「会場装飾をする」「招待状を作る」「フラワーアレンジメントをする」「結婚式場そのものの設計をする」などと各デザイナーがばらばらに動いて行うことが多くあります。できあがったものは統一されていなく、どこかちぐはぐな印象を受けます。新郎新婦の世界観や想いを100%具現化するためには、統括してデザインする「ウエディングデザイナー」が必要なのです。この仕事の認知度を高めるべく、日々精進していきます。


「エモめ」な同僚に囲まれて、毎日楽しく仕事ができていると語る大巾さん。自分の興味がある分野への探求心が高く、いつも新しいものを求めてチャレンジしている姿が印象的でした。人の心を動かす仕事をしたいと考えている人は、空間デザイナーやウエディングデザイナーの仕事を目指してみてはいかがでしょうか。


【profile】株式会社スペサン HAKU 取締役CCO/デザイナー 大巾博史