三菱重工業は2020年6月8日、H-IIAロケット42号機のコア機体を同6日、名古屋航空宇宙システム製作所飛島工場(愛知県飛島村)から、鹿児島県種子島の種子島宇宙センターに向けて出荷したと発表した。

同機は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府宇宙機関MBRSCが開発した火星探査機「ホープ(HOPE)」を搭載し、7月15日の早朝に打ち上げられる予定となっている。

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    三菱重工飛島工場において出荷を待つ、H-IIAロケット42号機のコア機体 (提供:三菱重工)

H-IIAロケット42号機

H-IIAロケットは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発したロケットで、現在は三菱重工が運用し、打ち上げサービスを提供している。これまでに41機が打ち上げられ、成功回数は40機。さらに7号機以降はすべて連続で成功し続けており、打ち上げ成功率は世界トップクラスの97.6%を誇る。

今回の42号機では、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府宇宙機関MBRSC(The Mohammed Bin Rashid Space Centre)が開発した火星探査機「ホープ(HOPE)」を搭載し、火星へ向けて打ち上げる。三菱重工の打ち上げ輸送サービスにおいて、海外から打ち上げを受注した4機目の衛星(宇宙機)であり、またMBRSCからは、2008年に打ち上げた「ハリーファサット(KhalifaSat)」に続く2機目の受注となる。

打ち上げには、コア機体と固体ロケット・ブースター(SRB-A)を2基装備した、H-IIA 202型と呼ばれる構成を使う。フェアリングは、直径4mシングルローンチ用フェアリング(4S型)を使う。

打ち上げ日時は、日本時間2020年7月15日の5時51分27秒に予定されている。また、打ち上げ予備期間として、7月16日から8月13日までの約1か月間が確保されている。なお、打ち上げ予備期間中の打ち上げ時刻は、地球と火星の位置関係から打ち上げ日ごとに設定される。

ロケットは打ち上げ後、東の太平洋上を飛行。第2段エンジンを2回に分けて噴射するなどし、打ち上げから1時間1分35秒後にホープを分離する。なお、打ち上げ時刻と同様に、16日以降の打ち上げ予備期間中に打ち上げられた場合、飛行経路や第2段エンジンの第2回燃焼の時間も、地球と火星の位置関係によって変わる。

第1段機体と第2段機体、その間をつなぐ段間部からなる「コア機体」は、飛島工場での機能試験を終え、6月6日に飛島工場より出荷。8日に種子島宇宙センターに搬入されている。IHIエアロスペースが製造するSRB-Aは、工場での作業を完了のうえ射場へ搬入済みで、コア機体起立後にコア機体に結合を予定しているという。また、川崎重工が製造する衛星フェアリングは、8日の発表時点で出荷準備中としている。

また、積み荷である火星探査機ホープもすでに種子島に到着済みだという。

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    三菱重工飛島工場において出荷を待つ、H-IIAロケット42号機の第1段機体 (提供:三菱重工)

火星探査機ホープ

ホープは、UAEのドバイ政府宇宙機関MBRSCが開発した火星探査機で、「エミレーツ・マーズ・ミッション(Emirates Mars Mission)」や、 アラビア語で「希望」を意味する「アル・アマル(Al-Amal)」といった名前でも呼ばれる。

予定どおり今夏に打ち上げられた場合、UAEの建国50周年にあたる2021年に火星に到着。高度2万2000km×4万4000kmの楕円軌道で運用する。

探査機には、UAEと米国のコロラド大学やアリゾナ州立大学などが共同開発した観測機器を搭載しており、主に火星の大気と気候に焦点を当てた探査を実施。大気の上層と下層がどのように相互作用しているのか、また現在と過去の火星の気候の違いなどを調べる。

直径は2.37m、高さ2.90mで、打ち上げ時の質量は約1500kg。ミッション期間は2023~2025年ごろまで予定されている。

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    火星探査機ホープの想像図 (C) MBRSC

同ミッションのプロジェクト・ディレクターを務めるOmran Sharaf氏は「この特殊なミッションの準備と打上げまでのカウントダウンに対応する中で、今回のH-IIAロケットの出荷という次の一歩を踏み出せることを大変嬉しく思います。また、我々はパートナーである三菱重工と再び仕事ができることを喜ばしく思っています。火星へのエキサイティングなミッションの船出に際して、この国家的なプロジェクトの実現に重要な役割を果たした協業は非常に重要なことです。このミッションの開発期間から現在に至るまで、様々な課題を乗り越えてきたグローバル・パートナーと共に、2020年の打上げを達成すべく取り組んで参ります」とコメントしている。

また、三菱重工 H-IIA/H-IIBロケット打上執行責任者の田村篤俊氏は「今回はアラブ首長国連邦の火星探査機を打上げます。建国50周年の2021年に火星到着を目指すミッションです。これから機体を種子島に輸送し射場作業が始まりますが、私たちは特別なことをするわけではありません。今迄のロケットと同様、ひとつひとつの作業を確実丁寧に行い、不適合の兆候を見逃さず、準備を進めていきます。そして、記念ミッションへのお客様の強いご期待に対し、成功という結果で必ず応えていきたいと考えます」とコメントしている。

三菱重工飛島工場で出荷を待つ、H-IIAロケット42号機のコア機体を動画でチェック

三菱重工飛島工場において出荷を待つ、H-IIAロケット42号機コア機体の動画 (提供:三菱重工)

参考文献

三菱重工 | H-IIAロケット42号機のコア機体を出荷 名古屋航空宇宙システム製作所 飛島工場から
Emirates mars mission | Mohammed Bin Rashid Space Centre - MBRSC -UAE
Hope Mars Missionさん (@HopeMarsMission) / Twitter
三菱重工 | UAEドバイのMBRSC から火星探査機打上げ輸送サービスを受注