みなさんこんにちは。科学コミュニケーター(SC)の山本です。

2020年の4月~5月に月~金で正午から配信していたニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ だからプロにきいてみよう」(国立医療研究センター 国立感染症センターとのコラボ番組)のまとめの続きです。後編では28日(木)・29日(金)の配信内容についてお伝えします。

番組配信メンバー:国立医療研究センター 国立感染症センター「堀」、日本科学未来館「綾塚」「鎌田」「小林」「髙橋」「伊達」「田中」「毛利」「山本」「詫摩」
4月~5月の計43回の配信は、こんなメンバーでお送りしました


あ、6月も週1回、毎週日曜の14:00~15:00に配信が続きますので、どうかお間違えなく! ⇒https://www.miraikan.jst.go.jp/info/2003310925716.html

デマとどうつき合っていくか(つき合わずに済ませるか)、感染した時の検査や隔離をどうするかを扱った5月25日(月)~27日(水)については、前編をご確認ください。内容が濃すぎてブログ1本に収まらなかったので、25日(月)~27日(水)の前編と、28日(木)・29日(金)の後編とに分けてお送りしています。

なお、項目のあとにあるカッコ内の数字は、各放送の開始時点からの経過時間です。番組を見る際の目安にお使いください。




■5/28(木)のお話、ピックアップ

動物と「新型コロナ」「次亜塩素酸水の噴霧」の2つについて、「あの話題どうなった?」と題してお届けしました。

◆ ヒト以外の動物への感染について(02:00~)

これまでのところヒトからネコなどの動物にうつったり、ネコからネコにうつったりするという報告があります。ですが、動物からヒトに感染したというはっきりした証拠は出ていません。

世界で新型コロナウイルスの感染が報告された動物:マレートラ、ライオン、イヌ、ネコ、フェレット、ゴールデンハムスター、オオコウモリ、ミンクなど
広く哺乳類で感染の報告がありますが、ペット動物からヒトに感染したという確かな証拠は今のところありません


ペットの暮らしの中で何に気を付けると良いのかについて、元未来館の科学コミュニケーターで獣医師の西岡真由美さんから、以下のアドバイスをいただいています。

  • ・散歩はオープンエアで(屋内型のドッグランなどより、屋外で)
  • ・散歩の時、人混みをさける
  • ・ネコの飼育は、基本の通り室内飼育を守る


なお、放送中のリアルタイムにいただいたコメントで、「犬や猫はコロナにかかると、どんな症状が出るの? 発症するの?(14:17~)」という質問があり、小林が回答をしました。それに関して、西岡さんから指摘がありましたので、小林から補足と訂正の文章を預かっています。


番組中で「感染したネコは無症状の場合が多い」とお伝えしましたが、これは一部の研究結果のみを参照したもので、正しい表現ではありませんでした。海外では症状のある例が報告されているという事実と併せて、謹んで訂正させていただきます。大変失礼いたしました。
(科学コミュニケーター・小林望)



放送でお答えした通り、今のところネコの発症例についての報告が多くないというのは本当のようです。ですが、発症したという報告もあるということなので、やはりネコの感染も防いだ方がよさそうです。ヒトから動物への感染対策についても、十分にしたいですね。

また、動物や、動物の飼育者を迫害するのではなくて、動物を守る姿勢が大事だと堀さんも指摘されていました。どうか、動物を虐待したり、必要なお世話を省略したり、飼育を放棄したりしないようにお願いします。


◆次亜塩素酸水の噴霧について(16:10~)

街中で噴霧されるところを見かける「次亜塩素酸水」。食品添加物に使われているから安全という表現を目にしますが、それに関する厚生労働省の記載(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf)をみると・・・


厚労省資料より、食品添加物としての「次亜塩素酸水」使用上の留意点の抜粋。「使用前にpH、有効塩素濃度を確認すること」「あらかじめ食品の汚れを洗浄した後で使用すること」「使用後は、食品を飲用適の水で十分に洗浄すること」など
次亜塩素酸水は、ヒトの口に入る前提では認可されていない様子



「食品添加物」というと口に入れても問題ないように聞こえますが、実は、食品の製造・加工の際に使われるものも食品添加物に含まれます。次亜塩素酸水もそのカテゴリで、使った後には洗い落とすことが前提で認可されています。肺などに入ったときに安全かどうかの確認もできていないようです。

「そもそも消毒薬を噴霧はしない」というのが、堀さんが番組で語った原則でした。もちろん、堀さんの病院でも噴霧をしていないとのこと。

なお、身の周りでの次亜塩素酸水の噴霧をやめるようにお願いしても、現場の方には決める権限がないことも多いです。ご意見の受付窓口を探したり、ガイドラインを決めている機関などに伝えたりする方がスムーズかもしれません。

※次亜塩素酸水の噴霧に関しては、放送終了後の5月29日に経産省から、6月4日には文科省からそれぞれ資料が出ています。

  • ・経産省:「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) ⇒https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf
  • ・文科省:学校における消毒の方法等について ⇒https://www.mext.go.jp/content/20200604-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

■5/29(金)のお話、ピックアップ

この日の前半は、「医療現場の第一波と第二波」ということで、米国の感染症専門医である感染症コンサルタントの青木眞先生に、後半は「保健所の第一波と第二波」として東京都港区 みなと保健所長の松本加代先生にご登場いただきました。


◆医師とのコミュニケーションのコツは?(20:50 ~)

みなさんは、病院に行ったときに、お医者さんにうまく症状を伝えられなかったり、苦痛や心配事に共感してもらえなかったり、したことはありませんか? 

新型コロナの症状ではないかと疑いながら病院に行くときに、医師とどのようにコミュニケーションをとれば良いのかを青木先生にきいてみたところ、旭中央病院の中村朗医師にヒアリングをしてくださいました。

中村先生の回答は、「新型コロナで受診するときには、過去2週間、どこで何をしていたかの行動履歴が医師に伝えられると良い」ということでした。感染したと思しき状況があるかどうかが大きな手掛かりになるとのこと。日々の行動履歴を、特に流行が起こっている時には取っておくと良さそうです。


また、堀さんからは、新型コロナに限らず、受診の際にメモして用意しておくと良い項目や、具体例をいただきました。これは参考になりますね。

医師の関心に沿って伝えるメモ:「今、一番つらい症状は?(受診の理由)」「それはいつから?どれくらい続いている?」「その前後に何か特別なことをした?(食べた・行った・触った)」「何かをすると変化する(姿勢・食べたり飲んだり・行動)」「受診までに薬飲んだりしたか? 変化したか?」「同じような症状の人が周囲にいたか?」
受診前にメモしておいて、医師や看護師に伝えるとと良い項目

医師の関心に沿って伝えるメモ(例):「お腹が痛いので、様子見ていたけど、どんどん症状が強くなってきたのできました」「この症状は昨晩からであまり眠れていません」「自分の考えなんですけど、昨日もらったお弁当のせいかなあって」「右を下に寝ると少しやわらぐんですが」「XXXを2回飲みましたが、あまりかわりません」「同じものを食べた母は元気ですが夫は1回下痢したそうです」
医師や看護師に伝えると良い内容の例



◆保健所が電話で困ったこと、FAXのいいところ(1:10:13 ~)

新型コロナウイルスの感染が疑わしい時、ルールに従って保健所に電話をしても全くつながらない、ということが問題になりました。保健所の負荷もかなり大きかったことが想像できます。

みなと保健所長の松本先生によれば、もともと感染症の対策のスタッフが14人だったところに、日中の新型コロナについての相談件数が多い時で1日に350件くらいかかってきていたそうです。簡単なやり取りで終わる要件でもなく、検査や入院などについて病院との調整も必要ということで、やはりこの電話対応が大変だったとのことです。

現在は、70名ほどが新型コロナに対応できる体制を整えながら、体調を記録して保健所と共有できるアプリを導入するなど、電話対応の負荷を下げているそうです(港区 感染症 健康観察サービス ⇒https://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/20200430_press.html)。

マスク着用でご出演くださった松本先生
「今やマスクは顔の一部。マスクをすると誰か分からなかったのが、マスクを取ると誰か分からない時代に」という松本先生の名言


また、保健所で使われていると話題のFAXについても伺いました。FAXには、「医師の手書き資料をすぐに送れる」「受け取る側も届いたことがすぐに目にとまる」などの長所もあるとのこと。忙しい医療現場から情報をいかに送るか、いかに管理できるか、というところからの設計が必要で、FAXをやめてメールにするだけで問題が解決するとは思えないということでした。

第一波では、保健所に負荷が集中し過ぎたことで、上手く治療や検査につながらずに苦しむ方が出てしまいました。これは保健所の現場の方の問題というよりも、仕組みの問題だったのではないかと思います。次の感染の波が来た時にはスムーズに対応していただけるように、仕組みの改善に期待しましょう。



◆非常時にだけ必要な物や人、どう維持する?(1:30:50 ~)

ご厚意で青木先生が再登場してくださったので、質問をぶつけてみました。

堀さんに召喚されて再登場した青木先生
「青木先生呼びます?」とカジュアルに呼んじゃう堀さん、本当に再登場しちゃう青木先生、お2人の不思議な力関係に薄笑いが漏れる山本


◆新型コロナウイルスの流行などへの備えを、社会はどうやって維持したらいい?(1:30:50 ~)

感染症対策には、患者の全身を診られる総合診療医が増えることが重要、というのが青木先生のお考えでした。特定の部位の診療医よりも、患者の全身を診て、総合的に対応ができる医師が多いことが、新型コロナなどの新しい感染症が突然現れた時の対応力を高めるとのこと。


しかし、日本は、総合診療の道に進む若い医師の割合が2%程度と少なく、減少傾向にあるそうです。これは医療や行政のみなさんに頑張って欲しい、私たちに関係ない話・・・と思いきや、実は、アメリカにある総合診療医の割合を高くする仕組みは、市民の強い要望から作られたとのこと。私たち日本の市民も、日本の医療を変えることができるのかもしれません。

医療の話に限らず、非常時のために常に準備万端でいることは難しいかもしれませんが、対応力が高くて効率の良い備えを探るというのは、選択肢の1つということにも思えます。現実的な解決策を考えて、第二波に備えたいですね。

5/29(金)の配信後アンケート:「とても良かった:98.2%」「まぁまぁ良かった:0.9%」「ふつうだった:0%」「あまりよくなかった:0%」「良くなかった:0.9%」
豪華なゲストに最終回補正(一端の区切り)もあってか、ちょっとスゴいアンケート結果になりました。ありがとうございました!




以上、新型コロナウイルスの第一波を振り返った配信のピックアップでした。次の感染の波までに変えていきたい、さまざまな課題が浮かび上がってきました。新型コロナウイルスの出現は不幸なことではありますが、社会が変わるチャンスと言うこともできそうです。前向きに色んな課題を解決していけるといいなと思います。

そして、今回浮かび上がった課題の解決には、市民の意識や意見が重要になるものもありそうでした。あ、丁度未来館も再オープンしたところでしたね。お越しになった際には、科学コミュニケーターを捕まえて、みなさんのご意見をお聞かせください。

配信時間を変更して続く6月の番組も、引き続きよろしくお願いします。毎週日曜14:00~15:00です。番組の詳細はこちらから⇒https://www.miraikan.jst.go.jp/info/2003310925716.html


■各回の内容一覧

過去の番組も会員登録なし、無料で視聴できますので、ぜひご覧下さい。⇒https://ch.nicovideo.jp/miraikan


◆5/28「ペットから新型コロナはうつる?次亜塩素酸水の噴霧はどうなの?」 (担当SC:小林)

【ペットから新型コロナはうつる?①】

  • ・ヒト以外の動物への感染例(02:00~)
  • ・ペットへの感染を防ぐために(07:10 ~)
  • ・感染者のペットを預かる場合の注意点(08:18~)

【ペットから新型コロナはうつる?② ~獣医師 西岡真由美さんに聞いてみた】

  • ・ペットの定期ワクチンの接種は不要・不急?(08:45~)
  • ・ペットと暮らす時に、気を付けるべきことは?(12:05~) 

【ペットから新型コロナはうつる?③】

  • ・犬や猫はコロナにかかると、どんな症状が出るの?発症するの?(14:17~)

【次亜塩素酸水の噴霧はどうなの?①】

  • ・次亜塩素酸水は食品添加物だから安全?(16:10~)
  • ・消毒する際に気を付けるべきこと(19:35 ~)
  • ・病院で次亜塩素酸水や消毒薬の噴霧をしている?(22:45~)
  • ・施設やお店が噴霧している場合、止めてもらうにはどう伝えたらいい?(24:58~)
  • ・消防の救急隊での消毒液の使用法(29:30~) 

【次亜塩素酸水の噴霧はどうなの?② ~文科省への取材を元に】

  • ・学校再開に向けてのガイドラインでの扱い(31:27 ~) 

【次亜塩素酸水の噴霧はどうなの?③】

  • ・国や自治体に意見を届けるには?(33:08 ~)


◆5/29「新型コロナの次の波が来る前に、第一波を振り返る」 (担当SC:山本)

【医療現場の第一波と第二波 ~感染症コンサルタント 青木眞先生にきく】

  • ・感染症の情報が更新されていく中で、現場ではどのように対応?(5:40 ~)
  • ・診断のヒントとなる情報が増える中、PCR検査の位置づけは?(9:05 ~)
  • ・PCR検査の数、どこまで増やすべき?(12:40 ~)
  • ・長期的な目標は人々が安全に行き来できるようにすること(19:15 ~)
  • ・医師とのコミュニケーションのコツは?(20:50 ~)
  • ・医師の関心に沿って伝えられるメモの例(堀さん作成)(23:55 ~)
  • ・第二波に向けて変わるといいこと(29:53 ~)
  • ・高齢者施設など弱いところでは攻めの準備をする必要(29:53 ~)
  • ・何か起きたときの初日の動きを決めておくのが大事(33:25 ~)
  • ・第一波で医療がやっていたこと(39:39 ~)
  • ・報道の中での科学的な正しさについて(43:10 ~)
  • ・医療機関の現状は?(45:20 ~)
  • ・第二波に向けて、人員やベッドなどの準備はできている?(48:50 ~)
  • ・知見やデータをシェアできるようになるとよい(51:10 ~)
  • ・コロナ対応で病院の収益が悪化する問題(54:10 ~)
  • ・日本にCDCは必要?(55:30 ~)

【保健所の第一波と第二波 ~港区 みなと保健所長 松本加代先生にきく】

  • ・保健所は何をしているところ?(1:01:35 ~)
  • ・新型コロナで保健所はどんな状況だった?(1:05:35 ~)
  • ・保健所の多言語対応はどうなっている?(1:08:20 ~)
  • ・FAXのいいところ、電話で困ること、その対策(1:10:13 ~)
  • ・自治体によって違う感染者の対応や基準、誰が決める?(1:16:50 ~)
  • ・保健所の現場の苦労(1:20:43 ~)

【休憩タイム】

  • ・科学コミュニケーター毛利流・おうちで顕微鏡生活の楽しみ方(1:22:43 ~)

【感染症コンサルタントのお2人にきく ~青木先生再登場!】

  • ・非常時にだけ必要な物や人、どう維持する?(1:30:50 ~)
  • ・かかりつけ医制度のはなし(1:39:10 ~)
  • ・市民の声の重要性(1:43:30 ~)
  • ・合唱や吹奏楽はどう対策したらよい?(1:45:20 ~)
  • ・感染者情報と個人情報のバランスをどう取る?(1:49:28 ~)


Author
執筆: 山本 朋範(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
物心つく前は「抱き上げるときには気が抜けなかった」とは親の談。さすがに今は不思議だからって人の目を突っついたりしませんが、サンショウウオを研究したり、フィリピンの田舎に住み着いたりと、相変わらず好奇心で生きています。今度は皆さんの好奇心を突っつく仕事をしたいと、2016年に未来館にやってきました。