2020年6月2日、ライアットゲームズから新作タイトルのタクティカルFPS『VALORANT(ヴァロラント)』が、日本を含む世界に向けて正式リリースされました。

『League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)』などを手がけるライアットゲームズの新作とあって、正式リリース前から、高い注目を集めていた『VALORANT』。2カ月のクローズドベータテスト期間には、1日平均およそ300万人がプレイし、「Twitch」などのゲーム配信プラットフォームでの総視聴時間は、4億7,000万時間を超えたとされています。

『VALORANT』では開発時点から、さまざまな点において競技性の高さが追求されており、eスポーツタイトルとしての盛り上がりにも大きく期待されています。本記事では、eスポーツシーンの動向にもフォーカスしつつ、待望のリリースを迎えた『VALORANT』についてご紹介します。

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    2020年6月2日に正式リリースされた『VALORANT』

銃とスキルを駆使して戦う、5対5のタクティカルFPS

『VALORANT』の基本ルールは、攻撃側と防衛側の2チームに分かれて、銃とスキルを駆使して5対5で勝敗を競うというもの。スパイク(爆弾)を起爆または解除するか、敵チームを全滅させることで勝敗が決まります。後半戦では攻守を交代し、13ラウンドを先取したチームが勝利。フルセットまでもつれ込んだ場合は50分程度ですが、ワンサイドゲームだと結構あっという間に決着が着くこともあります。

試合開始時に、プレイヤーはエージェントを選択。エージェントにはそれぞれの特徴があり、戦闘を有利に進めるための独自スキルを4つ持っています。スキルは3つの「アビリティ」と1つの「アルティメット」で構成。これが『VALORANT』ならではの深い戦略性を生み出す要素になっています。

マップは全部で4種類。攻撃側はマップに表示されたいずれかの「サイト」にスパイクを設置、防御側はそれを阻止または解除することを目指して試合が進行します。

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    弓矢を放つソーヴァは、敵にダメージを与えたり一定範囲内を索敵したりするスキルを持つ

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    マップ「ヘイヴン」のみ、3カ所のスパイク設置場所がある。ほかマップは、AサイトとBサイトの2カ所

ラウンド開始時には、武器やアビリティを買う「購入フェーズ」があり、ラウンドの結果に応じて手に入るクレジットを使って装備を整えられます。クレジットが不足しているときや、強い武器を次のラウンドでそろえたいときなどは、最低限の装備のみを購入し、次のラウンドに備える「エコラウンド」を作るといった戦略性も求められるでしょう。

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    「購入フェーズ」で買えるのは、さまざまな性能の武器。より強力な銃を購入するには多くのクレジットが必要だ。また、エコラウンドにしたいときは「節約を提案」ボタンで味方と意思疎通できる

理解を深めて気づく「奥深さ」がある

『VALORANT』を実際にプレイしてみると、操作自体は思いのほか難しくなく、リコイルコントロールなどを含め、これまでPCでFPSゲームをプレイした経験があれば、「ある程度すぐに慣れそうだ」という印象を受けました。

狙い通りに射撃するためには、静止した状態で撃つ必要がありますが、『Counter-Strike: Global Offensive』(CS:GO)のように逆方向キーを一瞬入力するシビアなストッピングが求められることはありません。移動キーを離すだけで、ほとんど動きを止めることができます。

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    ヘッドショットならほぼ1発で相手を倒せるため、撃ち合いは一瞬で勝負が決まる

一方で、理解したり使いこなしたりするのが難しいと感じたのは、それぞれのエージェントが持つスキル。テキストの説明を読むだけではイメージしづらいものが多く、実際にさまざまなエージェントを使いながら、少しずつ覚えていく要素と言えそうです。

5対5の攻守に分かれて戦う、いわゆる“爆破モード”はオーソドックスなルールの1つですが、『VALORANT』で初めてこうしたルールに触れる人もいるでしょう。私もその1人で、最初は慣れないラウンド制や購入システムなどに戸惑う部分もありましたが、プレイしながら理解していくうちにおもしろさや奥深さがわかってくる感触を得られました。

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    プレイ中のゲーム画面

『VALORANT』の“観戦”は盛り上がる?

『VALORANT』は、競技シーンを見据えているため、個人のスキルとチームワークで勝敗が決まります。しかも、それ以外の外的要因で結果が左右されないよう徹底しています。ですが、eスポーツシーンが盛り上がるには、プレイヤーのみならず、動画や配信で試合を観て楽しむファンも欠かせません。

特に、昨今人気ジャンルの1つとなったバトルロイヤルゲームでは、“生き残れば勝ち”というルールのシンプルさから、観て楽しむことをメインとした観戦ファンが多くいます。それに比べると、『VALORANT』を観て楽しむには、必要とされる前提知識が多く、やや難度が上がると感じました。

例えば、『VALORANT』には現時点で11人ものエージェントが登場し、それぞれ4つのスキルを持っています。これらは戦略性の深さを生む重要な要素ではありますが、観る人にとっては「何が起こっているかよくわからない」という状況に陥りやすい要素でもあるでしょう。

先日開催された、日本初の公認大会「VALORANT Super Match」を観戦していた限りでは、さまざまなスキルが目まぐるしく展開され、かつ非常にスピーディーな銃撃戦が行われるため、誰のスキルがどのように活かされていたのかを理解するには、なかなか高いハードルがあるように感じられました。

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    クローズドベータテスト期間に行われた日本初の公認大会「VALORANT Super Match」の様子

『VALORANT』は、基本無料かつ必要なPCスペックが低いことから、プレイ自体のハードルは低くなっています。とはいえ、幅広いファン層を獲得してeスポーツシーンを盛り上げていくためには、いかに観戦の体験を向上させられるかが1つの鍵となりそうです。

FPSタイトルのスタープレイヤーが続々と集結

『VALORANT』のeスポーツタイトルとしての期待は高く、国内外で多くのプロゲーミングチームが参入を表明しました。国内でも、ほかのFPSタイトルで名を馳せたスタープレーヤーたちが『VALORANT』のシーンに集結しつつあります。

2020年4月には、プロゲーミングチーム「JUPITER」が、『CS:GO』の競技シーンで活動していた「Absolute」のメンバーを迎え、VALORANT部門の設立を発表。「Absolute」は、『CS:GO』の国内大会を連覇し、国際大会でも活躍を見せていたチームとあって、大きなニュースとなりました。

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    プロゲーミングチーム「JUPITER」の公式サイト

ほかにも、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(PUBG)の競技シーンからは、ずば抜けたエイム力から“神の子”と呼ばれたDep選手が、プロゲーミングチーム「REJECT」のVALORANT部門での活動を発表しています。すでに「VALORANT Super Match」でも、1人で5人の敵を倒し切る“ACE”を披露し、大いに視聴者を沸かせていました。

このように、国内外でさまざまな選手のVALORANT部門への移行が発表されていますが、ゲームシステムに『CS:GO』の影響を大きく受けている『VALORANT』では、『CS:GO』のプレイ経験が大きなアドバンテージになると言われています。

国内における『VALORANT』の競技シーンとしては、『CS:GO』で国内最強の実績を持つチーム「Absolute JUPITER」が再び王座につくのか、それを阻止するチームが現れるのか、といったところが当面の見どころになるでしょう。

国内外の『VALORANT』eスポーツシーンは、果たしてどのような盛り上がりを見せていくのか。今後の展開から目が離せません。