俳優の柄本明が4日、東京・浅草の浅草九劇で一人芝居『煙草の害について』の会見を開き、同作への思いを語った。

  • 一人芝居『煙草の害について』ゲネプロの柄本明 撮影:加藤孝

新型コロナウイルスの影響による配信需要の高まりを受け、「オンライン型劇場」にリニューアルした浅草九劇。柄本はその第1弾作品としてオファーを受け、1993年に構成・上演して好評を博して再演を重ねてきた『煙草の害について』を、5日と6日に有料配信する。

「断る理由もない」と受けた今回のオファー。「挑戦なんていう気持ちはさらさらない」とオンラインであることを意識せず、「どちらにしてもそういう仕事をやっているんだし、お客さんがいないだけで、舞台でやることは一緒ですからね」と平常心で板に立つ。

アントン・チェーホフ原作を選んだのも、「チェーホフの作品が好きなんです」というシンプルなもので、「『煙草の害について』は、オリジナルは15分かせいぜい20分で読めちゃうんですよね。短いんです。それを、他のチェーホフの本とかを加えて、勝手にいい加減に長くしたんです。いつもやりながら、チェーホフに申し訳ないですね」と苦笑。

「オンライン型劇場での一人芝居」に注目が集まっていることについても、「すごいんですかね? だって、変わらないんだよ。セットもあれだし。あまりそういう意識がないんです。『オンライン』というのも良くわからないしね」と首をかしげ、「いつもやっているのと同じことだから。改めて、『やりたい!』なんて気持ちは全くないです」と正直に話して笑いを誘った。

一方で、記者からの「文化芸術が不要不急のものという論調、風潮についてはどう思うか」という問いには、「文化芸術というのは、やっぱり生きているものだと思うんですよ。絶対に『不要不急のもの』とは違う」と力強く返し、「確かに“ご飯”と違うから、それがなくても生きていけるという人もいるでしょうけど、『不要不急のもの』ではないと思います。ものすごく必要なもの。だから、こういうオンラインでやろうなんていう知恵も出てくるわけだし。やはり文化芸術が死ぬということは、人間が死ぬということと同義語じゃないかと感じますね。文化、芸術、娯楽。絶対に必要なことだと思います」と主張した柄本。

「とりえあえず興味として観て頂いて、面白ければこの後、劇場が再開されたら来て頂ければと思います。ただ、オンラインはオンラインであって。やはり、お芝居の本来の面白さは『劇場に来る』ということ。つまり、家からの電車か徒歩か自転車か、そこも含めての演劇。オンラインでそれはわかりませんから。とりあえずオンラインで観て、そういったものに興味を持って頂いて」と演劇の裾野を広げる好機と捉えつつ、「『その場所へ行く』ということ。そういう演劇体験がないのは残念でもどかしい。でも、とりあえずこういうオンラインみたいなことで、そんな空気がいくらかでもお客さんに届けられればいいなぁ……なんてことを思います」と一人でも多くの人に届くことを願っていた。