取材はリモートで実施

 東京ヴェルディの将来を担う選手が昨季、また一人プロデビューを果たした。

 現在18歳の藤田譲瑠(ジョエル)チマは、優秀な選手を多数輩出してきた東京Vの下部組織出身。2019年8月に2種登録選手としてトップチームに昇格し、今季はプロ1年目のシーズンを迎えた。

 開幕戦からスタメンを勝ち取った藤田だったが、新型コロナウイルスの影響により明治安田生命J2リーグは第1節終了時点で中断。藤田にとってはルーキーイヤーとして、これから羽ばたいていくところで、まさかの形でストップがかかってしまった。

 将来を嘱望される選手の一人である藤田が、今、何を考えて過ごしているのか。また、所属する事務所UDN SPORTSが、この期間に展開する社会貢献活動「UDN Foundation」を通じて、何を感じたか聞いた。

インタビュー=小松春生

◆■嘉人さんから「考えてプレーしないとダメだ」と何回も言われた

―――現在は、どんな生活サイクルをされていますか?

藤田譲瑠チマ(以下、藤田) 9時くらいに起きて朝食を食べ、午前中は自分でストレッチや筋トレをして、昼食。午後はチームから渡されたトレーニングメニューをしています。夕食を食べてからは、チームメイトの山本理仁とかとオンラインゲームをやって寝ています。何でもないことを話していますけど、それが一番楽しいですね。一日の最後にみんなでコミュニケーションを取っています。あとはDAZNで過去の試合を放送しているので、アーセナルのパトリック・ヴィエラのプレーを見たりしています。他では映画を見ていますね。

―――単調で同じことを繰り返す生活はメンタル面に影響を与えていませんか?

藤田 言ってしまえばつまらないかもしれませんが、サッカーができる日を楽しみに待っていることをモチベーションにできています。プロ1年目でこんなことが起きると思っていなかったし、サッカーができないことはつらいですけど、いい経験だととらえています。

―――自分と向き合う時間がたくさんあることは、ある意味、得難い経験ですね。

藤田 最近、「サッカー好きなのかな?」と考えるようになって。好きというより、自分になくてはならないものと思うようになり始めました。「サッカーがないと、自分に価値がないのかな」とか、「好き」だけでは表せられないと。そこから「今までのサッカーに対する姿勢は正しかったのか。もっと頑張らないといけない」と考えるようになりました。

―――これまでの姿勢が正しかったかは、未来の自分が決めることでもあると思います。

藤田 普段やっていることは正しいと思ってやっていますが、世界でやっていくにはまだまだ足りないと思いました。もっとやらないと、と。

―――自分と向き合ってトレーニングを続ける中で気付きはありましたか?

藤田 渡されたトレーニングメニューをただこなすだけじゃなく、例えばタイム設定があれば、それよりももっと速く走ってやろうとか、他の選手と差をつけてやろうとか、自分は負けず嫌いなんだと改めて感じました。

―――再認識したと?

藤田 今は体力を維持するトレーニングが中心ですが、その中でも「強くなってやろう」という気持ちを自分の中で思いながら走っていて、昔からこんな気持ちで取り組んでいたなと思い出しました。自分自身、負けず嫌いですし、年齢に関係なく自分の意見を言います。正しいと思うことは伝えたいですし、負けたくもないので、人にものを言うタイプでもありますね。

―――先ほどのお話に出たパトリック・ヴィエラは、そのスタイルでかなり参考になる選手だと思います。

藤田 初めてヴィエラという選手を知ったのはサッカーゲームなんです。そこからDAZNでどういう選手かを見たら、一つひとつのプレーが強く、誰よりも走っていました。こういう選手がチームに必要とされると思いましたし、そういうプレーは気持ちから来るんだろうなと感じました。

―――2019年は2種登録選手として、トップチームでリーグ戦4試合に出場しました。改めて、プロの世界はいかがですか?

藤田 ユースの時は感覚でやれている部分や、フィジカルに頼っていた部分がありましたが、プロではまったく通用しないと感じました。今季加入した(大久保)嘉人さんから「お前、考えてプレーしていなかっただろ。考えてプレーしないとダメだ」と何回も言われました。まさにそこが足りていないと感じています。

―――言われてハッとしましたか?

藤田 以前は「ここが空いているから、こっちから攻めて…」というような、未来を考えてプレーするのではなく、だいたい「ここだな」っていう感覚でプレーしていました。でも、嘉人さんから言われて、改めて気付かされて。そこから、考えてプレーしようと練習や試合をしていますけど、まだつかめないですね。嘉人さんはすごい目を持っていて、経験がすごいと感じました。

―――これまで持っていたプレーイメージから変化させていくと、判断が遅くなる可能性もあります。

藤田 迷うこともあるし、躊躇して一歩遅れることも少なくなくて。チームでのズレも生まれて、迷惑をかけることもあるとは思いますけど、考えるということはあきらめずにやっていきたいです。

 一方で、もちろんチームのために戦うんですが、自分の力ではチームを考えてプレーするまでの余裕はないので、今は自分のことに100%で取り組んでいます。元気のある選手がいっぱい走って、経験のある選手がゲームを落ち着かせることで、バランスがとれたチームになっていくと思います。

―――藤田選手が東京ヴェルディのジュニアユースに加入した時は、すでにJ2所属となっていて、そこからチームはJ1に昇格できていません。J1の舞台に立ちたい思いはいかがでしょう。

藤田 当然、今季もチームとしてJ1昇格を目指しています。その中でヴェルディのアカデミー出身選手としてチームを昇格させ、ヴェルディでJ1に挑戦できたら最高ですよね。ただ個人的にはJ1でのプレーに固執しているわけではありません。カテゴリーどうこうではなく、自分が今やるべきことにフォーカスしています。J1はこれからのキャリアを考えると経験しないといけない場所という感じです。

―――将来の目標は何でしょうか?

藤田 いろいろな国や地域でサッカーをしたいです。プレミアリーグやラ・リーガでプレーしたい気持ちはありますけど、例えば南米のように、サッカーが文化になっている地域でプレーしてみたいです。アルゼンチンのリーベル・プレートとボカ・ジュニアーズのダービーマッチを何年か前に見て、街全体が戦っているような場所でやってみたいという気持ちを持ちました。怖い部分もありますけど、いろいろな人たちが命を懸けてサッカーのことを考えていると思うと、すごく感じるものがありました。その中で、体を張ってサッカーをやることは絶対楽しいんだろうなと思っています。

◆■自分が日本代表になれば、後輩にも刺激を

―――ここからは藤田選手が所属するUDN SPORTSが実施する社会貢献活動『UDN Foundation』の活動についてうかがいます。この活動に参加することや、同じ事務所の先輩の活動を見てきて、社会貢献活動の大切さは感じていますか?

藤田 最初は、自分が発信しても社会にどれだけ影響を与えられるのか、と思ったんですけど、動画メッセージを発信した時に、スタッフさんからすごく影響があったと話を聞いて。自分が小さい頃はそういう活動をしている選手に憧れる立場でしたが、プロになり、発信していく立場になりました。やれることから、やっていくべきだと感じました。

―――ご自身は幼い頃にプロ選手の発信を見て、影響を受けましたか?

藤田 海外で活躍する選手の本は読みましたし、たくさん影響を受けて育ってきたと、思い返してみると感じます。自分も将来、子どもたちにいろいろなものを与えられる存在になりたいですね。

 ユース時代に年下の選手が、自分の姿勢を見てサッカーをやっていたと思いますし、見られていた存在である自分が日本代表になれば、その世代にも刺激を与えられて、ヴェルディももっといいチームになると思います。

 自分の場合は、井上潮音くん(東京ヴェルディ)や三竿健斗くん(鹿島アントラーズ)が下部組織の先輩にいて、一緒に練習することで上手さを実感していましたし、そういった選手が代表などになることで、刺激になっていました。

―――今、国内外、いろいろなスポーツ選手がメッセージを社会に発信しています。スポーツの力を感じますか?

藤田 SNSを見ていても、いろいろな方がスポーツを楽しみにしていると感じます。自分もプレー動画をSNSで発信して、多くの方にチャレンジしてもらったりしたいですけど、リフティングとか特技がないので、どうしようかなって(笑)。クラブからもお願いされることが多かったりするので、いろいろ考えています。

―――原口元気選手や柴崎岳選手のようにnoteなどで思いを発信するのはいかがですか?

藤田 文章は苦手なので、できれば違う形で考えたいと思います(笑)。

―――最後にJリーグの再開を心待ちにしているファン・サポーターへメッセージをお願いします。

藤田 リーグ戦が開幕直後に中断してから3カ月くらい経ちました。その期間が無駄ではなかったことをお見せしたいです。チームとして、個人として、成長しようとして過ごしてきたので、それを証明したいです。ファン・サポーターの方たちには、サッカーを見る楽しみがなくなってしまっていたことを忘れさせるような姿をお見せするので、楽しみにしていてください。