再放送を求める声が上がっている「3年A組-今から皆さんは、人質です-」

 SNSの誹謗(ひぼう)中傷などへの警鐘が鳴らされる昨今、菅田将暉さん演じる教師が生徒を人質に取り「最後の授業」を行うという学園ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)の再放送を求める声がSNSを中心に上がっている。SNSの“炎上”や、そのきっかけとなったフェイク動画などにまつわる強いメッセージが込められた演出が話題を呼んだほか、生徒を演じた若手俳優たちは後に数々の作品でブレークを果たしている。放送終了から1年、今なお色あせぬ“伝説のドラマ”とその魂のメッセージを振り返ってみたい。

 「3年A組」は、武藤将吾さんが脚本を務め、2019年1~3月に日本テレビの日曜ドラマ枠(毎週日曜午後10時半)で放送された学園ドラマだ。3年A組の担任教師・柊一颯(ひいらぎ・いぶき、菅田さん)が、10日後に卒業を控えた生徒を人質にとって学校に立てこもるというショッキングな設定で始まったドラマは、クラスメートで水泳の有力選手だった学園のスター、景山澪奈(上白石萌歌さん)の死の真相を巡り、生徒たちの裏の顔、そして一颯が事件を起こした理由が明かされていく。なお、5月31日現在は、動画配信サービスの「hulu」で配信されている。

 教師が教え子を人質に立てこもるという緊迫感のあるストーリー、後述する強いメッセージ性、教師役の菅田さんに加え、永野芽郁さんら生徒たちの迫真の演技もあって放送開始直後から話題を集め、午後10時半スタートという遅めの時間帯ながら、番組視聴率10.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)でスタートし、その後も高視聴率をキープ。最終話は15.4%もの高視聴率をたたき出した。東京ドラマアウォード2019の連続ドラマ部門グランプリを受賞したほか、菅田さんも主演男優賞を受賞するなど数々の賞を受賞している。

 NHK連続テレビ小説「半分、青い。」後、初のドラマ出演となった永野さん、「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の片寄涼太さん、川栄李奈さん、上白石さん、今田美桜さん、福原遥さんと、既に知名度のあったキャスト陣以外にも、萩原利久さん、神尾楓珠さん、森七菜さん、富田望生さん、堀田真由さん、大原優乃さんと、現在ドラマ、映画、CMで大活躍中の若手俳優が数多く出演。現在も新作映画やドラマのキャスト発表記事で「3年A組の●●」という見出しが付けられているケースがみられることからも、作品のインパクトの大きさが分かる。

 視聴者に強いインパクトを与え、今なお話題に挙げられる理由となっているのが、菅田さん演じる一颯が生徒たちに語りかけるメッセージだ。フェイク動画がSNSに流されたことによる誹謗中傷をきっかけに命を絶った澪奈。澪奈を救えなかったことに心を痛めた一颯は、ことあるごとに「Let’s think.(レッツ・シンク)」(考えてみよう)と生徒たちに呼びかける。さらに「過去の自分が今の自分を作る」「言葉ひとつで、簡単に命を奪えるということを忘れるな」「悪意にまみれたナイフで汚れなき弱者を傷つけないように変わるんだよ。変わってくれ」と魂の言葉で生徒たちに訴えるのだ。

 物語では、SNS炎上のきっかけとなったフェイク動画の出所や“真犯人”が二転三転するが、そのたびに生徒たちはすぐ“攻撃対象”を変えて文句を言い始めていた。一颯は、物語の終盤で、「グッと踏みとどまってクルッと頭を一周させると、パッと正しい答えが浮かぶ」を略した「グッ、クルッ、パッ」を生徒たちに呼びかけ、自制を促していた。そんな演出は視聴者の心をつかんだのか、現在でも事あるごとにツイッターではハッシュタグ「#グックルッパッ」を付けて自制を呼びかけるツイートがみられている。

 最終話で一颯は、劇中に登場するSNS「マインドボイス」のユーザーに向けて警鐘を鳴らす。振りかざした正義感と責任転嫁、ネットの論調に倣った攻撃の危険性、そしてこれらのメッセージがほとんどの人には届かないだろうという無力感とともに一抹の希望……。一颯が呼びかける姿はテレビ画面を通じて視聴者たちにもメッセージとして伝わっていた。そして「すごい刺さる」「気軽にツイートできない」「これってもうドラマだけじゃない。SNSを使う全ての人へのメッセージじゃん」などSNSには、感銘を受けた視聴者のコメントがあふれた。「Let’s think.」に「グッ、クルッ、パッ」……。現在の状況にも通用する数々の名言を生み、示唆に富んだ平成最後の傑作を、今改めて見直してみたい。