半導体市場調査会社である仏Yole Développementは、2020年のサーマルイメージャ(およびカメラ)およびサーマルディテクタ(熱検出器)市場規模をそれぞれ前年比76%増と同20%増となるとの予測を発表した。

新型コロナ対策で伸びる体温検査需要

2019年のサーマルイメージャ/カメラ市場は43億ドル規模であったが、2020年は前年比76%増の76億ドルに成長するとYoleでは予測している。特に、サーモグラフィとサーベイランス(監視)用途が3倍増と急成長する見込みだが、車載(運転支援)向けサーマルイメージャ/カメラ向けについては、まだ注目されておらず、カメラメーカーも新型コロナ対策向けに注力するため、むしろ売上高は減少するという。

  • Yole

    図1 2019年および2020年のサーマルイメージャおよびカメラ市場規模およびアプリケーションの内訳 (出所:Yole Développement)

手軽な温度測定に対する需要も増加

サーマルディテクタ市場も2019年は2億9000万ドル規模であったが、2020年には同20%増の3億5000万ドル規模となる見込みだという。人の動きを検出する用途が従来どおり最大の用途だが、売上高はほんの数%増えるにすぎない、これに対して。新型コロナ対策のローエンド温度測定用途がほぼ倍増となる8100万ドル規模に成長する見込みだという。

  • Yole

    図2 2019年および2020年のサーマルディテクタ(熱検出器)市場規模およびアプリケーションの内訳 (出所:Yole Développement)

中国製サ-マルカメラの米国への輸出は禁止

新型コロナウイルスの感染拡大が中国武漢で生じて以来、中国の多数のサーマルディテクタ・カメラメーカーはフル稼働で製造を続け、新規参入企業も続々と登場しており、まさにゴールドラッシュの様相だとYoleは報告している。

サーマルカメラメーカーの中HIKVISIONや中Dahua Technologyは、中国最大級の防犯・監視カメラメーカーだが、Yoleによると、米国は国防権限法(Natioanl Defence Aithorization ACT:NDAA)により、これらの企業のサーマルカメラを含むすべてのカメラを米国政府および関連機関や米国政府の契約納入業者が使用したりサービスを受けることを禁じているという。これらのカメラで撮影された情報が中国政府に筒抜けになる可能性があるとされている。このため、米国のカメラメーカーにとってはビジネスチャンスとなっているという。

  • Yole

    図3 グローバルなサーマルカメラビジネスの相関図 (出所:Yole Développement)

スマホに体温検出機能は搭載されるのか?

Yoleは、すべてのスマートフォンにサーマルイメージャを搭載することを提案している。「Huawei、Oppo、Xiaomi、Samsung、Appleなどの主要なスマートフォンメーカーが温度測定オプションを備えるということだ。当然、人々は新型コロナの感染について心配している。だから、自分の体温を頻繁に測定し発熱していないかチェックしたいと思っている。スマートフォンやスマートウオッチで測定できればとても便利だろう」と同社のアナリストは述べている。

中国では、国内で8億5000万人がスマートフォンを所有しており、中国の人口の60%が有している。約1%に当たる1000万人がこうした体温測定機能を備えたスマートフォンを購入するというのはそんなに無理な話ではないだろう。一部の熱検出器またはイメージャは、モバイル機器に統合できるほど小さい。これを実現するために必要なのは、熱エレルギーを電気エネルギーに変換するサーモパイルや赤外線撮像技術誤差0.5℃以下の精度、誤警報を回避するためのASIC、CMOSプロセスによる量産、迅速な温度校正とテスト、サイズの小型化、低コストだという。

また、サーマルイメージの読み取りと解釈の方法を適切にユーザーに提示することも必要だとしている。

  • Yole

    図4 スマートフォン搭載サーマルイメージャおよびサーマルディテクタ開発の提案 (出所:Yole Développement)