米空軍は2020年5月17日、無人スペースプレーン「X-37B」の打ち上げに成功した。X-37Bはこれが6回目のミッション(OTV-6)で、電気を宇宙から地球へ送電する宇宙太陽光発電や食料の栽培などの実験のほか、小型衛星の放出も予定されている。

  • X-37B

    X-37B OTV-6を搭載したアトラスVロケットの打ち上げ (C) ULA

X-37B OTV-6は、米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)が運用する「アトラスV」ロケットに搭載され、日本時間5月17日22時14分(米東部夏時間9時14分)、フロリダ州ケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇した。

飛行の詳細は明らかにされていないが、その後、米空軍とULAは「打ち上げは成功した」との声明を発表している。

投入された軌道も明らかになっていないが、これまでの運用実績や、ロケットの打ち上げ能力などから、高度300~400kmの地球低軌道で運用されるものとみられる。

アトラスVは2002年の初打ち上げ以来、今回が84機の打ち上げであり、衛星の軌道投入の失敗など明確な失敗は一度もなく、連続成功を続けている。

X-37B

X-37Bは、米空軍が運用する無人のスペースプレーン(有翼の宇宙往還機)である。

全長8.9m、高さ2.9mで、翼スパンは4.5mと、スペース・シャトルのオービターに比べるとかなり小さい。打ち上げ時の質量は約5t。背中部分にはペイロード・ベイ(貨物の搭載区画)をもち、中に実験装置を搭載して宇宙実験を行ったり、小型衛星を搭載して宇宙で放出したりといったことができる。また太陽電池パドルをもち、電力をまかなっている。

軌道変更や姿勢制御、そして大気圏の再突入や滑走路への着陸などは自律的に行うことができるほか、機体は再使用が可能となっている。

X-37はもともとNASAが開発していたが、その後国防総省のプロジェクトとなり、現在は米空軍のラピッド・ケイパビリティーズ・オフィス(Rapid Capabilities Office)が管轄している。製造はボーイングが担当した。米空軍では、宇宙で実験した装置や試料などを地球に持ち帰ることができるという特性を利用した、各種実験を行うことを目的としているほか、ボーイングでは再使用型の宇宙往還機の運用試験と位置づけている。

最初のミッション(OTV-1:Orbital Test Vehicle-1)は2010年4月に行われ、これまでに5回のミッションに成功。今回で6回目のミッションとなる。また、宇宙での滞在日数は、OTV-1では225日間だったものの、その後飛行を重ねるごとに伸び、2017年9月に打ち上げられた5回目のミッション(OTV-5)では780日にも達した。

これまでに同型機が2機製造されているが、どのミッションでどちらの機体が使われたかは明らかになっていない。ただ、外観上のわずかな違いなどといった特徴から、OTV-1、3、そして今回のOTV-6が1号機で、OTV-2、4、5で2号機が使われたものとみられる。

米空軍は長らく、X-37Bが宇宙でどのようなミッションを行っているのかについてひた隠しにしていたが、ここ最近のミッションでは、その一部について明らかにしつつあり、新開発のスラスターの試験や、新材料を宇宙環境にさらす実験、小型衛星の放出などを行ったとしている。

  • X-37B

    地球に帰還したX-37B(画像は2017年に打ち上げられ、2019年に帰還したOTV-5のもの) (C) U.S. Air Force

X-37B OTV-6ミッション

今回のOTV-6ミッションでは、機体後部に新たに「サービス・モジュール」を追加したという。もともとX-37Bの背中の部分にはペイロード・ベイがあるが、それとは別の貨物搭載区画で、米空軍によると「これにより、これまでのX-37Bミッションよりも多くの実験が可能になった」としている。

大きさや形状など詳細は不明だが、公開された写真では、不自然なまでにX-37Bの後部を写さないように加工してあることから、たとえばX-37Bから分離して自律的な運用が可能であるなど、単なるコンテナのような装置ではない可能性がある。

また、米空軍士官学校が開発した小型衛星「ファルコンサット8」を搭載しており、宇宙空間で放出する。ファルコンサット8は質量約136kgの衛星で、新開発の電気推進システムやカーボンナノチューブで作ったRFケーブル、エネルギー貯蔵用のフライホイールなどの試験を行うことを目的としているという。

このほか、NASAによる宇宙での材料の耐久実験や食料の栽培実験、米海軍研究所による電気をマイクロ波に変換し、宇宙から地球へ送電する宇宙太陽光発電の実験などを行うとしている。これらの衛星や実験装置が、ペイロード・ベイとサービス・モジュールのどちらに搭載されているか、またいつごろどの実験を行うかなどといったことは明らかにされていない。

なお、米国は2019年8月に宇宙軍を発足させたが、X-37Bはこれまでと変わらず米空軍が管轄し続けるという。ただ、打ち上げや宇宙飛行、着陸などといった運用は、米宇宙軍が担当する(責任をもつ)としている。

  • X-37B

    打ち上げ準備中のX-37B OTV-6 (C) Boeing

参考文献

USSF-7 Mission successfully launched > United States Space Force > News
United Launch Alliance Successfully Launches the Sixth Orbital Test Vehicle for the U.S. Space Force
Boeing: Air Force Academy cadets build satellite for latest X-37B mission
United Launch Alliance launches 6th orbital test vehicle for U.S. Space Force; project contains satellite built by Air Force Academy cadets > United States Air Force Academy > News Display
X-37B Orbital Test Vehicle > U.S. Air Force > Fact Sheet Display

鳥嶋真也(とりしましんや)

著者プロフィール

宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。

宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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