新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、買ってきた食品類は全て除菌シートで拭かないと落ち着かないという声も。食品からのウイルス感染予防に大切なポイントを解説します。

◆新型コロナウイルス対策で変化する消費者の買い出し行動
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、海外ではスーパーへの買い出し時に手袋をつけたり、エコバックを使わないようにしたりといった行動が定着しつつあるようです。日本のスーパーでも、お惣菜類が全てパックされた状態で陳列されたり、レジ係の方たちもビニール手袋をつけて対応をされていたりと、お店側にもかなりの変化が見られます。

そして消費者の中には、買い出しの仕方の工夫だけでなく、買ってきた食品類を保存する前に全て除菌シートで拭き清めないと落ち着かないという方もいるようです。

どれも感染予防のための工夫ですが、これらの衛生管理は食品からのウイルス感染を防ぐ上で、実際にどれくらいの効果があり、どこまで徹底すべきなのでしょうか? 管理栄養士として解説します。

◆食品にウイルスが付着している可能性はゼロではないが……
スーパーの食品からウイルスに感染するリスクはあるのでしょうか? ウイルスは生物の細胞に侵入します。スーパーには多くの人が訪れますので、食品の包装の外側や、袋詰めされていない野菜の皮などにウイルスが付着している可能性はゼロとは言い切れません。

しかし「手洗い」と一緒で、危険な量のウイルスはしっかり洗うことで洗い流すことができます。また、加熱処理をして食べる食品であれば、もしウイルスが付着していたとしてもそのまま口にして感染してしまうことはないはずですので、あまり神経質になりすぎなくてもよいのではないかと思います。

個人的には、感染予防はとても大切ですが、過剰に神経質な対策を取るのもアフターコロナを考えると少し怖い気がします。ウイルスや菌には様々なものがありますが、例えば、人間が日常生活を営んでいる場に普通に存在していて、悪いことをしない「常在菌」も数多くいます。

仮に、地球上に存在する病原ウイルスが新型コロナウイルスだけであれば、徹底的に神経質になって対応することで身の安全を守ることができますが、衛生的になりすぎることによって常在菌への抵抗力もなくなってしまうと、他の病気に罹りやすくなってしまうリスクも考えられるでしょう。

(以前病院で、免疫力が低下している患者さんにだけ罹患する「MRSA」という菌が問題になったことがありました。健康な人は全く罹患しない菌なので、看護従事者が媒介しているのでは?とニュースになりましたが、あれ以来、病院では処置する患者さんが変わるごとに手指をアルコール消毒することが徹底されています。)

◆スーパーへの買い出し時にすべき感染予防のための工夫
新型コロナの感染予防としても、特別なものはありません。買い物をするときは、普段から清潔な状態を心がけることが基本です。生鮮食品やお惣菜売り場などで飛沫を飛ばすような立ち話を控えることはもちろん、入店前に手洗いや手指消毒をしっかりするのもよいでしょう。

生鮮食品などを選ぶときに、色々なものをベタベタと触らず、自分が買うものだけを触るように気を付けることも、コロナ以前のモラルとして気を付けてほしい点です。逆に言うと、これら以上に特別なことには神経質になりすぎなくてもよいのではないかと思います。

先述の「常在菌」とほどよく仲良くしておかないと、アフターコロナに別の菌に弱くなりすぎてしまって、困りますからね。

◆買ってきた食材の消毒は不要? 帰宅後の感染予防法
感染予防として、買ってきた食品を全てアルコールで消毒したり、水道水で十分に洗ったりしないと危ないのではないか、と悩む声もあるようです。管理栄養士として食品の衛生管理には日ごろからしっかり対策していますが、やはりあまりやりすぎ、張り切りすぎも毒ではないかと思います。

家族によほどハイリスクの方がいる場合や、発症前に感染者が買ってきてしまったものでなければ、普段しないような特別なことをしすぎなくても大丈夫だと思います。通常通りの衛生管理、清潔な状態での調理をしましょう。

もしコロナで普段よりも時間があるという方は、冷蔵庫の棚やドアの取っ手など、大掃除を兼ねてきれいにすることはコロナ予防に限らず、清潔なキッチンが作れるのでオススメです。

◆過剰に神経質になりすぎず、買い出しや食事を楽しむことも大切
新型コロナウイルスは「飛沫感染」「接触感染」が主です。商品や食品自体が大きな感染源になることは通常はありません。「飛沫感染」は咳やくしゃみで飛び散った飛沫を吸い込んでしまうことで感染するため、咳やくしゃみの唾が飛ぶ距離にいなければ感染リスクを下げることができます。これが「2m離れて」という距離の理由です。

とにかく、外出する際は、お互いに人から離れることです。

今、私は買い出しなどで外出するときは、「鬼ごっこ」をしている気分でいます。自分以外の人、全員が鬼です。そして自分も、他の人にとっては鬼です。自分から2m以内に鬼が入ってきたら「捕まった」と考えます(むろん、捕まえようとは思っていませんので、鬼の自分も知らずに近づかないよう気をつけています)。

買い出しの際の衛生管理や食材の管理は、常識の範囲でしっかり行いつつ、神経をすり減らしすぎないように買い出しや食事を楽しみましょう。

◇平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

文=平井 千里(管理栄養士)