新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で、SNS上では、自宅でいかに楽しく過ごすかの「#おうち時間」や、新ドラマの放送延期を受けて様々な過去作が再放送されることで「#再放送希望」というハッシュタグが流行中だ。

そこで、テレビドラマの脚本家や監督などの制作スタッフに精通する「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏が、外出することを忘れるほど熱中してしまうおすすめのテレビドラマや、再放送してほしい思い出深い作品を紹介する。

今回は、“ホームドラマ”。昨年10月クールに放送された生田斗真主演『俺の話は長い』(日本テレビ)は、最近では珍しいホームドラマ作品だったが、巧みな会話劇と深い人間描写で、脚本を務めた金子茂樹氏が向田邦子賞を受賞するほどの良作だった。そこで、“ステイホーム”中で、家族と一緒に安心して見られるホームドラマをいくつか選んでみた。

■演出&脚本の巧さ光る…『天才柳沢教授の生活』

松本白鸚

ストーリーはもちろん、画面や音楽も楽しい、子供と一緒に見るのにもおすすめしたいホームドラマが『天才柳沢教授の生活』(02年、フジテレビ)だ。

松本幸四郎(現・松本白鸚)が主演で、山下和美原作の同名漫画を実写化した今作は、規則正しい柳沢教授とその家族たちの些細な日常を描いたホームコメディ。教授の妻に松原智恵子、長女夫婦が戸田恵子と小日向文世、次女夫婦が川原亜矢子と山口智充、三女が国仲涼子でそのボーイフレンドが佐藤隆太と、超豪華で個性的な面々がそろっている。

このドラマの特徴は、“規則正しい教授の生活”を画面上でも表現した鈴木雅之監督による左右対称の“シンメトリー演出”。特に第1話冒頭の、起床から勤務先である大学までの道中を、約14分間にわたって紹介した“柳沢教授の朝のルーティン”は、美しく整った画面構成で圧巻だ。

また、その何事もないルーティンをドラマチックに演出して盛り上げる服部隆之氏(主な作品に『HERO』や『半沢直樹』など)の音楽も、このドラマの世界観を構築する重要な要素となっている。

どの回も、小さな出来事をきっかけに物語が始まるが、最後には何気ない日常にちょっとだけハッピーがプラスされる…そんなハートウォーミングなエピソードばかり。中でもおすすめなのは、第9話の金田明夫が演じる吉田助教授が主役の回。柳沢教授宅で吉田助教授が大失態をしたある日の出来事を振り返っていくストーリーだ。

ほぼワンシチュエーションという脚本の巧さが光るお話だが、この回を担当したセカンドディレクターで、『コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』などで知られる西浦正記監督の演出にも注目。メインである鈴木監督のシンメトリー演出を踏襲しながら、それとは一味違ったコミカルな演出が随所に施されており、今のスタイリッシュな作風には感じられないファンタジックな世界観を見ることができる。

画面の作りが面白く、毎場面絵本をめくるような感覚で、子供こそ楽しめる作品になっている。夕方の再放送枠にちょうどいい作品だが、配信ではFODでも見ることができる。

■神木隆之介・有村架純らの初々しい演技も…『11人もいる!』

神木隆之介

宮藤官九郎が手掛ける一風変わったホームドラマでおすすめなのが、神木隆之介主演『11人もいる!』(11年、テレビ朝日)。5男3女の夫婦に幽霊の元妻も加わって、11人という大家族が繰り広げるホームコメディだ。

長男で主人公の神木隆之介のほか、末っ子で物語の語り部も担う加藤清史郎、長女の有村架純など、彼らの初々しい演技を見ることができる。また、親戚のおじさんで星野源も登場し、役名が“真田ヒロユキ”とかなりふざけたキャラクターで大活躍。毎回劇中の挿入歌を弾き語りで披露しており、今の雰囲気とはまた少し違ったハイテンションな演技も楽しめる。

通常のホームドラマの形式に則って、家族たち一人一人にスポットを当てた1話完結のストーリーで進行していくが、やはり宮藤官九郎脚本とあって予想だにしない衝撃の展開が終盤に待ち受けている。それは、きたろうが演じる“川越のおじいちゃん”のとある“カミングアウト”。登場人物が持つ“衝撃の秘密”という共通項で、前回紹介した観月ありさ主演『夜のせんせい』(TBS)と併せて楽しんでもらいたいエピソードとなっている。

この2作品の“衝撃”の共通点は、決して笑わせたいだけの“飛び道具”的な扱いではなく、みんなが何事もなくそれを受け入れ、そこからさらに発展してしっかりドラマを紡いでいくという点。その作劇の巧さを両作見比べながら検証するのも面白いのでは。

クドカン作品の特徴であるスピーディーな展開や、細かな伏線を徐々につないでいくパズルのようなギミックは少ないが、気軽な気持ちで楽しめる作品だ。テレ朝動画のほか、Netflix、Amazonプライム・ビデオなど、様々な動画配信サービスで視聴することができる。