観月ありさ

通常の学園ドラマとは一味違う“定時制高校”が舞台の作品でおすすめなのが、観月ありさ主演『夜のせんせい』(14年、TBS)。元スナックのママが定時制の臨時教員に転職し、そこで出会った年齢も境遇も全く異なる様々な生徒たちと交流を深めていく物語だ。

生徒役には、田中圭や高橋一生、仲野太賀(当時は太賀)、大杉漣、笹野高史、山本耕史、蓮佛美沙子、新川優愛、山本舞香、堀内敬子と、超豪華な面々がそろっており、そのキャラクター性もかなり濃い。

通常の学園ドラマと同様、各話それぞれの生徒にスポットが当たる1話完結形式で、最終回は卒業証書を思い出のエピソードとともに手渡ししていくのだが、それぞれのエピソードが珠玉の出来なので、定番のその最終回のシーンがより一層感動的な仕上がりとなっている。

そのエピソードの中でも特に印象的なのが、大杉漣演じる“ある秘密”を持った生徒が登場する第4話と、それを受けて展開される第5話。その秘密は、かなり飛び道具的で衝撃なのだが、次の回でそれをしっかり意味付けする親子の物語へと昇華していく流れが見事だ。

前クールの『トップナイフ』や『コードブルー』『医龍』など、医療モノを得意とする林宏司氏が脚本を務めたオリジナル作品だが、医療モノ以外ももっと見たいと思わせてくれる作品。安心して楽しめるので、ぜひ今でも再放送してほしい作品だが、ParaviやHuluなど各種配信サービスで提供されているので、いつでも気軽に視聴することができる。

■月9初のヒロイン公募…『ビギナー』

美村里江

学園ドラマが学びの場で繰り広げられる青春劇とするならば、美村里江(当時はミムラ)主演の『ビギナー』(03年、フジテレビ)もおすすめしたい。月9で初めてヒロインを公募し、ミムラが女優デビューを果たした作品で、司法修習生たちが通う“司法研修所”を舞台に、主婦や元キャリア官僚、元極道の内縁の妻など、様々な境遇の人々がそこで出会い、仲間となっていく青春群像劇だ。

当時新人だったミムラの脇には、オダギリジョーや堤真一、松雪泰子、北村総一朗など個性豊かな面々がそろい、友情物語はもちろん、月9らしい淡い恋愛模様も描いている。毎話登場する“事件課題”を修習生たちが議論していくという“謎解き”の要素があり、教室内で活発に意見をぶつけう会話劇は、舞台を見ているような感覚にもなる新感覚のドラマだ。

事件の中に潜む些細な事象から大きなドラマが隠されているのも特徴で、中でも心打たれるのが、このドラマで唯一2話の続きものとなった第7話と第8話の“アンパンは誰が食べた?”というエピソード。お金も家も失ってしまった夫婦の事件で、妻を殺める前に夫が買った“アンパン”に隠れていたドラマは、涙必須の物語となっている、

またその課題をきっかけに、修習生たちの友情に境遇の違いもあって亀裂が走るのだが、解決に向かうにつれて絆が一層深められ、美しく着地していく構成も素晴らしい。

通常の“学園”ではないが、他の学園ドラマにも通じる心温まる青春グラフィティとして楽しめる作品。基本的に1話完結で見やすい作品なので、ぜひ再放送してほしい作品だが、FODで配信中なのでいつでも楽しめる。