ボブ・ディラン、17分に及ぶ新曲「最も卑劣な殺人」が全米チャートで快挙

3月27日に急遽デジタル配信を開始したボブ・ディランの最新シングル「最も卑劣な殺人」がビルボード誌4月11日付のロック・デジタル・ソング・セールス・チャートで1位を獲得した。

デビューしてから半世紀以上も経つディランだが、代表曲として知られる「ライク・ア・ローリング・ストーン」「雨の日の女」などのヒット曲は、これまでビルボード最高2位に甘んじていた。78歳が歌う17分もの曲が成し遂げた快挙だ。

ディランと言えば65年発表の「ライク・ア・ローリング・ストーン」が約6分の長尺シングルとして、発売の際にアーティスト、レーベル、ラジオ局の間で物議をかもしたことで知られている。収録時間でゴタゴタしながらも、結果的にビルボード・シングル・チャートで2位を獲得したとして良く語られる話である。過去に発売された長尺ヒットシングルで有名なものはトゥールの「Fear Inoculum」で10分21秒、デヴィッド・ボウイの「Blackstar」で9分57秒。今回のシングル「最も卑劣な殺人」は、それらを大きく上回る収録時間だ。

17分に及ぶこの歌はコロナ感染が世界を暗雲が覆うように拡大する中、ディランによる「どうぞ安全に過ごされますように、油断する事がありませんように、そして神があなたと共にありますように。」とのコメントと共に公開されたもので、2012年発表アルバム『テンペスト』以来となる自作曲。第35代アメリカ合衆国大統領であるジョン・F・ケネディの暗殺から始まる。

ジョン・F・ケネディは、1961年1月に43歳で大統領に就任し1963年11月にテキサス州ダラスで暗殺される。僅か3年にも満たない在任中、東西冷戦、ベトナム戦争、公民権運動、宇宙開発競争等、激動の60年代初頭に勃発する数多くの難問をこの若き大統領が背負っていた。彼にはマフィアやマリリン・モンローとの噂などもつきまとったが、何よりも平和への希求が高く今でも人気を誇る大統領で、彼に関する数多くの映画や書物が生まれ、度重なる検証にもかかわらず暗殺された背景は今でも謎に包まれている。そんな短くも波乱に富んだケネディの、血に染まった暗殺事件からこの歌は始まり、主に六十年代に起きた数々の出来事や時代を彩ったミュージシャン、曲名をコラージュ風に投げかけ、ディランの訥々と物語を紡ぐように繰り広げるヴォーカルは静かで穏やかながら揺るぎがない。この歌は混迷を深める現在の世界状況の中で何を残してゆくのだろうか。




<リリース情報>

ボブ・ディラン
「最も卑劣な殺人」
配信中
https://sonymusicjapan.lnk.to/BobDylan_MurderMostFoul

「最も卑劣な殺人」中川五郎による全訳、注釈、作品解題はこちら
http://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/info/517403