【第8回】中古マンションを検討する際、必ず確認したい「新耐震or旧耐震」

分譲住宅の取材・記事執筆を約20年行い、住まいアドバイザーとして活動されている井上真樹さん。その取材経験を基に「後悔しない住まい選び」をテーマに、これから住宅購入を考える方に向けて経験談からのアドバイスをしていただきます。

近年、大規模な災害が頻発している日本。住まいを購入する際の防災意識は高まっています。

内閣府が平成29年に行った「防災に関する世論調査」によれば、自然災害について、自分や家族の場合に当てはめて、災害の被害に遭うことを予測したことがあるかという質問に対し、「地震」を挙げた人の割合は81.0%で最も高く、さらに、大地震が起こった場合に心配なこととして「建物の倒壊」を挙げる人(72.8%)が最も多い結果となっています(※1)。

※1:出典:内閣府政府広報室「防災に関する世論調査の概要」(平成30年1月公表)

今回は、中古マンションの購入を検討する際に必ず耳にする「新耐震」「旧耐震」について、「新耐震」の重要性と「旧耐震」の現状についてご紹介したいと思います。

今後30年以内に70%の確率で起こるといわれる「首都直下地震」

政府の地震調査委員会は、首都直下地震について、南関東域で今後30年以内に70%の確率でM7クラスの地震が発生すると予想しています。この時示された被害想定では、1都3県が震度6弱~震度6強(一部震度7)の揺れに見舞われ、約61万棟の家屋が全壊または焼失、約2万3,000人の死者が出るとされ、これに基づき、現在、被害を抑えるための防災対策が急がれています。

出典:内閣府「首都直下地震の被害想定」(平成25年12月公表)
東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 加藤孝明氏

旧耐震基準では、首都直下地震で倒壊する恐れも

ここ数年、中古マンションを購入して、室内を自分たちのライフスタイルに合わせて改修する「リノベーション」が注目を集めています。中古マンションを購入する際、まず確認したいのが、「新耐震基準適用のものか、否か」です。

建築物の安全性や居住性を確保するために定められる「建築基準法」は、1978年に発生した宮城県沖地震(M7.4)を契機に大きく見直され、1981年6月1日に改正されました。それまでの「旧耐震基準」は、震度5強程度の地震に耐えられることが基準とされていましたが、「新耐震基準」では、建物の倒壊だけでなく、建物内の人命が重視され、震度5強程度の地震に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標としています。

1995年に発生した阪神・淡路大震災(M7.3)では、最大震度7を記録し、住宅・建築物の倒壊が大きな被害を生みました。特に、1981年(昭和56年)以前の建物=旧耐震基準で建築されたものに大きな被害が発生したと報告されています。

出典:国土交通省「阪神・淡路大震災による建築物等に係る被害」
(平成7年8月発行)

上記の調査や首都直下地震で想定されている揺れが、震度6弱~震度6強(一部震度7)であることを考えると、やはり新耐震基準で建てられたマンションを選びたいところです。新耐震基準の施行は1981年6月1日ですが、ここで気をつけたいのは、竣工年月ではなく、建築確認年月であること。1981年6月1日以降に建築確認を受けているマンションには新耐震基準が適用されていますので、これを目安にしてください。

首都圏に多い旧耐震マンション

2017年12月に(株)不動産経済研究所が発表した旧耐震マンションに関する調査結果を見ると、首都圏の旧耐震マンションは6,746物件・45万1,560戸に及び、全国で現存する旧耐震マンションの56.9%が首都圏にあることがわかります。

そのうち東京都内が4,840物件・26万7,623戸、23区内は4,430物件・24万1,045戸、23区内で最多の港区には480物件・2万5,337戸があると報告されています。

東京都都市整備局が公表する東京都内マンション着工累積戸数は2018年時点で184万1,000戸なので、都内に建つ分譲マンションの14.5%が旧耐震マンションという計算になります。

耐震診断結果や耐震化・建て替え計画を確認しよう

旧耐震マンションには、超都心の、現在では得難い立地に建てられた物件も数多くあります。
新築では手が届かないけれど、築年数が経った物件であれば、予算的に手が届くと考える人も少なくないでしょう。旧耐震マンションの中にも、新耐震基準を満たすもの、耐震改修を済ませたものがあります。検討する場合は、耐震診断が実施されているか否か、その結果、耐震化の状況、建て替え計画なども確認してください。

2013年に改正された耐震改修促進法では、旧耐震マンションの耐震診断や耐震改修が所有者の努力義務として位置づけられています。また、都道府県または市町村が指定する緊急輸送道路等の避難路沿道建築物に当たる場合、耐震診断を行い、その結果を報告する義務が課せられています。

2018年3月には、東京都が旧耐震基準で建てられた建築物のうち、要安全確認計画記載建築物(特定緊急輸送道路沿道建築物)(※23区では1万平方メートルを超える建築物)の耐震診断結果を公表しました。行政区によっては、1万平米以下の建築物についても耐震診断結果を公表しています。

現在、区分所有者のいる物件について、物件名まで公表することはかなり思い切った判断だと思いますが、国や都、行政区がそれだけ耐震化について、緊急性の高いものと捉えている証でもあります。旧耐震マンションの購入を検討する際には、必ず確認することをお勧めします。

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執筆者:井上 真樹