世界で広がる産業用ロボットの活用

産業用ロボットは、「インダストリー4.0(Industry/Industrie 4.0)」の名称でよく知られている第4次産業革命の重要な要素であり、システムやリモートセンサに接続されるようになるため、IoTの重要な部分である産業用IoT(IIoT)を構成します。国際ロボット連盟(IFR)によると、2018年時点で導入されている産業用ロボットは250万台近くに上り、この数字は年間40万台以上の割合で増加しています。産業、自動車、および電気・電子分野が全稼働数の半数以上を占めており、金属・機械、プラスチック・化学、食品・飲料分野も重要なユーザーとなっています。産業用ロボットのうち約75%は、中国、日本、米国、韓国、ドイツで稼働しています。

ロボットの急速な普及は、産業分野に限ったことではなく、2018年には25万台の「プロフェッショナルサービス」ロボットが導入されています。これは、前年比60%以上の驚異的な成長率です。導入されているサービスロボットの5台に2台は、主に物流や製造業で使用される無人搬送車(AGV)に分類されます。個人および家庭用ロボット市場も同様に成長しており(同60%)、現在では約1,630万台のロボットが、清掃から教育や研究に至るまで、さまざまな作業に使用されています。

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48Vとロボットの関係性

48Vは、少なくとも一部は、一般的に使用されている最も高い安全電圧であるという事実により、多くのアプリケーションで普及が進んでいます。これにより、商用電源から給電する機器に比べ、システムの保護手段を削減でき、また(12V電源の製品と比較して)サイズを小型化できるため、重量、コスト、電力損失の削減が可能です。また、48Vで直接給電されるモーターは一般により小型であり、ロボットアプリケーションでは、関節の小型・軽量化が可能となるため、機械の効率、動作自由度、信頼性を向上させながら、重量とコストを削減できます。これにより、あらゆる業界のプロセス自動化をロボットの利用により改善する潜在的なチャンスが広がります。

48Vは、多くの車載機器に12Vよりも急速に採用が進んでいる自動車や、サーバのバックプレーン、冷却ファン、その他の通信関連アプリケーションに48V配電が使用されているクラウドコンピューティングなど、多くの最新アプリケーションで高い支持を得ています。この普及によって、48V電源用の機器やサブシステムが一般に利用できるようになり、選択肢が増えるとともに、スケールメリットによるコスト削減が可能となります。

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    図1:代表的なロボットの上位ブロック図(電源系を含む)

ロボットはかなり複雑なシステムであり、アプリケーションと機能に応じて、無線接続、イメージセンシング、位置検出、モーター制御など、多くの機能要素で構成されています。また、AC/DC変換、バッテリマネジメント、DC/DC変換、多相コンバータ、POL(Point-of-Load)型変換、リニアレギュレーション、モータドライバなど、多くのさまざまな電源サブシステムがあります。これらの各分野では、ロボットが意図した通りに動作するための効率的なソリューションが必要です。

自動車やクラウドコンピューティングシステムについて同様の機能ブロック図を見てみると、ロボットのブロック図との類似点がかなり多いことがわかります。これは他のアプリケーションの電源ソリューションをロボットに転用できる可能性があるということです。一例を挙げると、eFuseはクラウドコンピューティングで広く使用されており、ストレージメディアやファンなどの冷却装置のホットスワップが可能です。しかし、ロボットアプリケーションでは、同じeFuseをモジュール化のために使用でき、それによって機能ブロック(ツールピースなど)を、動作の途中であっても、手元の作業に応じてロボット自身で交換することが可能になります。

48Vロボットアプリケーション向けパワーソリューション

最近のロボットアプリケーションの多くは、システム全体への電力輸送に48Vバスを利用しています。一般的な12Vバスと比較すると、48Vバスでは損失を1/16に低減したり、より細くて軽いケーブルを使用できます。固定式のロボット設備では、48Vは商用電源から給電する力率補正(PFC)フロントエンドを組み込んだ電源で生成されます。ドローンや介護アシスタントなどの移動ロボットでは、商用電源に接続されるアダプタから定期的に充電するバッテリーを内蔵しています。

48Vから直接動作できる半導体はほとんどなく、通常は5Vから1V以下の電圧が必要です。ここでは非絶縁型POLコンバータが重要な役割を果たしており、より高い電圧をICが必要とするレベルに変換します。場合によっては、緩やかにレギュレートされる中間バスコンバータ(IBC)を使用して中間バス電圧(一般には12V)を生成し、POLコンバータによってこの12VをIC用の電源電圧に変換します。シングルステージ変換が好まれる傾向が強くなり、48VレールからICの電源電圧に直接変換する多くのPOLコンバータが利用可能です。

すべての電源ソリューションと同様、ロボットアプリケーション用の電源アーキテクチャには高効率、高信頼性が求められ、またロボットがその機能を発揮するために十分小型で敏捷になるように、高レベルの電力密度を提供する必要があります。これを実現する鍵は、ロボット内のさまざまな電源機能を構築するための適切な半導体を選択することです。

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ロボット用電源アプリケーション向け半導体ソリューション

オン・セミコンダクターは、ロボットアプリケーション向け高性能電源ソリューションの設計を可能にする幅広いデバイスおよび電源製品に関する専門知識を有し、それらの分野に投資を行っている企業です。

ほぼすべての電源ソリューションに使用されている最も一般的なデバイスの1つはMOSFETです。オン・セミコンダクターの幅広い製品群には、さまざまなスイッチングタイプとアプリケーション向けの複数バージョンの「スーパージャンクション」MOSFETが含まれています。FASTデバイスはハードスイッチングトポロジで高効率を提供し、イージードライブデバイスは低EMIと電圧スパイクの低減を保証するハードおよびソフトスイッチングアプリケーションの両方に適しています。

MOSFETを補完するものとして、マイクロコントローラや他のロジック回路でMOSFETを直接制御できるようにする幅広い高電圧ゲートドライバがあります。回路構成に応じて、単純な非絶縁型ドライバ(オン・セミコンダクターのNCD570xシリーズなど)を使用するか、より高機能の絶縁型ソリューションやハイサイドおよびローサイドドライバが必要になる場合があります。

インテリジェントパワーモジュール(IPM)や車載用パワーモジュール(APM)などの高集積ソリューションには多くのメリットがあります。一般に、これらのモジュールには、多相モーター駆動用の複数のMOSFETが必要なドライバデバイスと併せて集積化されています。ディスクリートソリューションと比較し、これらのモジュールではすべてのデバイスが同一基板上に実装されているため、熱性能が向上します。また、EMIを改善し、ディスクリートソリューションよりも小型・軽量のソリューションを提供しながら、より高い電流レベルを処理することができます。

これらのソリューションと併せて、オン・セミコンダクターは、eFuse、PFC IC、整流器、電流センサ、補助電源レール供給用スイッチングデバイスなど、ロボット電源アプリケーション向けの製品ラインナップ一式を提供しています。これを補完する製品として、低消費電力の通信用Bluetoothモジュールや高度なマシンビジョン用の幅広いイメージセンサもあります。

著者プロフィール

Ali Husain
ON Semiconductor
Corporate Marketing & Strategy