貯金ができない人に対して、基本的なお金の貯め方をレクチャーします。途中で挫折しない支出の管理方法とは? 節約をする上での食費や光熱費の考え方のコツを押さえましょう。FPの深野さんは「家計管理に一発逆転はない」と断言します。

◆貯金ゼロや赤字家計から脱出する方法
2019年10月からの消費増税やジワジワとした物価の上昇に加え、2020年4月からの「働き方改革」のことなど、収入も支出も受難の時代。

All About『マネープランクリニック』に寄せられたお金の悩み相談をもとに、これから普通の人が自分のお金を守る方法について、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが解説いたします。

今回のテーマは「貯金ゼロ・赤字家計からの脱出方法」です。

* * *

◆いま、赤字家計や借金を抱えている人はどうする?
深野さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦です。

清水さん:皆さんこんにちは。マネーライターの清水です。よろしくお願いいたします。

さて深野先生、マネープランクリニックで、恐らく最もベーシックな相談だと思いますが、「貯蓄がないのですが、どうすればいいでしょう?」といったものが大変多いですよね。今日はこれを取り上げてみようと思います。

具体的には赤字家計だったり、貯蓄ができなかったり。あとは借金、大きなローン(カードローン含む)を抱えている方も多いようです。そんな中でどうやってお金を貯めていけばいいのかをテーマに話していきたいのですが。

深野さん:お金を貯めることについて、マネープランクリニックはもちろん、クリニック以外でもいろいろと相談を受けています。そこで見ていると、そもそも自分自身のことをよく把握していない人が結構多いんですよね。

使途不明金があるとか、そういうことです。お金を貯めるには手段ばかりではなく、まずは自分自身、我が家の状況について把握することが一番大事だと思います。それが本当のスタートですよね。

清水さん:そうですよね。その「我が家の状況を把握する」ための基本になるのが家計管理ということだと思いますが、それが分かっていないと。

よくあるのは使途不明金があるとか、大事な支出が抜けているとか、計画的に貯めてないとかだと思います。家計管理の基本というと、まず何から手をつければいいのでしょう? やはり家計簿ですか?

◆お金が貯められない人の家計簿はスマホよりも紙ベースで!
深野さん:まずは収支を把握することが大事ですから、おっしゃるとおり家計簿ですね。家計簿というと昔ながらの紙ベースのものもありますし、今ならスマホで自動的にまとめることもできます。

それぞれ一長一短あると思いますが、お金が貯められないという方には、スマホよりも、紙ベースがおすすめです。一度、一品一品何を買ったかを細かく付けて、支出の仕分けをしてみてもいいと思うんですよ。

清水さん:なるほど。ベースからしっかり付けていくということですね。

深野さん:家計簿を付けるのは、最低でも3カ月、できれば6カ月くらいは続けてほしいです。

単月で付けても、たまたまその月に支出が多かったり、逆に少なかったりするケースがあります。だから「我が家の平均値」を把握して、そこからどうするかを考えていくことです。

清水さん:そうですよね。毎月かかる支出もあれば、不定期な支出もあるんで、それらを見落としてしまうと年間で誤差が出ちゃうということですよね。

深野さん:おっしゃるとおりですね。そこをまず把握した上で、どのような処方箋を出すか、です。マネープランクリニックにはいろいろな方が相談を送ってくれますが、私は教える立場ということで、ドクターや先生のような立場になるわけです。

例えば病気をしてお医者さんにかかるとき、ただ単に行くだけで終わりではありませんよね。「熱がある」「喉が痛い」とか、症状を言います。そこで初めてお医者さんも、「こういう薬を出しましょう」「こう対処してください」と指示を出せるわけです。

実は、お金のクリニックでもまったく同じなんです。自分自身のことを何も分からない状態で来られても、我々もどういう処方箋を出せばいいのか判断できません。

だから、まずは必ず自分自身のことを把握した上で、初めて対処法=お金を貯める手段を取れるというのが正しいのかな。そこを考えてもらわないといけません。

清水さん:自分の家計ではいくら収入があって、いくら支出があるのかが分かるからこそ、貯蓄できないということが分かってくるということですね。

そして次は節約をしてお金を貯めることになりますが、その節約の仕方に無理があると結局続きません。節約は継続することに意味がありますよね。

深野さん:おっしゃるとおりですね。節約といって思いつくのは、まず水道光熱費とか。でもマネープランクリニックで清水さんとお話ししていると、「そんなに食費を削っちゃって大丈夫か?」という方が結構いらっしゃるじゃないですか。

食費を削るのは若いときはいいかもしれませんが、それがどんどん蓄積されていくと結局体を壊してしまって、かえってお金がかかってしまうということもありますよ。

だから私は、食費はそんなに削るべきではないと思っています。もちろんそこに無駄があるなら別ですが、健康でいるためのお金は必要経費と考えましょう。使わなきゃダメですよね。それ以外の部分にメス入れるほうがいいと思います。

清水さん:ある月に節約できても、次の月でその反動で使ってしまうというケースもよくあるので、とにかく継続してできる節約を目指すのがいいですね。よく推奨されているのが、支出の優先順位をつけて、順位の低いものから削っていくというやり方です。

何でもかんでも節約モードにすると息が詰まっちゃうので、メリハリをつけるというか。使うときもあれば削るときもあるという、うまくそのバランスを取ることが大事だと、深野先生もよくおっしゃいますよね。

◆支出の中の「聖域」は、できるだけ削らない
深野さん:一番節約で簡単なのは、食費や通信費等のそれぞれの項目について、一律1割とか2割とか決めることです。でもそれは、一番ストレスがたまりやすくて続かない方法でもあります。

だからメリハリをつける。自分の支出の中で「聖域」を決めて、そこはできるだけ削らないようにします。削る場合でも、他の項目に比べて削る割合を少なくします。

そこに自動車のハンドルのような遊び部分を設けて、逆に他の部分はしっかり削っていきます。今までの経験で言うとそのほうが長続きして、お金は貯まりやすいです。

清水さん:思い切って節約して、息切れして、結局また元に戻るというパターンが意外に多いですよね。やはりメリハリをうまくつけて、節約を続けるためのモチベーション、家族での楽しみを作るということも大事なんですね。

深野さん:そうです。節約の反動で元に戻るくらいで済めばいいのですが、人によっては反動で大きくリバウンドしてしまうんです。ダイエットと一緒です。

やはりいっぺんに全てをやろうと思うと無理があると思うんですよ。一つ一つ積み重ねていって、時間をかけて我が家のベストの方法を作って、そこから貯蓄モードに加速していく感じがいいですね。

例えば電車で言うと、最初は各駅停車でいいんです。それから準急とか、急行に乗り換えていけばいい。でもお金を貯めたい人って、いきなり特急に乗ろうとするじゃないですか。そうするとやはり失敗が多くなります。

ですからできることから少しずつ、積み上げていきましょう。家計管理には一発逆転はありませんから。

地道にコツコツ、ひとつずつ積み重ねる。それができるようになったら今度は貯蓄目的設定をして、何年間でいくら貯めるか決めるとか、ステップアップをしていくようにすれば、実はそんなに難しいことはないと思うんですよね。

清水さん:それでやはり押さえておきたいのはその方法ですが、よく言われるのが先取り貯蓄です。これはやはり有効で、特に貯蓄が苦手な人は実践してほしいですよね?

深野さん:ただし先取り貯蓄も、家計の収支が分かって初めて、毎月どのぐらい貯金できるのかが分かります。分からないうちに「5万円先取り貯蓄しちゃおう」と決めると、だいたい失敗しちゃいます。

基本的には先取り貯蓄がベストですが、それを実行するまでの準備があるということを忘れないでもらいたいです。

清水さん:だから自分が貯蓄できる無理のない範囲額を設定して、それを先取りして、残ったお金でやりくりしましょうと。

深野さん:あとはそれをどうやってステップアップさせるかが、ポイントですね。まずはそこの入り口のところを考えましょう。

基礎部分がしっかりしてくれば、あとはお金を貯めるスピードを速くするとか、投資をするとか、応用の部分。だから繰り返しになりますが、いきなり応用からではなく、基礎をしっかりと固めた上でステップアップしていくことだけは守っていただきたいです。

清水さん:分かりました。貯蓄ゼロ、貯蓄ができない方の解決法としては、まずは家計を自分なりに把握して、そこから積み上げていくのが大事ということですね。ありがとうございました。

深野さん:ありがとうございました。

教えてくれたのは……

●深野 康彦さん
マネープランクリニックのアドバイスでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

●清水 京武さん
All About「マネープラン・節約」ガイド。25年にわたって1000組以上の家計診断のページづくりに携わってきたマネーライター。貯められない人でも無理なく続けられる家計管理やマネープランの作り方を解説しマネープランクリニックの原稿を担当。

文=あるじゃん 編集部