• 収録が行われるフジテレビ湾岸スタジオ=東京・青海

現在、『99人の壁』は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、収録のめどが立たない状態だという。それだけに、今回の騒動は「泣きっ面に蜂」のダブルショックとも言える。

「毎回150人前後の解答者と観覧者に加え、誘導スタッフなども含めて現場の人数は他の番組よりも多いので、新型コロナウイルスの感染が収束しない限り、収録再開できないでしょう。しかし、そういう苦しい状況はダメージコントロールの観点で見ると、膿を出し切る最適なタイミング。エキストラに限らず、視聴者の声を真摯(しんし)に受け止めつつ、これまでの課題を洗い出してリスタートを切るための自粛期間と考えればいいのかもしれません」

番組からの謝罪コメントには「現在は、企画内容や参加者の選出方法を見直して適切な手法で番組を制作しておりますが、今後、不測の事態で人数不足が生じた場合でも、その旨を明確にした上で放送する」という前向きなメッセージもあった。

「実は昨秋に、さまざまなジャンルの参加者が一堂に会す形をやめて、『百獣の知識王決定戦』『鉄道旅SP』『ディズニーSP』とカテゴリーを絞った企画にリニューアルしていました。参加者にしてみれば、同じものを愛する仲間が集結した楽しい場だけにキャンセルはされにくく、さらに関連企業の社員にも声をかけていますが、彼らも仕事の手前もあって収録を休むことはないでしょう。つまり、『100人そろえやすい形になった上に、そろわなくても正直に伝える』と宣言したことで、エキストラを使う必然性はなくなりました。しかし、『リニューアルした形が視聴者に受け入れられているか』と言えば疑問が残るだけに、再開後はさらなるブラッシュアップが求められるでしょう」

フジテレビの番組審議会で、多くのヒット番組を生み出してきた放送作家の小山薫堂氏が「フジテレビの本当に元気だった頃の匂いを感じました」、日本科学未来館の毛利衛館長も「ついに出た! フジテレビらしい時代を先取りした番組じゃないかというのを随所に感じました」と絶賛した同番組。業界での評判も高いだけに、今回の出来事で、“雨降って地固まる”となることに期待したい。

●木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本程度のコラムを提供し、年間約1億PVを稼ぐほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組に出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。