キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は4月2日、みずほ銀行、野村総合研究所(NRI)と共同で「目論見書オンデマンド印刷システム」を構築したと発表した。同ソリューションにより、投資信託の契約手続きにおけるリスク管理と生産性の向上を両立することで顧客の業務プロセスの変革を支援するという。

金融業界を取り巻く経営環境は、長期にわたる低金利政策や人口減少、収益力の低下により厳しさを増し、ビジネスモデルの変革が求められており、金融機関は金融庁の「金融デジタライゼーション戦略」に基づき、異業種連携などによる革新的なサービスの創出だけでなく、生産性向上のため業務プロセスの変革を推進している。

このような状況下において、金融機関では投資信託を扱う上で顧客本位の業務運営を行う必要があり、コンプライアンスの遵守と業務効率化の両立が課題となっている。

投資信託の勧誘や販売ではタブレットによるペーパーレス化が進む一方、交付義務のある「交付目論見書」(投資判断に必要な重要事項を説明をした書類。投資信託を販売する際に投資家への交付が義務付けられている)や「運用報告書」「販売用資料」は、顧客からの要望もあり主に印刷物で提供している。

  • 交付目論見書の運用フロー

    交付目論見書の運用フロー

各店舗では、目論見書の有効期限の確認、補充、棚卸、廃棄など人手による在庫管理負荷や旧版配布のリスクが課題となっていることに加え、各運用会社からの目論見書を一次保管する集中倉庫の保管コストや各店舗への配送コストが発生していたという。

  • 「目論見書オンデマンド印刷システム」の概要

    「目論見書オンデマンド印刷システム」の概要

そこで、キヤノンMJはNRIが提供する運用会社と販売会社間の目論見書や運用レポートなど(投信文書)のやりとりを効率化する投信文書プラットフォームサービス「FundWeb Library」から、PCレスで簡単に複合機の操作パネル上で必要なデータを参照・検索し、印刷する目論見書オンデマンド印刷システムをみずほ銀行と共同で構築した。

  • 販売会社の抱える課題

    販売会社の抱える課題

これにより、多種多様な目論見書データを一元管理し、目論見書が必要な時に必要部数をその場で出力できるようになり、常に最新の目論見書を出力することで、旧版配布のリスクを防止するとともに、倉庫から店舗への配送が不要となり、保管・配送コストの削減を実現するという。

また、ホチキス留めなどを強制することで落丁リスクを回避するほか、交付目論見書の付帯書類も自動で印刷することで配布漏れを防止するとしている。

すでに、2月にみずほ銀行の支店を含め400行(各拠点には目論見書は約80種あり、各ファンドの目論見書の有効期限は約半年)で運用を開始しており、2023年までに20行への導入を目指す。

同社では、今後もAIやIoTなどの新技術とこれまで培ってきたキヤノン独自の映像技術や画像処理技術を活かし、金融機関のデジタルトランスフォーメーションの推進と働き方改革を支援することで、金融業界向けソリューション事業の拡大を目指す考えだ。