日本の低用量ピルの服用率は欧米諸国に比べ、非常に低いのが現状です。日本人はなぜピルをあまり使わないのか。考えられる理由と、ピルを上手に活用することのメリットについて解説します。

◆日本は低用量ピル後進国? 「わずか2.9%」の低い使用率
国連の発行している『避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)』のデータ によると、日本のピル内服率は2.9%。

東アジアにおけるピル内服率は、中国2.4%、香港6.2%、韓国3.3%であり、中国や韓国と同じくらいの内服率ですが、東南アジアの国々はどうかというと、ミャンマー8.4%、ベトナム10.5%、タイ19.6%、マレーシア8.8%、カンボジア13.7%であり、日本よりもピル内服率は高い国々が並びます。

一方、欧米におけるピルの内服率は、ノルウェー25.6%、英国26.1%、フランス33.1%、カナダ28.5%、米国13.7%。欧米や東南アジアの諸国よりも日本のピル内服率は低く、まだまだ低用量ピル後進国と言わざるを得ないのが現状です。

◆日本でピルが普及していない3つの原因
日本で低用量ピルがここまで普及していないのはなぜでしょうか? ここでは大きなものとして考えられる3つの理由を挙げたいと思います。

◇承認されるのが遅かったため
1つ目の理由として、低用量ピルの承認が遅かったことが考えられます。低用量ピルが日本で承認されたのは、1999年。米国での承認から25年も経過していました。なんと、国連加盟国の中では日本の承認が最も遅かったという事実もあります。

また、承認後も認知が低く、発売された当時はホルモン量も今より多く副作用も出やすかったため、ピルはよくない・副作用がひどいなど、偏見や誤った認識が根深いと思われます。

◇購入のハードルが高いため(医師による処方のみ)
2つ目の理由として、医師による処方が必要であり、購入のハードルがやや高いことが挙げられます。低用量ピルをドラッグストアで購入できる国が多い中、日本では医師が処方しなければ、低用量ピルを手に入れることはできません。

そのため、病院を受診することができなかったり、受診を続けられなくなってしまったりすると、ピルを内服し続けることが難しくなってしまうのです。

◇避妊目的等の内服は保険適応外であるため
3つ目の理由として、避妊目的で低用量ピルを内服する場合、保険適応外であることが挙げられます。保険適応ではないため、費用は自己負担です。

子宮内膜症に伴う月経困難症と機能性月経困難症の治療目的であれば、低用量ピルの一部は保険適応ですが、それでも自費診療に比べて大きく値段が下がる訳でもありません。毎日飲み続ける必要があり、毎月2500~3500円ほどの出費がかかり続けることが負担に感じられることもあるでしょう。

◆諸外国のピル事情……薬局購入ができ低価格な国も多い
日本は処方箋が必要ですが、海外では処方箋がなくても薬局で購入できる国は多いです。背景は現在調査中ですが、海外のピル事情については「The International Consortium on Emergency Contraception(英語)」という媒体でとてもわかりやすくまとめられています。

ただ、こちらの媒体では、ミャンマーは処方箋が必要とありますが、2019年9月に訪問した際は、スーパーにある薬局コーナーで低用量ピルとアフターピルを購入することができました。

現地での実態が異なる面もありそうだと思いましたので、個人的に休日を利用して現地に赴き、まずは東南アジアから低用量ピルとアフターピルが薬局で購入できるかを確認する調査を進めています。

以下は私が実際に最近訪問した国で見た限りですのでご参考までですが、やはり日本よりも安価にピルを購入できる国が多い印象です。

・ミャンマー……緊急避妊薬:480~1250MMK、低用量ピル(3カ月分):1900MMK ※1MMK=0.076円

・マレーシア……低用量ピル:44.60RM ※1RM=24.93円

・タイ……緊急避妊薬:40~80バーツ、低用量ピル:30~400バーツ ※1バーツ 3.38円

・インドネシア……緊急避妊薬・低用量ピルともに薬局では購入できず

・香港……緊急避妊薬:150香港ドル、低用量ピル:130.60香港ドル ※1香港ドル=14.12 円

※参考レートは2020年3月20日時点のもの

◆日本人女性も正しく理解したいピルのメリット
ピルに関しては様々な考え方があると思いますが、以下のようなメリットがある点を正しく知っていただければと思います。

◇月経不順の改善
月経周期が規則正しくなるため、月経不順が改善されます。

◇月経前症候群(PMS)症状の緩和
低用量ピルを内服することで、常に女性ホルモンのバランスを一定に保つことができるため、生理前のイライラや落ち込み、倦怠感といった症状から解放されます。

◇月経痛や月経量の軽減
低用量ピルを内服すると、子宮内膜の増殖が抑えられるため、プロスタグランジンの量は減少し、月経痛が改善され月経量も少なくなります。月経痛を我慢しなくてすみ、貧血も予防できるというメリットも。

◇高い避妊効果が
継続して1年間ピルを内服した場合の妊娠率は0.3%と、最も避妊効果が高い避妊法と言えます。

外れたり破れたりといったアクシデントも起きやすいコンドームは女性主体で避妊するのは難しい面もあります。コンドームは性感染症予防には必須ですが、避妊効果としては低用量ピルには劣るのです(※ヘルスケアラボ「避妊」より)。

低用量ピルの内服による避妊は、女性主体でできる避妊法であり、低用量ピルの内服とコンドームをあわせて使用すれば、より確実に避妊と性感染症予防をすることができます。

◆ピルに関心がある方は、婦人科や女性内科の医師に相談を
日本人女性の低用量ピルの使用率がまだ非常に低いことは冒頭で解説した通りです。一方で諸外国では多くの女性がピルを上手に活用しています。

解決したいことや、ピルへの関心はあるけれど、実際に試したことがないという方は、一度、婦人科や女性内科の医師に相談してみるのがよいでしょう。毎月の月経に振り回されるのではなく、低用量ピルを内服し、上手にホルモンをコントロールをしてみてはいかがでしょうか。

◇山本 佳奈プロフィール
滋賀医科大学卒業後、南相馬市立総合病院、ときわ会常磐病院を経て、ナビタスクリニックにて診療にあたる。医療ガバナンス研究所研究員。東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザーを務める。企業の商品開発・監修、健康問題に関するセミナー、講演、書籍などを通じ、特に女性特有の健康管理に関する情報の解説、啓発に尽力している。

文=山本 佳奈(医師)