シグマが2019年に発売したLマウントミラーレスカメラ「SIGMA fp」、フルサイズセンサー搭載機としては圧倒的に小型軽量のボディと、個性的なスクエアなフォルムが写真ファンの注目を集め、ロングヒットを続けています。

fpのヒットを受け、Lマウントの交換レンズも続々と登場しています。今回は、ミラーレスカメラ専用設計として描写性能を高めたシグマの超広角ズームレンズ「14-24mm F2.8 DG DN」を組み合わせて試してみました。コンパクトなfpに装着しても意外にサイズ感はよく、シグマらしくとてもシャープな写りでした。

  • シグマのLマウントミラーレス「SIGMA fp」に装着した超広角ズームレンズ「14-24mm F2.8 DG DN」。実売価格は税込み14万円前後

「大きく重い超広角ズーム」の常識を覆すサイズ感

14-24mmでF2.8という大口径の超広角ズームレンズは、現代のズーム主体のレンズ構成では欠かせない存在となっています。どのような状況でも広大な範囲を確実に写し取る画角と明るさは、スナップや風景、スポーツなど、多くの分野で求められます。

しかしながら、これまで各社から登場した一眼レフ用の超広角ズームレンズは、まるで「出目金」のような巨大で湾曲した前玉を備えており、かなりの重量もあって携行性が高いとはいえない代物ばかりでした。

そこに登場したのが、この14-24mm F2.8 DG DNです。一眼レフからミラーレスになると、特に広角レンズが小型化と軽量化の恩恵を受けやすい、といわれていましたが、それをしっかりカタチにしたお手本のレンズといえます。手にすると「これで14-24mm? しかもF2.8!?」と誰もが驚くはず。重さは795gで全長や最大径も抑えられ、fpに装着してもそんなに違和感がありません。それくらい小さいレンズなのです。

  • メーカー純正の一眼レフ用超広角ズームと比べると、とてもコンパクトな設計に驚く

小型軽量にしても光学設計に抜かりはありません。描写はとても精細で、どのような被写体でも確実に解像してくれる実力を持っています。14mmワイド端から24mmテレ端まで、画面中央から四隅まで満足のいく写りが得られました。シグマ独自の「ナノポーラスコーティング」のおかげで、クリアで気持ちのいいヌケ感を備えつつ、ゴーストとフレアの発生も抑えています。

操作性についても、レンズ鏡筒に「AFLボタン」を備え、さまざまな機能を割り当てることが可能。レンズの後玉にはリアフィルターホルダーを装備し、超広角レンズながら各種フィルターが使えます。

ボディを小型軽量に抑えられるフルサイズミラーレスの魅力を最大限引き出せる、新世代の超広角ズームレンズといえるでしょう。

  • ワイド端の14mmで撮影。ハイライト部からシャドウ部までの豊かなディテールと、ゆがみのないまっすぐな直線が気持ちのいい写りです。超広角レンズの醍醐味を体感するのにピッタリのレンズです

  • 24mmのテレ端にズームして、同じ場所でfpのシャッターを切りました。クリアなヌケ感がいい印象です。超広角から広角までカバーできるこのレンズは、レンズシステム構成上欠かせない1本といえるでしょう

  • 軽量コンパクトで取り回しは実に良好で、fpとの組み合わせでも使い勝手は良好。横位置はもちろん、このような縦位置撮影でも問題なくホールドできます。レンズサイドに設けられた「AFLボタン」も使いやすいと感じました

  • 見事なまでの直線の描写とコントラストの高い写りは、実にシグマらしいと感じます。fpのカラーモード「ティールアンドオレンジ」で橋梁を走り去る東海道新幹線を撮りましたが、独特の色合いと空の落ち方が何ともいえません

  • fpに装着して各所を撮り歩きましたが、軽さのおかげで疲れ知らずでした。手が覚えている従来の14-24mmレンズのサイズ感とのギャップに、最初のうちは戸惑ったほど。しかし、少しするとすっかり手になじんできました

  • よく訪れる小田原の古民家カフェを撮影。このパースペクティブとボケ感、そして「ティールアンドオレンジ」の色味が、実に素晴らしいハーモニーを奏でてくれました。店の雰囲気を確実に写し取りつつ、さらにムーディーに演出してくれました

  • 日が沈んで美しいグラデーションを見せる海と空にカメラを向けました。わずかに残るハイライトから、浜の暗部までの連続感や波の泡のシルキーな表現に驚きました。このワイド感でこの明るさは、fpユーザーなら手に入れたい1本となりそうです