マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」のなかでもゲーミングノートPC「G-Tune P3」はユニークな製品だ。”ゲーミング”というだけあってやや重量はあるが、13.3型のモバイルサイズに10時間駆動のバッテリー、そして目玉はライバル同士のメーカーのチップが混載されたあのCPUを搭載しているところだ。

  • モバイルできるゲーミングノートPC「G-Tune P3」

「Kaby Lake G」Core i7-8709Gでゲームや映像に強い

  • 出先で見かけても「モバイルノート」

上の写真は、G-Tune P3をカフェテーブルに置いた時のものだ。一見すればよくある普通のモバイルシーン。ベースがゲーミングノートなので性能は一級品、だからビジネスソフトも快適だ。しかし、帰宅してみれば「ゲーミングノート」に早変わりする。

  • 家に帰れば「ゲーミングノート」

G-Tune P3が搭載するCPUはIntel Core i7-8709G。型番を見て「少し古いのでは?」と思われた方は正しい。Intelの第8世代Coreモデルだ。しかし、開発コードネーム「Kaby Lake G」と言えば思い出す方も多いだろう。これは、IntelのCPUにAMDのGPU「Radeon RX Vega M GH」をパッケージしたCPUだ。CPUのスペックとしては4コア8スレッド、動作クロックは定格が3.1GHz、ターボ時が4.1GHz。Kaby Lakeのスペックとしては4コアが上限。現行第10世代では6コアのComet Lakeもあるが、もう一つの第10世代Ice Lakeは4コアなので、実質的に大きな差はない。一方、Ice LakeはGPUにIris Plus Graphicsを採用することで3D性能を大きく向上させているが、Kaby Lake Gの搭載するRadeon RX Vega M GHはさらに強力だ。

  • CPUはCore i7-8709G。IntelのCPUダイとAMDのGPUダイをパッケージ化した「Kaby Lake G」だ

GPU機能のメインはRadeon RX Vega M GHで、GPUコアは24基、シェーダーは1536基、GPUクロックは1190MHzといったスペックだ。また、204.8GB/sという広帯域のHBM2を「High-Bandwidth Cache」として4GB搭載している。ただし、高性能であるということは消費電力が増える。Core i7-8709Gのおもしろいところは通常の統合GPU「Intel HD Graphics 630」もEnableのままなところだ。モバイル時などでは統合GPUを利用することでバッテリー駆動時間を延長でき、家庭や職場などACアダプタ駆動時でも非3D用途などでは統合GPUを利用することで省エネかつ発熱を抑えられ、静音などにもつながる。

  • GPU機能はCPU統合のものとパッケージ内に収められたRadeon RX Vega M GHの両方が利用可能

ほか、映像を楽しみたい方にもいくつかメリットがある。2つのGPUを搭載しているため、ハードウェアトランスコード機能のIntel Quick Sync VideoやAMD VCEが両方とも利用できることに加え、24pや30p映像を60p化しスムーズに再生するAMD Fluid Motionも利用できる。

  • 両GPUのハードウェアエンコーダー、RadeonのFluid Motionも利用可能

一般的なゲーミングノートPCでは、AMDやNVIDIAの単体GPUチップを搭載することが多い。G-Tune P3の搭載するCore i7-8709Gの場合は、これと同じことをCPUパッケージ内で実現している。異なるのは性能レンジだ。3D性能に関しては、単体GPUチップ>Core i7-8709G>一般的な統合GPUになる。ゲーミングノートPC視点でG-Tune P3を検討する場合、これが遊べるタイトル、快適にプレイ可能な画質設定の参考になるだろう。

もう一つパッケージ化されたことの特徴を挙げるなら冷却面だ。単体GPUを搭載する場合、CPUとGPU、二つの発熱源がある。パッケージなら発熱源は一つで済む。G-Tune P3がコンパクトなボディを実現できたヒミツはこのあたりにあるだろう。

そのほかのスペックを見ていこう。まずメモリはDDR4-2400で16GB。CPUの世代が古いためにクロックはやや低めだが、容量は標準構成でも多めにとられている。ただし増設は不可だ。

  • メモリは16GBと標準構成で十分な容量。もちろんデュアルチャネル

次はストレージ。ここはカスタマイズ可能なので容量や製造メーカー、接続インターフェースなどを選択できる。ハイエンドスペックなので選択肢はどれもM.2 NVMe SSDで、Serial ATA 3.0接続のものは用意されていない。標準構成では512GBのPCI Express 3.0 x4接続SSD。評価機の場合はこの構成でADATAの「SX6000PNP」が搭載されていた。グレード的にはメインストリーム向けのSSDで、シーケンシャルリードは2GB/s級。今時としては控えめだが、もちろんその分コストメリットがある。なお、2台目のSSDを選択する項目はないので、カスタマイズ時には1台で十分に足りる容量を選ぶのがポイントになる。

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  • CrystalDiskMark

13.3型ボディで実現したモバイルなゲーミングノート

冒頭で述べたとおり13.3型の本製品はとてもコンパクトだ。ただし厚みはモバイルノートのなかでは厚め。ただ、数値で言えば統合GPUの一般的なモバイルノートにプラス2~4mm程度なので、バッグへの収まりなどへの影響はそこまで大きくない。重量もやや重いが、統合GPUのモバイルノートが1kg少々まで軽量化されることが増えた今だから感じることだろう。フットプリントが小さい分だけ、視覚的、金属の質感的、重心的にずっしりと感じるのかもしれない。

具体的な数値としては、サイズが307×215×19.9mm、重量が約1.7kgだ。サイズを見ていただければ分かるように、幅×奥行きのフットプリントは一般的な13.3型モバイルとほとんど変わらない。狭額縁パネルを採用しているため、2~3世代古い13.3型ノートと比べればベゼルの分小さく、バッグに入れるにしても余裕が生まれるだろう。

  • フットプリントはコンパクト。スラッシュカット風の前後デザインで奥行きは多少長めに感じられる

  • 実測では1.697kg。モバイルのギリギリライン

液晶ディスプレイは解像度が1920×1080ドット。表面はグレアタイプで映り込みはけっこう激しい。パネル駆動方式は明かされていないが、TNのような色味の変化はほぼ見られず、斜めから見た際に輝度がわずかに変化するように感じる程度だった。ただしパネル駆動方式ではなく表面コートの影響も考えられるので断言できない。いずれにせよ、色味・発色は十分によいもので、普段の用途やゲームにおいては問題にならないだろう。

  • パネルの発色や視野角は十分

パネル部分でもう一つ特徴的と言えば、下部ベゼルかもしれない。狭額縁ベゼルの本製品は、左右に関してはごく狭く、上部に関してはそれよりもやや広いとしてもWebカメラを搭載していることが理由で、従来のものと比べれば狭い。一方、下部ベゼルはデザイン的には狭くある必要がないものの、本製品ではかなり高さを稼いでいる。トレードオフとして本体奥行きが大きくなっているが、パネル自体が少し高い位置になるため一般的な高さの机の上に置いた時、首への負担が軽いように感じられた。

  • 下部ベゼルが大きめなので、ディスプレイが多少遠く高い位置になる

インターフェースは左側面が電源入力、USB 3.0×1、ヘッドホン用端子、右側面がUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3、DisplayPort Alt Mode対応)、HDMI、USB 3.0×1。そのほか無線LANとしてWi-Fi 6/Bluetooth 5対応のIntel Wireless-AC 9260を搭載している。

  • 左右側面のインターフェース

やや右側面寄りのインターフェース配置だが、USB Type-A端子が両側面にあり使い勝手はよい。たとえば有線マウスを接続するにしても、利き手に合わせて左右どちらにも接続できる。また、USB Type-C端子はThunderbolt 3に対応している。Thunderbolt 3はUSB 3.1よりもさらに高速で、将来のUSB 4.0のベースとなるテクノロジだ。外付けSSDなどを接続する際、あるいは10GbEアダプタを接続する際に活用できる。同時に、Thunderbolt 3からDisplayPort映像出力もサポートしている。HDMI端子も備えているので、液晶パネル、HDMI、Thunderbolt 3で3画面マルチディスプレイを構築可能だ。

  • Thunderbolt 3を搭載しているので高速の外付けSSDも接続可能。DisplayPort出力も可能だがUSB PD入力には対応していない

先に紹介した下部ベゼルの大きさもあって、キーボード面にはかなりゆとりがある。タッチパッドの大きさは13.3型ノートとしてはかなり広く感じることだろう。電源ボタンはキーボードの奥側中央。少しゲーミングノートらしいデザインだが、らしい部分はここと天板のG-Tuneロゴくらいだ。

  • キーボードレイアウトはクセがほとんど見られず慣れるのも難しくない

  • 電源ボタンは少しゲーミングノート風

  • スペースキー+無変換/変換キーほどの幅があるのでゆとりをもって操作できる

キーボードは80キーの日本語配列。レイアウトを見ると13.3型なりに一部省かれたキーや幅の狭いキーがあるものの、そこまで特殊というものでもない。主要なところではスペースキー横の無変換キーは変換キーと併用に、右Altと右Ctrlが省かれている。代わりにスペースキーが幅広なのでどちらが便利かというトレードオフの関係だ。ゲームプレイに最適化されている印象だが、通常用途においてもそこまで大きな影響はないだろう。

ほか、Home、End、Page Up、Page Down、Insert、Print ScreenなどがFnキー併用となっているが、これはモバイルノートPC用キーボードでは一般的。幅が狭いキーも基本的には記号キーであり、それもメインのキーと比べて大幅に狭いというほどではない。右Shift もやや幅が狭く感じるが、おおむねEnterキーの幅に準じているので押し間違いは少なかった。

  • キーボードにはLEDバックライトも。ホワイトLEDがほのかに光るタイプでハデさは控えめ

ACアダプタはやや大きめの180Wタイプ。Core i7-8709Gは、通常のCPU+AMDのGPUという構成なので、その分TDPが大きく100Wという設定になっている。システムの電力を加えれば、確かにこのくらいの最大出力が必要になるだろう。バッテリー駆動時間は公称で10.2時間。PCMark 10のBattery Test、Modern Officeシナリオを用い、電力設定を「より良いバッテリー」とした際の結果は7時間53分だった。もちろん、GPU機能はIntel HD Graphics 630側を利用することになるので、ゲーム性能最大のままこの長時間駆動が可能なわけではないが、通常作業でこのくらいの時間、作業が継続できれば十分にモバイル可能と言える。

  • ACアダプタはやや大きい。出力180Wだが最近のACアダプタらしく一昔前の弁当箱サイズよりは小さい

  • PCMark 10、Battery Test、Modern Officeシナリオの結果は8時間弱