最後の第1世代ドラゴン補給線が打ち上げ

米国の宇宙企業「スペースX」は2020年3月7日、「ドラゴン」補給船運用20号機(SpX-20)を搭載した、ファルコン9ロケットの打ち上げに成功した。ドラゴンは9日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、補給物資を送り届けた。

第1世代のドラゴン補給船の飛行は今回が最後となり、今秋からは有人宇宙船の「クルー・ドラゴン」を改造した、新型の補給船が登場する。

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    国際宇宙ステーションに到着したドラゴン補給船運用20号機。この姿が見られるのはこれが最後となる (C) NASA

ロケットは日本時間3月7日13時50分(米東部標準時6日23時50分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションから離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから9分35秒後にドラゴンを分離し、所定の軌道に投入した。

その後、ドラゴンは軌道変更をしながら徐々にISSへ接近。そして9日19時25分に、ロボット・アームによって捕まえられ、ISSに到着した。このあと、搭載している補給物資を運び出す作業が行われたのち、ISSで生み出された成果物などを載せ、4月6日に地球に帰還する予定となっている。

今回飛行した機体は、2017年と2018年にも飛行しており、今回が2回目の再使用による3回目の宇宙飛行となった。

ドラゴン補給船の最大の特徴は?

ドラゴン(Dragon)は、スペースXがNASAの計画の下で開発した、無人の補給船である。

NASAは2006年に、ISSへの物資の輸送を民間企業に委託する計画を発表。審査を経て、スペースXとオービタル・サイエンシズ(現ノースロップ・グラマン)の2社を選定し、資金提供してロケットと補給船の開発を支援した。それにより、スペースXはファルコン9とドラゴンを、ノースロップ・グラマンは「アンタレス」ロケットと「シグナス」補給船を開発した。

そして完成後、NASAはCRS(Commercial Resupply Services)という計画の下で、両社にISSへの物資補給ミッションを発注。NASAが運賃を支払い、両社はその対価としてロケットを打ち上げて物資を補給する、まさに宇宙の宅配便のようなサービスが実現した。

スペースXによる補給ミッションは2012年10月から始まり、2015年にロケットの打ち上げ失敗で補給できなかったものの、今回までに19回のミッションが成功。また、ノースロップ・グラマンも2014年1月から補給ミッションを開始し、同年10月に打ち上げ失敗事故を起こすも、これまでに10回のミッションに成功している。

ドラゴンは全長約6.1m、直径3.7mで、機体は与圧されたカプセルと、非与圧のトランクの2つの区画に分かれており、両区画合わせて最大6tの物資をISSへ運ぶことができる。また、カプセルは大気圏の再突入に耐え、地球に帰還できる能力をもち、最大3tの物資を持ち帰ることができる。

そして最大の特徴は、カプセルのうち、耐熱シールドやバッテリーなどを除く大部分が再使用できる点で、これにより運用コストの低減が図られている。2017年7月に打ち上げられた運用11号機(SpX-11)ミッションにおいて、2014年に運用4号機(SpX-4)ミッションで飛行したカプセルを再使用したのを皮切りに、2017年12月の運用13号機以降は、すべて過去に1~2回飛んだ機体が再使用されている。

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    ドラゴン補給船運用20号機(SpX-20)を搭載したファルコン9ロケットの打ち上げの様子 (C) SpaceX

2020年秋には新型ドラゴン補給船が登場

CRS計画における物資補給契約は第1期と第2期に分かれており、第2期の始まりにあたっては、実施業者の募集と審査があらためて行われることになった。

この第2期の募集では、スペースXは従来のドラゴンではなく、有人の「クルー・ドラゴン」宇宙船を活用した、新型の「カーゴ・ドラゴン」補給船を提案。そして2016年に契約を勝ち取った。

クルー・ドラゴンは、従来型のドラゴン補給船をもとに開発されたものの、その姿かたちは大きく変わっており、したがってカーゴ・ドラゴンの姿も従来型とは大きく変わる。

また、クルー・ドラゴンもカプセルを再使用することができるが、NASAは再使用したカプセルに宇宙飛行士を乗せることに難色を示しているとされる。そのため、有人飛行には新規製造した機体のみを使い、再使用する2回目以降の飛行はカーゴ・ドラゴンとして使うという形で運用されるという。なお、再使用回数は5回程度になるとしている。

宇宙船から補給船への転用にあたっては、機体構造をはじめ、スラスターや通信機器、航法誘導制御システムなどはそのまま流用する一方で、貨物を搭載するため、座席や生命維持システムを取り外したり、ソフトウェアを改造したりといった改修が加えられる。

さらに、従来のドラゴン補給船はカリフォルニア沖の太平洋上に着水していたが、カーゴ・ドラゴンはフロリダ沖の大西洋上に着水する。これにより、ISSから持ち帰ってきた物資の回収、分析や、次の打ち上げまでにかかる時間を短縮できるという。

なお、従来型のドラゴン補給船は、ISSとの結合に共通結合機構(CBM)を使っていたが、クルー・ドラゴンやカーゴ・ドラゴンはNASAドッキング・システム(NDA)という機構を使う。CBMは自動ドッキングができないものの、ハッチ径が大きいという特徴をもち、NDAは逆に径は小さいものの、自動ドッキングができる。

カーゴ・ドラゴンの初飛行は2020年の10月以降の予定で、2024年までに最低6回の補給ミッションを行うことが定められている。ちなみに有人型のクルー・ドラゴンは、2019年3月に無人での試験飛行に成功し、今後数か月以内に有人での試験飛行を行う予定となっている。

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    2019年3月に行われたクルー・ドラゴンの無人飛行試験の様子 (C) NASA

なお、第2期CRS契約では、スペースXに加え、ノースロップ・グラマンも引き続き選定されており、すでに2019年11月から第2期契約に基づく補給ミッションが始まっている。

また、新たにシエラネバダも選ばれており、同社が開発中の無人の小型スペース・シャトル「ドリームチェイサー」を使い、2021年から補給ミッションを行う計画となっている。

参考文献

SpaceX Dragon Heads to Space Station with NASA Science, Cargo | NASA
DRAGON RESUPPLY MISSION (CRS-20) LAUNCH | SpaceX
DRAGON ARRIVES AT THE INTERNATIONAL SPACE STATION | SpaceX
NASA Awards International Space Station Cargo Transport Contracts | NASA
CRS-20 - Final Dragon 1 arrives at the ISS - NASASpaceFlight.com

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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