安倍首相の実弟、岸信夫議員が語る政治と家族(1)「子供の時から家庭にプライベートはなかった」

祖父は第56・57代 内閣総理大臣の岸信介、兄は現・内閣総理大臣の安倍晋三。現在、自由民主党山口県支部連合会会長を務めている岸信夫衆議院議員。月刊誌『月刊エンタメ』の人気連載「栃木県生まれの眉毛ガール 井上咲楽の政治家対談」。今回は岸信夫議員に、実兄や祖父が総理大臣という政治家庭ならではの苦労を聞いた。(4回連載の1回目)

※取材は2020年2月12日に行いました。

井上 新聞の首相動静を読んでいると、岸さんのお名前がたびたび出てきます。安倍首相とご兄弟なんですよね。プライベートでもお会いする機会は多いんですか?

岸 そうですね。ただ、総理も忙しい方なので、なかなかゆっくりとは難しいですけど。それでも正月の間や夏休みは、ゴルフに行ったり、お互いの家族と一緒に夕食を楽しんだりしています。

井上 仲良しの兄弟なんですね。

岸 とはいえ、この年齢になると皆さんそうだと思いますけど、どんなに仲が良くたってなかなか会う機会は少なくなっていきますよ(笑)。

井上 兄弟で名字が異なるのは、岸さんが安倍晋太郎さんの三男として生まれてすぐ岸家に養子に出されたからだと聞きました。しかも、ご本人がその事実を知ったのは、大学入学の準備中だった、とか?

岸 高校3年のときでしたね。大学に合格して、入学のための書類を自分で書いていたんですよ。そこで戸籍謄本を取り寄せたら、「養子」と。単純にびっくりしましたね。誰も言ってくれなかったので、そこで初めて気が付いたんですね。

井上 同時に安倍さんがお兄さんだったと知ったわけですか?

岸 私は両親とともに東京で暮らしていたので、いとことしてお互いの家に行ったり来たりしていたんです。ただ、安倍家と岸家のつながりは密なので、一般的ないとこ同士よりは会う回数は多く、私からすると高校生になっても、仲の良い親戚のお兄さんでした。それが急に兄弟だと分かって、混乱はありましたよ。だって、叔母さんがじつはお母さんで、お父さんが伯父さんだったわけですしね。自分の中で気持ちの整理が付くまでしばらくかかりました。

井上 接し方も難しそうだなと想像しちゃいます。

岸 そうですね。だから、兄弟ではあるんですけど、どちらかというと、今もいとこ同士みたいな接し方になっているかもしれないです。というのも、私自身は岸家の人間だし、兄は安倍家の人間ですからね。



井上 息子さんはテレビ局で記者をされていると聞きました。政治家になって欲しいなと思うことはありますか?

岸 それは本人の気持ちですから。親がどうこう言うことではありません。僕自身も政治一家に育って、40代になるまで一度も「政治家になりたい」と思わなかったですからね。

井上 間近にいる家族から見ると、政治の世界はやはり大変そうだからですか?

岸 うちの場合、祖父が政治家(第56・57代内閣総理大臣の岸信介氏)で、岸家の両親は政治家ではありませんでした。それでも私が小さい頃は祖父と同じ家で暮らしていましたから、一般的な家庭とは違う雰囲気がありました。

井上 というと?

岸 たとえば、朝起きると、家の中に知らない人がいっぱいいて、朝ごはんを食べているんですよ(笑)。

井上 え~!?

岸 信じられない環境かもしれないけど、それが普通のことでプライベートはない家庭だったんですよね。

井上 家の中に知らない人がいて、イヤだな~という感覚は?

岸 少しはあったかもしれないですね。でも、おじいちゃんは家の中では普通のとっても優しいおじいちゃんでしたから。一度、外に出るとなかなか戻ってこないことが、さびしかったのを覚えていますね。にぎやかなのは慣れるものです。

井上 そうなんですね。

岸 他を知らない小さい頃ですからね。その後、祖父が引っ越して別の家に住むようになってから、いわゆる普通の家庭環境になり、これもいいなと思いました。両方を経験してみて思うのは、政治家になるというのは本人にとっても大きな決断ですが、家族を巻き込む選択でもあるということ。だから、息子がどういう人生を歩むかは、自分で決めてもらいたい。そうじゃないと後悔することも多いですからね。

※インタビュー(2)「出馬そのものが義父との公約違反だった」はこちらから。

(文/佐口賢作)
▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura

▽岸信夫(きし・のぶお)
1959年4月1日生まれ、東京都出身。自由民主党所属の衆議院議員。住友商事を経て2004年の参議院選挙で初当選。2012年に衆議院議員に。外務副大臣などを歴任し、現在は衆議院議院運営委員会筆頭理事。