なぜPCR検査は時間がかかるのか

島津製作所は3月4日、試料からのRNA抽出工程を省くことで、検査の省力化・迅速化を可能とする新型コロナウイルスの遺伝子検出試薬キットの開発に着手したことを発表した。

感染拡大が続く新型コロナウイルスの検査は2020年3月初旬時点では遺伝子増幅法(PCR法)が用いられているが、対象者の鼻や咽頭から拭った液などの試料からRNAを抽出して精製する工程が欠かせない。

このRNA精製には複雑な手作業で進める必要があり、1件あたり約30分かかると言われている。

DNA/RNA精製工程を省略する方法

「新型コロナウイルス遺伝子検出試薬キット」は、独自の遺伝子増幅用試薬で、たんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制し、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できるようにすることで、勘弁かつ迅速なPCRを可能とするAmpdirect技術をベースに、国立感染症研究所のマニュアルの記載に従って開発を進めているとのことで、試料と前処理液を混合し、RT-PCR用の反応試薬を添加して反応させるだけで、ウイルスの有無が判定できるようになるとしている。

なお、同キットについて同社では月産数万検査分の供給体制の早期確立を目指すとしているが、あくまでも研究用試薬であり医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証などはを受けていないという。また、同試薬の使用には、遺伝子の増幅や検出を行うPCR装置および試料・遺伝子の取り扱い技術を要するため、個人やドラッグストアなど小売店への販売は予定していないとしている。