隠岐の島町教育委員会と島根県立大学、OKIグループのOKIワークウェル(OWW)は3月4日、1年間の実証実験を経て「離島教員の特別支援教育の専門性を持続的に向上させる遠隔研修モデルの構築」に成功したと発表した。

今回の実証実験は、隠岐の島町立小中学校の特別支援教育に関わる教員13人を対象とした「OKIアイランドプロジェクト」として昨年4月から実施し、島根県立大学で特別支援教育の専門教員の西村健一准教授による教育現場の課題解決に役立つ研修を、OWWのバーチャルオフィスシステム「ワークウェルコミュニケータ クラウド」を活用して、6回にわたり遠隔で実施。

研修の中で西村准教授は研修のファシリテーターとして、単なる講義に留まらない専門的な助言も行い、参加した教員は各学校にいながら、学校現場における特別支援教育の専門性や現場解決能力の向上につながる学習をすることができたという。

  • 隠岐の島町での研修風景

    隠岐の島町での研修風景

実証実験を通して構築した「離島教員の特別支援教育の専門性を持続的に向上させる遠隔研修モデル」は、離島のすべての小中学校と専門家をICT技術で結び、全員が自身の勤務校から参加するところに特徴がある。

各学校だけでは対応が難しかった事例を、専門家とともに「問題行動の特定」→「行動の原因分析」→「支援方法の特定」という流れに沿って段階的に話し合うことで、全員が支援の根拠を理解し、教育現場で実施可能な支援方法をともに導き出し、共有することを可能としている。

参加した教員は遠隔研修を通じて最新の指導方法などを学ぶことにより、特別支援教育の専門性を高めることができたほか、他の教員との「学び合い」を西村准教授がファシリテートすることで、効果の高い支援方法を教員同士で見つけることができたという。

また、従来は各学校から教育委員会に相談していた解決困難事例について話し合うことで、各学校で実施可能な具体的支援策の立案・実施までを教員同士で行うことができるようになるなど「現場解決能力」を高めることもできた。

具体的な研修事例として、テーマは「友達とのかかわりの中で衝動的・攻撃的な行動がある子どもについて」で、研修の流れは子どもの抱える一番の課題を洗い出し、課題の原因には本人の「言葉での表現の難しさ」があるのではないかとの仮説を設定、原因解決のための支援アイデアについて参加者全員で意見抽出、参加者からの意見に合わせた西村准教授からの助言(スクリプト(台本)による会話スキル獲得支援をしてみてはどうかとのアドバイス)となる。

研修後に校内でクールダウンの方法の検討や、スクリプトを活用した会話スキルの獲得などを具体的に実践した結果、少しずつ友達とのトラブルが減ったという。

特別支援教育の現場ではすべての教員が特別支援教育に関する一定の専門性を有し、高い現場解決能力を持つことが求められるが、離島においては地理的な制約などにより、高度な内容の研修や専門家からの支援を受ける機会が限定されている。また、従来の研修では学んだ内容だけでは各現場の状況に合わせることが難しい、効果が一時的などの声もあり、「現場解決能力」の持続的な向上が課題となっていた。

今回の実証実験で得られた知見は、全国の中山間地や離島などでも応用が可能で、島根県立大学とOKIは全国の必要な地域へ得られたノウハウを提供することで、特別支援教育のレベルアップの仕組み作りに継続的に寄与していく考えだ。